緊急事態宣言下の効果が数字になって現れてきました。
都内で確認された新規感染者数も10人から30人程度と、気を抜いてはならないものの、確実に減少に転じ、要請基準の緩和への期待が寄せられるようになりました。
私たち、都民ファーストの会では、緊急事態宣言後の東京のあり方を模索するため、10カ国以上の海外の事例や他府県の事例を集めて、要請基準緩和のロードマップ作りに着手してきました(都民ファースト版ロードマップ全資料はこちら)。
ご覧のように、各国ごとに、解除基準が多少違いながらも、共通しているのは、「新規感染者数」、「病床数」、「PCR検査数」であることがわかります。
一方で、「日本(検討中)」として記載したのは、政府が検討していると予測される基準であり、ここには「感染経路不明者の割合」を挙げています。大阪も、この感染経路不明者の数を基準の一つにしていますので、政府は、「感染経路不明者の割合」を重視するのではないかと思います。
さて、東京版ロードマップに着手した私たちは、この検討に入るなかで、東京で起きている現象を、分析し、最も回避しなければならない点を絞りました。
他国に比べれば、死者数を抑えられている東京で、もっとも警戒しなければいけないのは、医療の崩壊です。医療崩壊がひとたび起きれば、交通事故でも、助かる命が助からない事態に陥ることは言うまでもありませんから、医療崩壊を食い止める羅針盤を持っていなければならないとの結論に達しました。
要請緩和の指標となりうる項目を書き出したなかで、医療崩壊を食い止める観点から、最も、医療現場の逼迫状況を表す項目が、病床稼働率と人口呼吸器の使用率であると考えました。
病床の稼働率は、コロナ患者のために空けている病床数を分母にし、使用者を分子にすることで、より、正確な稼働率が明らかになりますし、そのうち、重傷者がどれだけ治療されているかの指標として、人工呼吸器の使用率を見ることは有用だと考えました。
しかし、上記、二つは、すでに起きた現象を表すもので、予測にはなりません。
来週、医療崩壊が起きそうだ!と気づくためには、都内の市中感染率の変化を読み取る必要があるのですが、PCR検査数が十分とは言えない日本では、この陽性率だけを見るのも疑問が残り、新規感染者の数や、伸び率で見た方が妥当だろうという結論に至りました。
市中感染状況を常に分析し、その伸び率と、病床の実質稼働率を掛け合わせて検証すれば、早期に医療崩壊リスクが測れます。
その観点から、上記のように、警戒レベルを5段階に分けて、要請基準を仕分けしたのが上記の表です。
今、現在の東京は、上記の表では警戒レベル4に相当します。
今日現在の、東京の数字を当てはめるとどうかと言えば、新規感染者数だけで見ると警戒レベル2になると言えますが、段階的な解除で、都民の気の緩みを一気に与えない取り組みが必要であると考えています。
また、今日時点の病床稼働率が、70%であることが判明しました。コロナ患者のために空けている病床が2000床であるとともに、入院中患者数が1413名であることが分かりましたので、割り返すと約70%という計算です。もっとも、現在は、他の患者さんが使用しているけれども、コロナ患者が急増した場合に備えて、さらに1000床を確保していると聞いていますので、稼働率は40%〜70%と言え、図表で示すところの警戒レベル3に相当します。
なお、警戒レベル3の場合の飲食店がなぜ夜12時までの営業としているのかについてですが、これは、帰宅できる時間の目安としました。帰宅できなくなった方々が、始発を待つまでに、より一層「密」な空間に流れ込む可能性があり、そこが感染源になりうると考えたからです。
さて、私たちは、この判断指標と5段階レベル分けを策定するにあたり、大事な点を導きました。それは、東京の特性とも言える、ブレ幅の大きさです。1400万の人口を抱える大都市東京では、感染者数の増減幅が大きく振れる可能性が十分にあります。その場合には、この指標に拘らずに、知事が総合的に判断する必要があるので、定めた指標を金科玉条にしてはならず、目安とするべきでしょう。
ただし、こうしたロードマップがない場合、都民は暗いトンネルを延々と歩かざるを得ない不安と絶望に苛まれますので、一つの羅針盤として、都民ファースト版ロードマップが都民の希望の道標になることを願い、策定しました。
5月12日 都民ファーストの会幹部は「都として、今後、発表されるものと思いますが、セカンドオピニオンとして、都民ファースト版ロードマップを参考にしていただきたい」とお話し、小池知事に手渡しました。
小池知事は「次の算段は当然考えていかなければならない。しっかり検討していく」と応じ、受け取られました。
もちろん、気の緩みは、今までの努力を水泡に帰してしまうので、まるで元の生活に戻れるかのような、誤ったメッセージを送ってはいけません。警戒を怠らずに、同時に、合理的な判断を、やはり責任を負える政治家、つまり、私たちが、下していかなければいけません。それこそが、選挙で選ばれた議員の使命だと感じています。
また、このロードマップ策定でいくつかの課題も見えてきました。
正確な市中感染率を測るために、抗体検査を組み合わせたり、下水からの分析も行っていくべきでしょう。
緊急事態宣言が解けると、営業を続けるパチンコ店に対して行った、特措法45条に基づく「指示」「公表」を知事ができなくなるため、代替策を検討しておかなければいけません。
検討すべき課題は山積ですが、議員が、何のために税金から報酬を頂いているかと言えば、まさに、有事の決断のためですので、今後も、都庁に先んじて、ボールを遠投することで、議会の立場から羅針盤を投げかけていきたいと思います。