2020年、空から「女帝」が降ってくる!? --- 清水 隆司

2020年07月19日 06:00

先日東京都知事に再選を果たした小池百合子氏に関する本「女帝 小池百合子」(書評:「女帝 小池百合子」氏はマーケティングの天才)が売れているのだという。あいにく読んでいないが、伝え聞く話によると、かなりグロテスクな人物像が描かれているらしい。

都内在住ではないので、都知事選は完全に他人事だったのだが、大半の予想通り小池氏圧勝という結果に終わったことには、さすがに強い違和感を覚えた。都の選挙民は小池氏の——女帝の何を評価したのか。

地方自治の長は、実務型の人物が増えている。財政の逼迫、人口減少、高齢化——実務型でなければ対応できない問題が増えているからだろう。一方で相変わらず、知事の仕事は知事の椅子に座ることだ、と考える人も少なからずいる。はたして都民には、小池氏がどちらのタイプに見えたのか。改めて問わなくても、選挙結果が如実に物語ってはいるのだが。

2016年の都知事選で小池氏は「七つのゼロ」という公約(詳しく書かない)を掲げていた。

実績を強調しているが、実態は集計方法の変更による成果の偽装で、ほとんどは、手付かずのままか、合格点には遠く及ばない有様らしい。

加えて、彼女は都の財政に重大なダメージを与えてもいる。築地市場の豊洲移転を都議会に諮らず恣意的に延期した件だ。一説には、実際に豊洲市場移転が完了するまでにかかった追加の支出は、総額五百億円を上回ったといわれている。小池氏が移転延期を決断したのは、豊洲市場の地下水から基準値を超えるベンゼンやヒ素といった有害物質が検出されたせいなのだが、もともとの基準が厳しすぎたこと、地下水が飲料水や洗浄水には使われないことなどを加味して、専門家会議は「問題ない」と結論付けた。

2018年、豊洲市場を視察する小池知事(東京都サイトより)

しかし、小池氏は専門家による提言を受け入れなかった。理由は「安全だが、安心ではない」から。理屈の付け方がちょうど不安商法に近い。都民の不安を煽り、自分を不安解消の救世主に見せかける。反原発の世論を盛りあげるため、放射能デマを撒き散らし、福島を人の住めないディストピアに貶めている活動家たちとまったく同じ手法なのだ。

さらに奇怪なのはその後。小池氏は、土壌汚染対策の追加工事を敢行するが、結果的に基準値を下回ることがなかったのにもかかわらず、勝手に安全宣言を出して、急遽豊洲市場移転を決定。「築地は守る。豊洲は生かす」と強弁し、豊洲の使用は一時的で、築地を市場として再開発すると、移転反対派の一部市場関係者に信じ込ませておいて、最後はあっさり話を覆し、築地市場解体も決めてしまう。

まさに女帝。清々しいほどの二枚舌。でも、小池氏の真の凄さは批判をかわす能力の高さだ。言語明瞭・意味不明瞭な弁舌でのらりくらりとやり過ごし、批判する側が、呆れ果て、追及をやめると、始めから何事もなかったかのように毅然とした態度で振る舞う。劇場型の政治家としては、「天才」といっていいのではないだろうか(褒めていない)。

都知事選直前は、コロナ絡みの無内容な記者会見を繰り返して、仕事してます感を自己演出したり、東京アラートを発動して、夜の都庁を赤く染めあげて見せたりと、どうも小池氏は、政治の真髄とは露出を増やして目立つことだ、と高を括っているきらいがある。

感染拡大警報を宣言する小池都知事(東京都YouTube)

小池氏はメディアを熟知している。自分が、何を言い、どう行動すれば、メディアの気を引き、好意的に取りあげられるか、メディアの向こうにいる民衆に自分を有能だと印象付けられるのかを、気味が悪いくらい完璧に身に着けているのだ。

情けないのは巨大メディアだ。小池氏のコロナ会見に中身がないのは、歴然としているのだから、お得意の「報道しない自由」を行使して、無視すればいいものを、連日彼女の自己PRをテレビで流し、新聞紙面で紹介する。小池氏の手に掛かれば、巨大メディアでさえいとも容易く「マスゴミ」と化してしまう。もっとも、端からそれほどレベルは高くない、と揶揄する方もいそうだが。

小池氏は今も連日コロナ会見を続けている。そのことは何を暗示しているのか。「政界渡り鳥」の異名を持つ彼女の独特の嗅覚はどんなにおいを嗅ぎつけているのか。

以下は単なる私見だ。小池氏はもうとうに都知事の地位に飽きているように見える。彼女は、何かをしたいがために地位を目指すのではなく、地位に就くこと自体が自己実現というパーソナリティーなのだ。事実、当選直後のテレビ出演の際、「任期を全うするか」との質問に明言を避けている。

だとしたら、強烈な上昇志向を持つ彼女が、次に目指す地位とはなんだろうか。問題議員を多数輩出する自民党の掃き溜めのような派閥の領袖にさかんにすり寄っているのは、なんのためか。彼女のこれまでの行動原理を知っていれば、予想するのはさほど難しくないはずだ。

「1999年、7の月。空から恐怖の大王が降ってくるだろう」

そう予言したのはノストラダムスだが、もし本当に噂通り衆議院が秋頃に解散したら、時を置かず空から女帝が降ってくる可能性がある。ノストラダムスの予言は当たらなかったから、女帝も降ってこない? そうかもしれない。

だが、年内の衆議院選挙が現実になった時は、念のため、空を見上げてみることをお勧めする。小池氏の国政時代の選挙区は東京10区。そこにはすでに議席を持った自民党の後継議員がいる。いかに厚顔な彼女でも、現職議員を押しのけてまでそこから立候補しようとはしないだろう。

その場合、国政復帰を目指す彼女の選挙区は未定、ということになる。つまり——。空から女帝が降ってくるのは、あなたの頭の上かもしれないのだ。

清水 隆司 
大学卒業後、フリーターを経て、フリーライター。政治・経済などを取材。

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