マスコミが見過ごすウイルス解明の仮説が2つ

2020年05月06日 06:00

感染症の専門家の意表突く

政府は新型コロナウイルス対策に関する緊急事態宣言を、5月末まで延長することを決めました。日本の感染者数、死亡者数は国際的にみて圧倒的に少ないし、しかも感染拡大のピークが過ぎているのに、なぜ延長するのか。その根拠についての説得力が乏しい、という反論が聞かれます。

首相官邸YouTubeライブより

感染症専門家会議の教授や医師からではなく、いわば在野の論客による仮説とでも、言いましょうか。コロナ危機対策を連日、大々的に報道をするテレビ、新聞といったマスコミは、政府や官邸の発表ものの紹介、現場リポートに追われるのではなく、大きなトレンドをもっと見るべきです。

世界各国の感染者の一覧表を見て、「米国の感染者115万人、死者6.7万人。日本は感染者1.5万人、死者550人。100分の1という驚異的な差は何なのか」「ニューヨーク発の報告は、2週間後には日本もこうなるだった。海外発の情報に動揺しすぎたか」と、考えこむ人は多いでしょう。

安倍首相は記者会見(4日)で「期限満了で宣言を終わらせることができず、責任を痛感している」と、詫びました。専門家会議もこうした仮説に触れることがなかったため、首相は詫びるしなかったのでしょう。仮説が本当だとすれば、詫びる必要も、胸を張る必要もありません。それはウイルスの性質と民族の体質の組み合わせの結果によるところが大きいからです。

欧米に比べ異常に感染者が少ないのは、日本ばかりではありません。感染者数は各国の医療システム、検査数などで左右されますから、比較しやすい死者数(4日現在)でみると、ベトナム0、香港4、台湾6、タイ54、マレーシア105などです。かなりの誤差があっても、違いは大きい。

なぜか。一つ目はBCG仮説(BCG接種国は感染が広がりにくい)で、言論プラットホーム・アゴラ代表の池田信夫氏が3月ころから強調しています。データ分析を駆使し、さらに「伊仏英でも、死者が減り始めるのはロックダウン(都市封鎖)から1か月後。ロックダウンをした国でも、しなかった国でも、感染開始から1か月で死亡率がピークアウトする」(5/4日)と。

写真AC

つまり宣言しようがしまいが、大勢として、下がるものは下がる。また「BCG接種などの原因で自然免疫が生じ、もともとコロナに強い国があるのだろう。専門家会議でも、新規感染者のピークは4月1日としている。首相の緊急事態宣言は4月9日で、その前にすでにピークがきている」。つまり宣言の効果で感染拡大が下降するのではない。またBCG接種の効果で日本などは感染が拡大しにくい国だと。

新聞でこの仮説に触れたのは、日経(5/1日)で「病原体の感染で自然免疫に変化が起き、次の感染に対応しやすくなる。そういう論文も増えている」(熊ノ郷阪大教授)と紹介しています。もっとも記事では「BCG効果に懐疑的な専門家もおり、不明な点が多い」とも説明しています。

因果関係は不明でも、世界地図で色分けしてみますと、コロナが蔓延していない国と,BCGを接種している国は重なるから不思議です。仮説が本当ならば、BCG接種国は感染を防ごうとして、過大な社会経済上の自粛を続け、経済にダメージを与えることすべきではない、ということになります。

もう一つは、HLA(ヒト白血球抗原)仮説です。感染症の専門家ではない在野の論客、永江一石氏の主張(5/3日)をアゴラで読みました。白血球の血液型みたいのがHLAで、何種類か遺伝で存在する。「重症者、死者が欧米に比べて少ない日韓、ベトナム、カンボジャの国民は、コロナに感染しにくいタイプのHLAなのだろう」と。注目した医学論文があるようです。

感染が広がらない状態になっていること示すのが「実効再生産数が1以下」です。日本では緊急事態宣言の4月7日には、0.7まで低下していた。その時は分からなかったとしても、現在は低下が明らかになっているのだから「緊急事態宣言を延長までして、経済を潰すことがあってはならない」と。

安倍首相は「経済と感染防止の両立させつつ、社会経済活動を徐々に再開する」と、強調しました。2つの仮説が正しければ、宣言延長は必要なかったことになります。もっとも、ピークアウトしていても、患者数は増えていきます。病院、保健所は治療や検査で多忙を極めていますから、患者の増加数から退院者数を差し引き、医療の余力がどの程度あるかを考えて臨まなければなりません。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年5月5日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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