画像PDFで問題集を配布しても、画面を書き写すか印刷しないと利用できない。子どもたちによる利用を著しく制限する、つまりアクセシビリティ非対応のこの方法が結構残っている。
文部科学省が開設した「子供の学び応援サイト」でも使われていると3月28日の記事で指摘した。プリンタが自宅にない大学生が大勢いるので、資料はプリントアウトして利用するという形式のオンライン授業は適切ではないという報道もあった。
問題集をウェブ画面に表示して対話型で利用させると、状況は圧倒的に改善される。掛け算のドリルで、その子が6の段から上で間違いが多いとわかったら、繰り返し出題することもできるし、時には5の段以下の簡単な問題にして自信を付けさせるのもよい。子どもたちは自分の理解度に応じた教育が受けられるようになり、出題側には教育方法の改善につながる情報が得られる。
オンライン型の家庭学習ビジネスですでに実施されている手法だが、アクセシビリティ対応で教育が変わる典型例でもある。これを学校教育に導入するには、個々の子どもの進度に合わせるために、協働学習や個別学習のほうが一斉学習よりも適している。
英語の発音を教材CDで学ばせる教育方法がかつて存在し、今も残っている。しかし、教材をデジタル化すれば、あらかじめ記録した音声をクリック一つ、QRコードの読み取り一回で再生できるようになる。これも紙の教科書時代には考えられなかった学習方法だが、今では家庭学習用に提供されている。子どもたちの発音をデバイスが聞き取り指導するのも、今では簡単である。
普及には音声認識・音声合成技術の発展が一役買っている。音声合成・音声認識は1970年代から研究されてきたが、初期の利用者は障害者で、アクセシビリティを支援する特殊な製品に組み込まれていた。今では、ありとあらゆる製品サービスが話すし、人間の言葉が理解できるものも多い。
教育でのアクセシビリティへの対応にはコストがかかる。しかし、昨日の記事にも書いたように、それによって障害を持つ子どもたちも、障害をもたない子どもたちと一緒に教育が受けられるようになる。それに加えて、そんな支援技術はいつの間にか主流製品サービスに組み込まれ、今日の記事に書いたように広く利用されていく。こうして費用を上回る効果が期待できる。
アクセシビリティ対応は教育を変革する。このことを理解して、教育へのICT活用政策には、最初からアクセシビリティ対応を組み入れるのがよい。