小泉進次郎氏は知事の経験を積み、出直せ

2020年06月02日 06:00

小泉進次郎氏(環境省YouTubeより)

コロナ危機で霞む存在感

吉村大阪知事(44)、鈴木北海道知事(39)ら小泉進次郎・環境相(39)と同世代の政治家がコロナ危機対策で注目されています。彼らの活躍が目立つ中で、「将来の首相候補」のランキングでは常に上位を走ってきた小泉氏はすっかり影が薄くなっています。

小泉氏に政治家として飛躍したいという意思があるのならば、永田町(国会)を離れて、県知事選にうって出て、政治経験を積むよう勧めます。米大統領選(直接選挙)には多数の州知事、その経験者が出馬します。州知事の経験が国政に生きる。クリントン氏、カーター氏らはそうでした。

米大統領選挙では、ワシントンに乗り込み、ワシントンに象徴される中央政治をいかに修正していくかが、重要な争点です。日本の国政は、長期政権を敷く「一強」に対する忖度政治、官邸が握る絶大な人事権、野党の低劣な与党攻撃・国会質問などで澱んでいます。

進次郎氏は純一郎・元首相という親の七光りもあり、弁舌を買われての選挙応援、安倍政権のイメージ作り、環境相の就任まではよかった。それが滝川クリステルとの結婚を発表したあたりからおかしくなった。「単なる人気先行馬」「口先だけで政治思想の乏しさ」「その口先も最近は目立つ慎重さ」「重要政策の政治経験の少なさ」などの酷評がひたすらです。

さらにコロナ危機対策で、若い世代の県知事の活躍が目立つにつれ、進次郎氏への注目度が下がってきました。連日のように、地方のコロナ危機に立ち向かう知事たちがテレビなどメディアに次々と登場します。コロナ危機下での再発見は「若い世代には多士済々の政治家が随分いる」です。

政治学者の御厨貴氏は「知事たちが、これほど中央に影響力を持った時代は現代政治史上なかった」とまで、言い切っています。知事たちの存在感が増し「永田町(国政)をリードする前例のない時代に入った」との声を聞きます。

コロナ危機対策は、地元住民の感染症対策や地域経済の維持ばかりではありません。「各国のコロナ危機対策との比較」「米国などにおける州知事の指導力」「世界保健機関(WHO)における米中対立という国際政治に対する見方」など、学ぶべき政治的視点は多く、政治家を育てる。

地方創生の研究者、藻谷浩介氏が「コロナ禍の日本と政治」と題するコラム(朝日)で「30年近く全国の市町村を訪れ、多くの首長を見てきた。使命感と責任感を持ち、現場の課題に創意工夫で対応するリーダーは増えている」と、指摘しています。

「北海道の鈴木知事は、国が指針を出す前に独自の『緊急事態宣言』を出した。大阪の吉村知事は軽症者のホテル療養や休業解除などの『大阪モデル』で国に先行した」と。安倍首相が突如、「日本モデル」という聞きなれない言葉を使ったのは、小池東京都知事「東京アラート」、「感染爆発寸前の重大局面」「ロックダウン(都市封鎖)」発言に遅れをとり、焦ったのでしょう。

知事たちのコロナ危機の現状認識、感染防止策が適正であったかは、今後、検証する必要があるにせよ、票田の住民感情に敏感に反応して動かないと、知事の座を守れないという意識が強い。首相への忖度に明け暮れ、首相の指示を待っている国会議員とは、選挙民に対する感度や感性が違う。

衆院の小選挙区は289で、県はもちろん、市より小さな選挙区は多い。票田の小さな選挙区の利害関係をもっぱら考える国会議員よりも、県単位の大きな選挙区を持つ知事のほうが政治家として鍛えられる面も多いでしょう。

地方自治を担当する中で、経済、財政、地域開発、住民福祉など、政策面の経験を積める。一年もやったら内閣改造で、閣僚を降ろされる国会議員とは違う。今の中央政治のように、景気対策だからといって、無尽蔵に財政赤字を増やしていったら、自治体は破産する。そんなことは分かっている。

橋下・元大阪知事は「首相候補に吉村知事を推す」と述べたことがあります。知事から国会議員に転進し、維新の会の代表になり、いくつかの党と組んで首相の座を目指す選択はありえないではない。北海道の鈴木知事は進次郎氏と同年齢で「進次郎氏以上」の評価を聞きます。首相の座はともかく、地方自治の経験を積んだ知事らが国会議員に転進し、国政を変えていく時代がくるのではないか。

進次郎氏は環境相、自民党農林部会長、厚生労働部会長どまりで、政治家としての政策経験がなさすぎます。まだまもなく40代という若さだし、知名度からすると県知事選に出れば、当選する可能性はある。2、3期、経験を積んで国政に復帰したほうがよほどたくましい政治家になれるでしょう。

進次郎氏のホームページを見ると、こう書いてあります。「持続可能な社会へー『社会変革担当省』である環境省が先頭に立ち、環境と経済の好循環を生みだして行きます」「緊急事態宣言が解除されました。新しい日常が始まります。熱中症を予防するために、適宜マスクをはずす、こまめに水分を補給する、日ごろから健康管理に努める・・・」

世界や日本がコロナ危機で翻弄されているというのに、「熱中症予防のチラシを作成しました」とは、なんとせせこましい政治活動報告でしょうか。

コロナ危機は地球環境問題と切り離しては、考えられないという主張がしきりです。「地球は生まれてから48億年、人類は20世紀からの100年で、人口を3倍以上、増やした。地球が数十万年単位で築いた自然を短時日で壊し続けてきた。生物連鎖は一瞬で崩れた。バランスよく棲み分けていた動植物や微生物は行き場を失い、滅亡するか外に押し出された。未知の病原体もそうだ」(日経大機小機)。

ウイルスのことをいっているのです。日本の環境省には、もっと世界的な視野に立ち、コロナ危機をとらえる視点が必要です。それが「熱中症予防としてのマスクがどうのこうの」です。人気と口先だけで政界を渡ってくるとこうなります。政治家としての再訓練を望みます。


編集部より:このブログは「新聞記者OBが書くニュース物語 中村仁のブログ」2020年6月1日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、中村氏のブログをご覧ください。

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中村 仁
ジャーナリスト、元読売新聞記者

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