オフィス VS 在宅勤務

こうまる/写真AC

オフィス勤務と在宅勤務の是非について企業によりそのスタンスに違いがあると報じられています。日経によるとアップル、アマゾン、グーグル、フェイスブックといった巨大IT企業は比較的オフィス勤務を継続する傾向が見られますが、ツィッター、決済会社のスクェア、カナダのショッピファイは在宅勤務主義を貫くようです。

日本でも名だたる企業が在宅勤務を取り入れているようですが、一部門に限ったり、日数制限があったり、あるいはコロナの緊急事態が鎮静化する過程の中で見直しをしているところもあり、現時点で明白な方向性が定まっているとは言い切れません。

世の中、どうも白黒をはっきりさせたい傾向があるのですが、コロナで急に働き方の根幹である「勤務地」が変わるというのはやや大げさな発想のような気もします。

私が30年近く前にカナダに来た時、驚いたことがあります。それは不動産屋の事務所がなかったことです。広告などには顔写真入りで〇〇不動産の〇〇と個人の名前を強調したものがずらりと掲載されています。同じ不動産会社に所属する他の不動産エージェントの広告もたくさん並びますが、皆、個人営業であり、広告も個人で打っています。その不動産屋とは物件の前で初めて会うというパタンが多く、契約を含め、最後の最後まで事務所に行くことはないのです。

基本はそれぞれのエージェントが所属不動産会社に一定の所属料を払うものの皆、一匹狼。顧客からすると著名な不動産会社だから信用するのではなく、その人物を信用できるかどうかにかかっているのです。この方式は30年経った今でももちろん変わりません。

そもそも事務所がないビジネススタイルは業種や職種によっては昔からごく普通にあったともいえ、コロナになって突然在宅勤務になるというわけではなく、それを少し拡大させてみようか、ということに他ならないのです。

私の顧問弁護士は20年も前からリモートオフィスと称して年に2カ月ぐらいは自分の別荘から仕事をしています。立派な弁護士事務所に勤務しているのはパラリーガルと称する弁護士秘書で顧客と弁護士とのやり取りを踏まえ、弁護士が自分の秘書に様々な指示を出す、という流れです。

あるいは仕事を家に持ち帰る人も結構います。家族団らんの夕食が終わった後、自室で夜遅くまで仕事をするのです。これらは基本的にジョブ ディスクリプションと称する自分の職務内容書が会社側と明白に交わされているためでその内容を達成するためにどう頑張るかは個人次第、というわけです。

日本で在宅は根付くか、といえばこのジョブ ディスクリプションがないこと、個人作業ではなく、部署単位であることから結局、在宅勤務は北米に比べかなり限定的なものとなり、仮に可能であっても週1日とか2日ぐらいしか対応可能ではない気がします。すると中途半端さが逆に業務効率を下げる可能性もあるのです。「〇〇さんは今日出勤じゃないの?じゃあ、明日でいいか」という具合です。今日やれた仕事が明日に先送りになるのです。

在宅勤務を奨励したいのは企業側、従業員側それぞれにメリットがあるからです。しかし、週-1-2回の在宅では通勤定期代は支給せざるを得ないでしょう。会社の中も部署ごとのフリーアドレスぐらいしかできないような気がします。

勿論、過渡期ですのでこれを契機に日本でも仕事のやり方が個人単位になる動きなればそれは別。しかし、以前にもこのブログでご紹介したようにそうなればできの悪い従業員を振り落とす好材料となり、平等意識が高い日本の雇用環境に真っ向から対立することなります。

雇われる側は在宅万歳と思っていたらとんでもないしっぺ返しがくるということであり、罠にはめられたも同然の状態になってしまいます。大学でオンラインクラスにしたら出欠を確実にチェックされて授業をさぼれなくなったという話がありますが、在宅勤務はより一層、管理が厳しくなるとみてよいでしょう。

その点からすればオフィス勤務の方がはるかに楽なんです。会社側もずっと効率が上がります。在宅勤務は手段の一つとして残っていくとは思いますが、日本に於いて一般的な勤務スタイルの平準化にはならないと考えています。在宅ではなくむしろサテライトオフィスを活用するのが日本的なソリューションではないかと考えています。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年6月9日の記事より転載させていただきました。