コロナ感染より帰省やめて親が死ぬ可能性が大きい

2020年08月04日 18:00

特定の学説は信じず1万人未満の死者は気にするな」(8月1日)のなかでも取り上げたのだが、家族間の感染をおそれるあまり帰省しないとか、施設や病院で面会を断るなど、まったく合理性を欠くと思う。

それをFacebookで書いたらいろんな意見も寄せられたので、これについてもう少し詳しく論じたい。

旅行するとコロナが拡散するといういうのでG0T0キャンペーンも批判されるし、お盆に帰省しようとすると非常識だとかいわれて村八分にされかねない雰囲気で、実際に帰省を断念する人も多い。

 菅官房長官は、8月のお盆の帰省に関し、「国として、県をまたぐ移動を一律に控えてくださいと言っているわけではない」と一律に自粛を求める考えがないとしているが、西村大臣は、祖父母に重症化リスクがあり、注意してもらわないといけないと表明して混乱している。

NHKニュースより

しかし、東京から症状が出ているわけでもない子や孫が帰省して、それがコロナを感染させ、さらに、それが親や祖父母の死につながる危険性は何パーセントあるのだろうか。ともかく今は、全国で新規感染者が1000人ほどで死んでいる人が5人以下なのであるから、運悪く罹ったところで1パーセント以下の死亡率だ。これは、ほとんどネグリジブルであって、帰省した人が無症状の感染者で、親や祖父母に気をつけていたにもかかわらず感染させ、しかも、死ぬ可能性など天文学的なものでしかない。

一方、一年間、帰省せずに来年は親や祖父母が死んでる可能性は、男性についてみると、60歳の誕生日から一年の死亡率は0.9パーセントだが、65歳で1.2パーセント、70歳で2.1パーセント、75歳で3.6パーセント、80歳で6.0パーセント、85歳で10パーセント、90歳でなら16.5パーセントだ。

これはそれぞれの誕生日の話だから、80歳の親の場合、平均でいえば80歳(6.0%)と81歳(6.7%)の中間の数字で論じねばならないし、二年のあいだ帰省しなければ上記の数字の2倍よりかなり高い死亡率となる。80歳なら15パーセントほどだ。帰省をしないことで次の帰省の前に亡くなっている可能性はかなり大きいのである。

これは帰省についてのものだが、病院や施設に入っている高齢者については、このごろ、コロナ流行の前から冬の間は何ヶ月も面会を止めている施設や病院が多い。

今回も同じ町にいながら高齢の親に半年会わせてもらえていないとか言う人が多いのに愕然とした。病気で余命数ヶ月とみられる親に何ヶ月も会わさないなど論外である。

もちろん、今回はネットを通じてのリモート面会などの工夫もしているようだが、それに慣れていない人だと、自分の子供や孫だと認識するのも大変だという。非常に小さい可能性であるコロナにうつることを忌避するために、親が死ぬ前に半年会えなかったとか、久しぶりに会ったときには「どちらさんですか」と言われる子が何万人もいるはずだ。

死ななくても、人と会わないことは意識レベルを低下させるわけで、そんなことしてまで寿命を一日でも伸ばすことをもって目標してどうするのか。

ヨーロッパの高齢者施設では、ビニールの仕切り越しだが、両手の形が互いに突き出るようにしてハグできるように工夫したりもしているようだ。

最近、普通の寿命より健康寿命を延ばそうと提唱されているが、子や孫、場合によっては配偶者にも会えずに寿命を延ばすことにどれだけの意味もあるのか。日本の医療関係者の意識は自分たちの自己満足とセクショナリズム、そして責任回避と死なさず生ける屍として長く金儲けの対象とすることにしようとしているだけで、人間として致命的に欠けているものがあり職業倫理としていかがなものか(あえていうが言い過ぎとは思わない。第一波のときのように病気の正体がわからないでパニックになっていた時期なら防御的になるのもわかるが、いまはもはやそういう状況ではない)。

これまでも、普通に風邪やインフルエンザが流行っていると言うだけで何ヶ月も親に会わせてもらえないという嘆きを聞いておかしいと思っていたが、真摯に業界全体で反省して欲しい。

写真AC:編集部

ただし、危険な面会を減らすために、インフルエンザの場合で言えば、ワクチン接種の証明を義務づけるとか、日ごろからネットでの家族との交流を繰り返させて慣れさせておくとか、前向きの対策はぜひやるべきだと思う。私の友人の医者は入院患者の家族にワクチン接種を強く勧奨して院内感染の防止に成功している。

 今朝のニュースで愛知県の大村知事や秋田県の佐竹知事は帰省を止めて欲しいと呼びかけている。大村知事の感覚はこのところヒューマンでない。もともととんがったところのある人だが、それがいい方向に発揮されていないのは残念。

また、秋田県がたしか人口減少日本一、自殺日本一という惨憺たる現状にある背景として、こういう人間性を無視した守りの姿勢一本槍(すべて県庁に責任があるわけでないが)も根底にあるのか反省すべきだ。

大阪の吉村知事が気をつけながらも帰省するなと言わないといっているのは見識だ。

アゴラの最新ニュース情報を、いいねしてチェックしよう!
八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

過去の記事

ページの先頭に戻る↑