休業要請:本当に補償できないのかを暴く --- 藤岡 隆雄

2020年05月04日 06:00

まず、4月27日に「心折れる複雑な雇用調整助成金:これが支援なのか!」を寄稿させて頂いたが、予想を超える1,900人超の読者に「いいね」を頂いたことに感謝します。

緊急事態宣言で休業中の飲食店(東京都内:編集部撮影)

さて、緊急事態宣言が延長されるようであるが、4月10日から行われたいわゆる「補償なき休業要請」によって飲食業などをはじめ、どれだけ多くの事業主・働く者が犠牲になったのであろうか。このやり方を分かりやすくいえば、

私たち助かりたい。だから一部の業者さん犠牲になって

ということだ。これで日本は良いのか。2回目の寄稿する理由はここにある。今後も、もしどこかで休業要請などをするならば補償が必要である。

本当に休業補償(※1)はできないのか? 思い切って日本全国の5月1ヶ月分で試算してみると、人件費・光熱水費・地代家賃・労務費の補償ならば約2兆3634億円、販管費+労務費の補償ならば約3兆7985億円、売上補償ならば約7兆5564億円だった。※1都道府県知事から特措法に基づくいわゆる休業要請などが行われたときの休業補償をいう。

詳細などは行政に詰めて頂きたいが、この金額を軸とすると、国はやりたくないと考えているとしか言わざるを得ない。言い過ぎかもしれないが、本当に試算しているのかすら疑わしい。

以下に根拠を示す。

1.  休業補償を試算する〜本当に補償ができないのか〜

まず、総務省統計局のサービス産業動向調査がある。これを見ればサービス産業の月間売上高が分かる。2019年7月31日付発表資料(昨年5月分)を見てみる。

サービス産業全体で5月の月間売上は約30兆円だが、ここには情報通信業なども含まれるので、日本標準産業分類における大分類別にみて、休業要請などに関わる「宿泊・飲食サービス業」、「生活関連サービス業・娯楽業」、「教育・学習支援業」、「サービス業(他に分類されないもの)」に絞ると、約9兆8641億円となる。

さらに、中分類別で、持ち帰り・配達飲食サービス、廃棄物処理業、自動車整備業などを除くと、約7兆5564億円となる。なお、対象業種は少し広めにとる。

次に、売上の中で、休業により、仕入れなどが不要となるならば、いわば固定費が売上の何割を占めるかを見ていく。ここでは中小企業庁の中小企業実態基本調査の平成30年確報が参考になる。法人企業において、

宿泊・飲食サービス業などで、人件費・地代家賃・水道光熱費の売上に占める割合は36.6%であり、労務費も含めると41.8%(以下人件費等)、交際費なども含んでしまうが広くとって販売費及び一般管理費+労務費(以下販管費等)の占める割合だと65.0%となる。

生活関連サービス・娯楽業などで、人件費等の同割合は19.2%、販管費等の同割合は34.1%となる。
サービス業(他に分類されないもの)などで、人件費等の同割合は45.7%、販管費等の同割合は60.4%となる。

これらは中小企業における割合と断りつつ、一つの目安として、先ほどの中分類別で算出した月間売上高約7兆5564億円に対して業種別に人件費等又は販管費等の割合(※2)をかけて、5月分1ヶ月の補償に要する費用を試算すると、

人件費等の補償は約2兆3634億円、販管費等の補償は約3兆7985億円となる。
※2 教育・学習支援業は、財務省資料を参考に便宜的に算出した。

ざっくりとした試算だが、この補償が危機の時に国債でも対応できない金額なのか。大いに疑問である。

かっちゃん/写真AC(編集部)

2. 本当に国債発行で対応できないのか

ちなみに、日本銀行の資金循環統計をみると、2019年12月末の家計部門の金融純資産は1575兆円、民間非金融法人企業部門の純負債は595兆円、一般政府部門の純負債は697兆円であり、トータルの純資産は283兆円である(※3)

この純資産を考慮し、資金繰りの観点も含めて日銀の十分な対応も前提とすれば、上記の補償は国債発行で対応できる(※4)

(※3)日本は資本主義だから、私有財産の所有が認められ、一般政府部門とは別に、家計部門で資産と負債、法人部門で資産と負債があるということである。
(※4)家計、法人、政府資産の中には株式も含まれるので、昨年末からの株価の下落がトピックスで16.9%であることを考慮しても十分補償対応可能と思われる。

これらをもとにすると、政府は補償できないというのではなく、補償したくないと思っているとしか言いようがない。一部に犠牲を強いるような日本で良いのだろうか、今一度、私たちは政府に声をあげる必要がある。

3. 犠牲をつくらない

今回、緊急事態宣言を延長し、一部地域において、いわゆる休業要請を継続するならば、国の財政的に補償はできるし、必ずやるべきだ。政府に今必要なことは、できないという思考停止ではなく、どうしたらできるかを考えることである。

この問題提起をきっかけに多くの犠牲になっている事業主・働く者が救われ、かつ、外出自粛の実効性が上がり、コロナ封じ込めにつながることを切に願う。

※注:この原稿は5月3日朝までの情報に基づき書いております。

藤岡 隆雄 元金融庁課長補佐、現立憲民主党衆議院栃木県第4区総支部長
1977年生まれ。1999年、大阪大学基礎工学部卒業、大阪大学大学院在学中に国家公務員一種(経済職)試験合格。2001年、金融庁入庁。金融危機克服の法案作り等に携わる。2008年、総務企画局企業開示課課長補佐。退職後、衆議院議員政策担当秘書を経て政治活動中。公式サイト

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