週刊文春と御厨貴氏のコロナ知事通信簿の大疑問

2020年05月15日 06:00

「文春オンライン」『北海道鈴木、愛知大村は○、宮城△、石川、千葉、神奈川×、小池都政は? 政治学者・御厨貴「知事たちの通信簿 」』とかいう記事が出回ってるが、粗雑すぎる。

大村氏、小池氏、鈴木氏(ツイッターより)

なにしろ、東京や大阪はともかくほかの県については、たったひとつのニュースからだけ評価をつけたりで粗っぽすぎだ。これでは一生懸命頑張っている各都道府県庁の職員の方にも失礼である。

御厨貴氏(東大先端研サイトより)

北海道鈴木、愛知大村、東京・小池、愛知・大村、大阪・吉村、和歌山・仁坂、鳥取・平井、○、宮城などは△(東北大震災の復興でお疲れではとか変な批評)、石川、東京以外の関東圏は全員、福岡は×、沖縄は保留とかいうものだが、永田町、霞ヶ関、医療関係者などから総スカンだ。

要するに、マスコミ対応でうまく登場して箔付けたかどうかの順位であって、実際に現場から評価されているかどうかなど関係ないようかなのである。

これはひどいと思って、いま、全国の関係者からヒアリングしているのだが、皆さんの参考になるかと思い、少し情報を共有しておこう。

武漢市の姉妹都市・大分市のケース

ここで紹介したいのは、大分でのケースである。大分市長の佐藤樹一郎氏にどんな流れだったか聞いてみた。

佐藤樹一郎・大分市長(大分市HPより)

なぜ大分かというと、理由がある。それは、大分市が武漢市と姉妹都市で人事交流などもしてきたこともあり、武漢にはいちばん詳しい都市なのである。

ことが始まったときに、なにを目標とすべきか考えた市長は、重篤者を出さないようにするのと、医療崩壊を避けると言うことだったという。

しかし、二つの注目事案があった。ひとつは、新型コロナウイルスのクラスター(感染者集団)が発生した国立病院機構大分医療センター(大分市)である。計24人が感染し、患者の70代女性が死亡した。入院した患者がかかっていて、そこから院内感染が広まった。

もうひとつは、「ラウンジサザンクロス大分」という店で女性が感染し、幸い同僚の従業員には感染はなかったのだが、大分市がこの店の名前を公表したところ、下関市の40歳代の男性が名乗り出て感染していることがわかり、さらに、 この男性の妻と子供もコロナ感染していることが分かった。

誰から誰に感染したのか順番が確定はできないようだが、見当は付いているようだ。幸い発見が早く周辺の人たちにPCR検査をしたし、客も驚いて名乗り出たので、感染拡大は防げた。

しかし、このように店の名を公表することはむしろ珍しい。逆に多くの自治体がこうした場合に店の名前を公表しないし、それどころか、感染者がどういう人物かほとんど情報を公開しないところもある。

私の住む京都市でも、「京都の大学で留学生が」とか「○○区の飲食店」とかいうだけで、かえって不安が拡大するだけだったこともあった。

そもそも、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」の第16条では、「厚生労働大臣及び都道府県知事は、第十二条から前条までの規定により収集した感染症に関する情報について分析を行い、感染症の発生の状況、動向及び原因に関する情報並びに当該感染症の予防及び治療に必要な情報を新聞、放送、インターネットその他適切な方法により積極的に公表しなければならない」とある。

大分市の場合は中核市なので、ここでいう都道府県知事の権限が降りてきているのだが、この趣旨に沿えば、正しい危機感をもっておれば店名や足取りの好評は当然だと思う。

また、PCR検査については、電話などでの問い合わせに応じる「発熱外来」を以内の医師会立病院に設け、さらに、感染可能性があると思う「PCR検査所」を別に大分城内に設けて、医師会の協力のもとに対応しているという。

また、当初はPCR検査を県内では十分にまかなえなかったので、大分県とも協力して、福岡県や長崎県の検査機関に協力してもらったという。

市独自の施策としては、商店街の消毒など衛生管理、飲食店のテークアウトへのとり組み支援、ホテルの水道代の減免などを展開し、10万円の交付金も、40万人以上の人口を抱える市としては最速クラスである5月6日受付開始11日振り込み(マイナンバーカード取得者の場合)にも成功したという。 こうしたとり組みのおかげで、その後は発生ゼロが維持されているらしい。

医療体制は都道府県によってまったく違う

日本はしばしば中央分権の国だといわれるが、典型的には地方分権が非常に進んでいる。教育などその典型で、転校の支障になっているほどだ。医療もそうで、どのような病院があるか、県や市の保健福祉部とか健康医療福祉部といった名の部局では、部長が医官だったり部長クラスの医官がいる。

そして、ひとつの県にさいていひとつの医学部があるし、県にはだいたい地方事務所といわれるものがある数個以上の地域ごとに保健所がある。昔は保健所というのがかなり大きな組織だったが、ニーズの変化で縮小されており、それが今回はPCR検査などのネックになったのだが、組織というのはそれなりの日常業務がないと人も抱えられないし、また、ひごろ暇な組織が非常に整然と能率良く動くはずもない。

そして、医師会だとか地域ごとに大きな総合病院があるし、医師会はどこでも強力だが、組織のあり方や、それが大病院などとどういう協力関係にあるかは様々だ。

そうしたなかで、全国一律の対策はなかなか打ちづらいのであって知事さんの腕の見せ所ともいえる。

もちろん、都道府県民に安心感を与えることは大事だが、あくまでも実務的にしっかり仕事をこなしているほうが大事であることは言うまでもない。

まして、国と対決しているポーズを撮って点数を稼ごうというのが肯定的な評価の対象になるはずもない。そういう観点からいうと、週刊文春が行ったような評価の仕方は百害あって一利なしと言わざるを得ないのである。

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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