美しいインド系カマラ・ハリスの副大統領候補指名

2020年08月12日 09:00

カマラ・ハリス氏(公式写真)

民主党大統領候補にほぼ確定しているバイデン前副大統領は、副大統領には女性を選ぶとしていたが、ついに、カリフォルニア州選出のカマラ・ハリス上院議員を指名した。

CNNがハリス議員を称賛するメモをバイデン氏が持っているのが、7月29日にカメラに収められたと報じていたが、なぜか、副大統領候補の発表は延期されていた。

すぐにでも大統領がつとまるといわれるが、昨年のテレビ討論でバイデン氏を論破したとか、けっこう美人なのでバイデン夫人が難色を示しているといわれてきた。

かつてオバマ前大統領も彼女を「全米で最も美しい州司法長官(the best looking attorney general)」と誉めて謝罪に追い込まれたことがある。

有能なだけでなく、オバマ前大統領や地元サンフランシスコ選出のペロシ下院議長のお気に入りでもある。少しでもアフリカ系の血が混じっていると黒人扱いするアメリカ人の分類では黒人だが、コーカシアンの流れを汲むインド人とのハーフだ。ジャマイカ出身の父親も白人とアフリカ系の混血らしい外観であって、“黒人らしくない黒人”であることはオバマ前大統領と同様に白人の支持を受けやすいという指摘もある。

本人は自分は「アメリカ系」だといっている。これは先住民系の意味と誤解する日本人も多いが、国勢調査での回答として、先住民系とは別に用意されている「先祖のことは意識せずアメリカ系と意識している人たちを指す」分類である。

ここしばらく、副大統領候補の選択は大統領選挙の帰趨に大きな影響を与えているが、特に、今回、注目度が高いのは、バイデン氏が就任時に78歳であり、任期を全うできない可能性も統計的にはそれなりに高く(20%前後か)、2024年に再選をめざして立候補しない可能性はさらに高いからである。

いずれにせよ、11月の選挙で副大統領として当選すれば、78歳で大統領になるバイデンが任期中に昇格する確率も統計的にはということだが、20%程度あり、それと2024年に大統領候補となる可能性を併せたら2025年にハリスが大統領になるのは、50%くらいには達するはずなのである。

アメリカ大統領史100の真実と嘘 (扶桑社新書)
八幡 和郎
扶桑社
2020-09-02

 

私もまもなく刊行予定の扶桑社新書(『アメリカ大統領史100の真実と嘘』帯の写真に注目)のためにいろいろ分析もしたのだが、日系のグレン・フクシマ氏は、以下の11人が主要な副大統領候補としていた。

ステイシー・エイブラムス 元ジョージア州議会議員(46)

タミー・ボールドウィン ウィスコンシン州選出上院議員 (58)

ケイシャ・ランス・ボトムズ アトランタ市長(50)

バル・デミングズ フロリダ州選出下院議員(63)

タミー・ダックワーズ イリノイ州選出上院議員(52)

ミシェル・ルーハン・グリシャム ニューメキシコ州知事(60)

カマラ・ハリス カリフォルニア州選出上院議員(55)

ジーナ・ライモンド ロードアイランド州知事(49)

スーザン・ライス 元国家安全保障会議議長・大統領補佐官(55)

エリザベス・ウォーレン マサチューセッツ州選出上院議員(71)

グレッチェン・ホイットマー ミシガン州知事(48)

エイブラムス、ボトムズ、デミングズ、ハリス、およびライスはアフリカ系アメリカ人(ハリスは少し複雑)、ダックワーズ(イラク戦争に従軍、搭乗していたヘリコプターが撃墜されたことで両足を失った退役軍人)はアメリカ軍人とタイ在住の華僑の女性とのハーフ、グリシャムはニュー・メキシコがスペイン領だった時代から12世代在住していスペイン系である。

ニュージャージー州のモンマス大学が実施した世論調査によると、民主党支持者の54%が副大統領候補には黒人女性がふさわしいと回答し、カマラ・ハリスは28%、エリザベス・ウォーレン13%、クロブシャー12%、エイブラムス10%、デミングズ7%だった。

というわけで、最有力候補はカマラ・ハリスだとみられていた。カマラ・ハリスの父はジャマイカ出身、スタンフォード大学の経済学教授でアフリカ系と欧州系の中間的な風貌である。母親はチェンナイ出身のインド人医学者でカーマラという名もサンスクリット語で「蓮の女性」を意味する。両親が離婚後に母親と暮らしたのでインド系としての意識が強そうだ。

母親の仕事でモントリオールで育ったあと、黒人大学であるハワード大学を卒業。カリフォルニア大学ヘイスティングス・ロー・スクールで法務博士号を取得。2003年にサンフランシスコの地方検事、2010年にカリフォルニア州の州司法長官に選出され、2016年に上院議員になった。

知的に高い両親に育てられたこともあり、しばしば、女性のオバマといわれ、人間関係をつくるのにも良好で、とくに、地元ではナンシー・ペロシ下院議長やブラウン州知事からも支援され、大統領候補としても有力で、候補予定者討論会にも参加した。

ただ、検察官や司法長官時代に犯罪者に厳しかったというのでリベラル層の支持が上がらなかったのと、資金調達が不発に終わり、1月3日には撤退した。

経歴やスター性は申し分ないし、人種的にも多様なルーツをもっているので、白人からの拒否感も小さく、すぐにでも大統領が勤まる安心感もあるのだが、バイデン氏がスクールバス制度(居住地域に関係なくスクールバスでさまざまな地域の学校に子供たちを通学させること)に反対していたことを、昨年7月5日の民主党予備選挙の討論会で攻撃したことを、バイデン本人も夫人も忘れてないといわれる。

そこで、アフリカ系の女性政治家と言うことでは、フロリダ州選出のバル・デミングズ下院議員、アトランタのケイシャ・ランス・ボトムズ市長、ジョージア州の元州議会議員で一般教書演説への反対演説を行ったステイシー・エイブラムスらも有望だとされていた。

左からデミングス、ボトムズ、エイブラム各氏(いずれも本人ツイッターより)

しかし、いかんせん、彼女たちは、選挙向きであっても、少なくとも大統領になるに相応しい経歴とはいえず、副大統領候補同士の討論会でペンス副大統領に太刀打ちできるとは思えなかった。スーザン・ライス は、実力からすれば申し分ないが、ベンガジ総領事館攻撃事件での不手際という過去があり、その点について集中砲火をあびる可能性がある(親中的なので日本にとっては好ましくなかった)。

有色人種にこだわらねば、上院議員3期目のクロブシャーが内政・外交ともにもっとも安心できる副大統領候補なのだが、地元ミネソタ州での事件のあとだけに、怖じ気づいて有色人種を候補にすべきだとバイデンに辞退を申し出た。

ホイットマー州知事のミシガン州とか、ボールドウィン上院議員のウィスコンシン州というのは、選挙戦での鍵となる州のひとつというのは有利な条件だ。ウォーレン上院議員は、彼女のラディカルな主張が足を引っ張るだろうと見られた。

いずれにせよ、副大統領候補は、バイデン夫妻の意向と選考委員会の意見で決まるわけで、選考委員会の実質的なキーパーソンは、バイデン地元デラウェア州選出の下院議員である黒人女性のリサ・ブラント・ロチェスターであったとされている。

こういう経緯を経て、カマラ・ハリスが選ばれたわけだが、強力である一方、副大統領候補というだけでなく次期大統領最有力候補として共和党から徹底的な攻撃にさらされるだろう。

また、日本国内政治への影響としては、同じ弁護士出身でややテイストが近い稲田朋美・自民党政調会長にとっては追い風になるのかもしれない。

一方、サンフランシスコ出身のハリスの指名は、姉妹都市提携を解消した当時の大阪市長である吉村大阪府知事にとってはごたごたの種になってくるだろう。

(本稿は6月27日に掲載した「副大統領最有力とされるカマラ・ハリスという女性」をもとに書き直したものである)

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八幡 和郎
評論家、歴史作家、徳島文理大学教授

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