連載①コロナとアメリカ ~ 急速な崩壊と希望

アメリカが壊れかかっている。

コロナ下で直接訪問も出来ず、全て伝聞情報からの想像ということにはなるが、かつて2年ほど東海岸で生活した経験などから見て、とてつもない地殻変動が起こって社会が崩壊しかかっているような印象を受ける。

米国のコロナ感染者は250万人を超え、死者数はベトナム戦争や第一次世界大戦の戦死者数を凌駕する約13万人となり、止まる兆しがない。そうした中、5月の失業率はやや改善して13%台になったものの、州によっては20%を超えているところもあり、25%だった世界大恐慌時を彷彿とさせる。

5月には、日本で言うところの髙島屋などにあたるだろうか。高級百貨店のニーマン・マーカスが破産したと思ったら、その翌週にはイオンとも言うべきJCペニーが破産。衣料品大手のJCrewやレンタカー大手のハーツなど、お世話になった数々の店やサービスがどんどん消えていっている。

トランプ政権は国内的に何ら有効な手が打てず、その不満を外に向けようとして、世界のリーダーとしての地位を省みない言動の数々を積み重ね、却って国内外の信頼を失うという悪循環に陥っている。ガスのように国内に充満する「国民の不満」にジョージ・フロイド氏殺害事件が火をつけ、まさに手の付けられない混乱状態だ。ボルトン氏のごく最近の「暴露本」もその一つの火種だが、更に政権の統治能力が失墜する中、国中に分断の炎が燃え広がっていると言えよう。

そして現在は、ついには移民停止どころか、ビザの発給すら基本的に止まる状態となっており、デジタル課税をめぐる欧州とのバトル、香港問題・ウイグル問題・通商問題などを巡る中国との論争を中心に、世界との分断も顕著だ。

経済、人種、世代、地域などを軸とした分極化が、メタ的にアメリカ社会をズタズタに分断し、それがそのまま世界・国際社会をもバラバラにしている感じすらする。
私が小~中学生の頃、アメリカへの憧れを抱いた映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー 1~3』が、今月3週間連続でTV放映されていたので、思わず全部見てしまったが、あの良きアメリカはどこにいってしまったのか。

ご存知のタイムマシン・ストーリーだが、未来は白紙であって希望を持って書き換えられること、テクノロジーのすばらしさなどを言いようもないワクワク感とともに意識して、かつて大いに感銘を受けたことを思い出した。この映画では、途中、「過去」は俳優だったレーガン氏が「今」は大統領になっていることや、「過去」ではカフェでバイトとしてこき使われていた黒人給仕が、「今」は市長になっていることを強調するシーンもあったが、誰でも夢と希望を持てる社会、というのがアメリカの象徴的な良さだった。

ただ、現在のような絶望的なアメリカに全く希望がないわけではない。特に情報通信系のテクノロジーは、アメリカが世界の最先端を行っているのは間違いなく、ピンチをバネに、更に世界を席巻するような企業が生まれるかもしれない。必要は発明の母であり、痛みは改革を加速する。アメリカを象徴するIT系ベンチャー企業のウーバーやインスタグラムが生まれたのは、約10年前のリーマンショックの直後だった。

壊れかかっているアメリカの希望は、東から西への重点のシフト、即ち、ニューヨークやワシントンD.C.での従来的大企業や政治行政の没落を横目に進む、西海岸テクノロジー系ベンチャー企業の更なる誕生や躍進なのではないか。気づいてみたら、アメリカの事実上の首都は(世界中が注目し、連絡をとったりアプローチしたりしたがる先は)、サンフランシスコやロサンゼルス、などという事になるかも知れない。

②へつづく:2日朝掲載します