誹謗中傷は困った人ではなく困っている人がやる

2020年05月25日 16:00

木村花さん(本人インスタグラムより)

木村花さんの訃報以来、ネット上の誹謗中傷が話題ですが、そもそも誹謗中傷とはどんな人がやるのでしょうか?
赤の他人に「死ね」「うざい」「消えろ」と言い続ける気持ちの裏には、どんなことが隠されているのか?
依存症者にも同じようなことが起きがちで、そこから分かってきたことをお伝えしたいと思います。

まず依存症問題で誹謗中傷が起きやすいのは、何といっても違法薬物。それも覚せい剤がダントツです。
それとパチンコ。公営競技にハマった人にはそれほど、罵詈雑言は飛んで来ませんが、パチンコはダントツです。
つまり社会的なイメージで叩いても良い、叩いても自分は批難されず、同調者が大勢いるであろうと思われるものを叩くわけですよね。

その点、有名人のアカウントなど、最初から実名VS匿名ですから、匿名者の方が圧倒的に有利で、叩きやすいったらないです。

しかも叩いている人のアカウントは大抵フォロワー1ケタ。清算的な事をつぶやくより、叩き専用で、アカウント消されたらまた作る、その繰り返しでSNS上では失うものなどない。やりたい放題になりますよね。でも実際は、今は本人特定できるので逮捕まであるんですけどね。

私たちは、一度この誹謗中傷で大きな気づきを得る体験をしたことがあります。
それは人気ドラマ「相棒」で覚せい剤使用者に対し、あまりに現実的離れした描写があり、いくらフィクションであってもこれは誤解や偏見を生み、貶められるということで、私たち依存症の支援者らでつくる「依存症の正しい報道を求めるネットワーク」で、テレビ局に要望書を提出したことがあったんです。

すると新聞が大きく取り上げ、国会でも審議される事態となり、TV局側が謝罪、それは「シャブ山シャブ子騒動」とまで呼ばれるようになりました。当初、人気ドラマだけに要望書を提出した私たちが、徹底的に叩かれました。
事務局を務めていた私のところには、メールがひっきりなしに届き、電話も鳴り続けました。その殆どが罵詈雑言で、議論に値するものは殆どありませんでした。

しかし私は「こういう人は何がやりたくて、何が言いたくて、わざわざこんな労力を使うのだろう?」と興味深く思い、話しを色々聞いていくと、なんと!かなりの割合で、自分自身が薬物依存に苦しんでいる人たちだったのです!

怒り心頭で興奮しているので、私が色々聞くとますます激昂してですね、ポロっと「俺ら薬チュウのことなど放っておいてくれ」「お前に何がわかる!」などという言葉が出てくるのです。

私が「あなたも薬物で苦しんでいる人なんですね?」と聞くと、電話はガチャン!と切れる・・・とこんなことが続いたのです。

特に薬物依存の人は、小さな子供の頃「夜になると恐いことが度々起きた」という虐待や暴力などのトラウマを抱えた人が多く、いまだに夜が恐いという人もいるですが、この罵詈雑言も夜中まで続いたんです。

私は、さすがに寝ましたが、夜中に連続メールを送ってきた人が、翌日「昨日は淋しくて、ひどいこと言ってゴメンナサイ。」と入っていて、その孤独感を思うと、胸が締め付けられるような気がしました。

誹謗中傷をする人は、大抵の場合困難をじっと我慢しているか、孤独で困難な状況をどう変えて良いかわからない状況にあるのだと思います。

だからこそ辛さを他者を攻撃することで、緩和しようとするんですよね。
悪循環なんですけど、人間不信になっているとそれ以外の方法に気づけない。

私たち依存症者の間では「怒っている人は困っている人」と言われています。
他人に匿名で「死ね」「うざい」「消えろ」「醜い」「うざい」と、執拗に言い続ける人は、もしかしたら過去に自分がそういういじめにあっていた人かもしれません。

心の傷や、苦しみ、悲しみを「黙って耐える」なんて決して良いことではない、どんどん人に話し、自分の味方を作った方が良いし、緊張感のある良くない人間関係からは逃げて良い。

こんな考えがもっともっと広がってくると、誹謗中傷も減るのではないか?と推測します。
負の連鎖がなくなりますように。

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田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表

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