コロナ対策の「日本モデル」〜 マスクと伊達メガネ

2020年04月03日 06:02

官邸サイトより

安倍首相の布マスクの配布が話題を呼んでいる。マスクは自分を守ることにはあまり役立たない、と朝日新聞は強調している(参照:青山雅幸 衆議院議員ブログ「朝日新聞のフェイクニュース」)。ところがもう国民は皆知っている。マスクの効用は、自分の飛沫を拡散させないようにすることだ、と。

つまり、日本の首相は、自己防衛手段ではなく、他者防衛手段を、まず先行して国民に配るのである。非常に興味深い。「他人に迷惑をかけない」ことを美徳とする日本の文化に根差したアプローチなのか。海外にも「日本モデル」の象徴として宣伝したい。

軌を一にして、トランプ大統領がマスクの着用を促す発言をしたというニュースや、米疾病対策センター(CDC)もマスクを普及させようとしているというニュース(参照:BBCニュース「米保健当局、外出時の布製マスク着用を検討 米紙が内部資料入手」)、さらにはニューヨクタイムズが紙面を切り抜いてマスクを作る型枠つきの記事を出したというニュースが入ってきた(参照:朝日新聞デジタル「NYタイムズ、マスク型枠を紙面に掲載 品不足に一手」)。また、ヨーロッパでも同じ動きがあることが伝えられている(参照:「In ‘Big Adjustment,’ Some European Countries Push For Residents To Wear Masks」)。

これだけの災害になると、他者を守ることが、社会を守り、自分を守ることにつながる、ということを、皆が肌身を持って感じ始めている。西洋流に言えば、「社会契約」の論理である。「私はお前を殺さない、だからお前も私を殺すな」という考え方が、ホッブズ以来の近代国家成立を説明する「社会契約」の原理である。

いささか大げさだが、非常時においてマスクに「社会契約」の意味があることをアメリカ人が気づき始めたというのは、非常に興味深い。

昨日の文章で書いたが、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の理解によれば、「日本モデル」は、クラスター対策・医療体制・行動変容の三つによって成り立っている。

「日本モデル」に踏み込んだ専門家会議「分析・提言」

マスクの使用を奨励して、他人を守ることを通じて自分を守ろうと呼びかけるのは、国民の「行動変容」を促すことだ。また医療機関に使い捨てマスクを優先配布するために一般世帯には布マスクを配布するのは、「医療体制」を守る行為でもある。クラスターの発生を防げば、もちろん「クラスター対策班」を助けられる。

ところで、マスクで思うのは、コンビニのレジ係である。最近は皆、マスクをつけてくれている。ところが時折、だからこそ一層いつもよりも大きな声で「〇〇円です、おつりは〇〇円です、〇〇を使いますか」と「不要不急」な事柄を、ものすごくハキハキと発声してくれる方がいる。

大変に申し訳ないのだが、危険な行為である。

専門家会議『分析・提言』は、「近距離での会話、特に大きな声を出すことや歌うこと」(9頁)を危険な行為としている。

ナンバー/写真AC

私は普段はメガネをつけないのだが、最近は外出の際には伊達メガネをしている。飛沫感染から目を守るためである。

新型コロナウイルスは、目の粘膜からも感染する。目でなければ、コロナ感染は自己努力で相当に防げるはずで、たとえば肌の表面にウイルスが付着していても、石鹸で洗えば取り除ける。

ところが、自己防衛がほぼ不可能なのは、他人が自分の目に飛沫を浴びせた時だ。一瞬だ。これをやられたら、どんなに気を付けていても、感染を防げない。

だからこそ「外出するな」の前の「日本モデル」は、「大声を出すな」なのである。

(ちなみに私は、日本人のメガネ着用率の高さが、日本の感染者数の抑制に関係していると秘かに推察している。)

マスクは他者防衛、メガネが自己防衛である。不思議に聞こえるかもしれないが、これが「日本モデル」だ。

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篠田 英朗
東京外国語大学総合国際学研究院教授

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