憲法改正の国民投票をAIによる「ハック」から守れ

2020年05月30日 06:01

5月28日、憲法審査会が開催され、憲法改正の手続きを定めた国民投票法について議論が行われました。私は、国民民主党の改正案の審議を求めました。

国民投票法はメディアの激変に対応できていない

国民民主党は、昨年5月に国民投票法の改正案を提出しています。(具体的な改正案を出している唯一の政党です。)

私たちは法改正自体には賛成です。ただ、与党が考えている7項目の改正案だけでは不十分です。国民民主党案を与党案と並行して審議することを求めています。

なぜなら、国民投票法の成立当時(2007年)には想定していなかった新しい大変化に、早急に対応しなければならないと考えているからです。

その変化とは「メディアの激変」です。

インターネット、SNSの発展とともに、ネット広告が極めて有力な宣伝手段になり、広告費もネットがテレビを上回ったとの統計もあります。

とりわけ、SNSが選挙や国民投票に与える影響は年々大きくなってきています。しかも、ビッグデータ分析を駆使し、有権者の行動変容を目的とした広告が拡大しています。

具体的には、2016年の米国大統領選挙「プロジェクト・アラモ」やEU離脱「リーブEU」に関与し、結果にも大きな影響を与えたと言われる政治コンサルティング会社「ケンブリッジ・アナリティカ」の活動です。

ケンブリッジ・アナリティカ事件

ケンブリッジ・アナリティカは、Facebookから収集した8700万人のビッグデータを活用して政治広告を行ったとされています。

プロフィールから「いいね!」した情報など個人データを収集し、「ファイブ・ファクター・モデル」と呼ばれる人格分類モデルによって、性格など5000もの属性に基づいて類型化。その中からまだ意思の固まっていない「意見を変えられそうな人(persuadable)」を抽出し、その有権者の感情につけ込む「おすすめ記事」を効果的に打ち込んだとされています。

例えば、精神的に不安定な有権者には恐怖を煽る動画を見せるなど、単に「広告を出す」という行為だけでなく、ビッグデータを駆使した内心の操作が行われているのです。

民主主義は、有権者が「表現の自由」によって発信された情報を的確に分析し、合理的に判断できるとの前提に立っています。

しかし、データ社会の高度な進展、とりわけAI(人工知能)の発達は、こうした民主主義の前提そのものを変質させつつあるとも言えます。

民主主義が「ハック」される

いわば、「民意」や「民主主義」そのものが、ビッグデータやAIによって「ハック」される可能性が出てきているのです。

2013年に行われたトリニダード・トバゴ共和国の選挙にもケンブリッジ・アナリティカの前身であるSCLが関与したとされています。

同国ではインド系とアフリカ系の政治的対立があり、同社はインド系を勝たせるために、アフリカ系の「無関心」を高める(increase apathy)広報を行い、アフリカ系の若者の大量棄権を実現したとされています。

その結果、18歳~35歳の年齢層で投票率に40%もの差が出て、それが6%差でのインド系の勝利をもたらしたとも言われています。

✳︎こうした実態は、ドキュメンタリー映画「The Great Hack」(2019/米国/119分)に描かれています。

ネット時代に対応した国民投票法を

国民民主党は、こうした新しい変化を踏まえて改正案を策定し、昨年5月21日に提出したわけです。

与党が主張する公職選挙法の改正に対応した7項目(例えば、ショッピングモールなどでの投票を可能にする等)には私たちも賛成ですが、国民民主党案についても、併せて審議してもらいたいのです。

ただ、残念ながら、現時点では自民党・公明党はこれを拒否しています。

国民民主党案の概要は以下のとおりです。(詳細はこちら

  • 政党等については、TVやラジオだけでなく、ネット広告も禁止する。
    これは、政党間の資金の多寡によって出せる広告の量や質に差が出ないようにして、国民が多様な意見を公平かつ平等に接する機会を担保するためです。
  • 政党以外の団体にはネット広告等を認めるが、1団体5億円の上限規制を設け資金面からの歯止めをかける。
  • フェイクニュース(虚偽情報)の流布を禁じる努力義務も新設。
  • 国民投票運動を行う団体に対する外国人からの寄付も禁止。
    国の最高法規である憲法改正に外国の勢力の影響が及ぶことを排除しなければ、安全保障上の問題も生じかねません。

ネット広告を含むCM・広告規制を入れないで行う憲法改正の国民投票法は、まるで、9人対100人で野球をやったり、11人対100人でサッカーをやるようなものです。しかも、100人の側はビッグデータで心を操る高度なテクニックでズル(cheating)もできる人が入っている。

これで本当に、フェアにゲームができるでしょうか。皆さんにも考えていただきたいと思います。

元役員ブリタニー・カイザー氏の国会招致を

最後に、28日の憲法審査会では、審査会長に対して、2016年の米国大統領選挙や英国のEU離脱運動にもかかわったとされるケンブリッジ・アナリティカの元役員、ブリタニー・カイザー(Brittany Kaiser)氏を憲法審査会に呼んで話を聞くことを提案しました。

彼女は今、過去の同社での活動を告白し、各国の議会で証言しています。国民投票法改正案を採決の前に、ぜひ実現したいと思います。

なお、彼女と同様、ケンブリッジ・アナリティカで働き、告発本(Mindf*ck: Inside Cambridge Analytica’s Plot to Break the World)も出版したクリストファー・ワイリーは次のように述べています。

私たちのシステムは壊れていて、法律は機能していない。規制当局は無力で、政府は何が起こっているのか理解していない。そして、テクノロジーは民主主義を侵害しているのだ。

“Our system is broken, our laws don’t work, our regulators are weak, our governments don’t understand what’s happening, and our technology is usurping our democracy”

私たちはもっと知らなくてはなりません。

公正で公正な国民投票や選挙を実現するために。


編集部より:この記事は、国民民主党代表、衆議院議員・玉木雄一郎氏(香川2区)の公式ブログ 2020年5月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方はたまき雄一郎ブログをご覧ください。

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玉木 雄一郎
衆議院議員(香川2区、国民民主党代表)

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