新型コロナ:ウイルス干渉でツインデミックは起こらない! --- 加藤 完司

2020年09月25日 06:00

加藤 完司(元エンジニア)

今シーズンの季節性インフルエンザの流行期を前にし、新型コロナウイルスとの同時流行が懸念されている。いわゆる「ツインデミック」、政府や全国の自治体も医療体制の逼迫を懸念し、検査体制や医療提供体制の確保・拡充に取り組みを急いでいる。

しかし、「ツインデミック」は懸念されるべきなのか、むしろ「ツインデミック」が生じる可能性は極めて低いと考えた方が科学的ではないのか?

今シーズン(2019年-2020年)のインフルエンザの感染状況

今シーズンのインフルエンザ患者数の推移、データは厚生労働省の季節性インフルエンザ専用ページのデータ。今年だけでなく過去11年分のデータも合わせて示している。縦軸は全国の多数のモニター医療機関での感染者数の平均値で感染者数の絶対値ではないが、流行を概観するには十分。

今シーズンのインフルエンザは、例年より早く11月に流行の兆しが始まった。その後例年の通り爆発的に感染者が増え続けるが、ピークは不思議なことに昨年の第52週、すなわち年末であった。

通年であれば図に明らかなように第4週、即ち1月終わりから2月初めがピークになる。ところが1月第1週には感染者数が急減している。その後3週間ほど小康状態を続け、第5週、すなわちダイアモンドプリンセスが入港したころにはまた急減し始めた。そして緊急事態宣言が出される3月下旬にはインフルエンザはほぼ収束した。

新型コロナウイルス感染者の推移の復習

  1. 今シーズンのインフルエンザ感染者数は例年に比べ異常に少なかったが、異常な減少が観測されたのは2020年の第1週。中国で新型コロナウイルス感染者が発見されたばかりだった。当時の日本では所詮中国のこととして、国内の関心は薄く、中国人旅行者も年末年始にかけて大量に入国していた。
  2. インフルエンザ感染者数の例年に比べて異常に少ない状況はその後も続き、例年のピーク時の1月末から2月初めにかけても増加は見られなかった。この頃はコロナの国内での発症者も観測されていない。
  3. コロナの発症者は2月中旬に初めて発見され、その後の経緯は御承知の通り。
  4. 中国人の入国制限は3月はじめ。

今シーズンのインフルエンザ感染者が異常に少なかった理由として、マスクや手洗いなどの基本的予防対策が功を奏したという説を多くの専門家が説明しているが、新型コロナウイルスに対する感染防止策が一般化する3月には、インフルエンザはすでに収束過程にあったのだから説明になっていない。

なぜ今シーズンのインフルエンザ感染者数が異常に少なかったか?

それが今回のテーマである。

 WHOはCOVID-19だけでなく、インフルエンザに関しても隔週でレポートを公表している。下図はレポートの中の図で、南半球の温帯に属する国々の、昨年後半から8月31日までのインフルエンザ感染者数をウイルス種別に積み上げたグラフである。

感染者の実数はわからないが、相対的な毎週の感染者数の推移は一目瞭然、2020年に関しては、第11週、すなわち3月下旬をピークとして激減をはじめ、第16週、即ち4月下旬から5月初めより、インフルエンザ患者がほとんど皆無になっている。

 

南半球では日本と夏冬の時期が逆、インフルエンザのピークが観測されることを念頭にして2019年通年の実績を見る。赤の四角は上図と同じ年初から8月末までの期間を示す。インフルエンザは毎年5月、第16週ごろから感染者が増え始めるが今年は逆に激減してほぼゼロレベルになっているというのが実態。ピークは3月末頃で第11-12週であった。現在の状況がいかに異常であるかがわかるだろう。日本のケースよりも極端。

WHOのレポートの南半球に関する記述にこうある。

  • 南半球のインフルエンザは例年と比べ記録的に少ない。
  • オセアニアではインフルエンザ様の病なども例年と比べ少なく、オーストラリアやニュージーランドではインフルエンザが増えているとはいえ、インフルエンザウイルスはほとんど検出されていない。
  • 南アフリカでは、新型コロナウイルスは検出されるもののインフルエンザウイルスは全く検出されていない。
  • 南米ではアルゼンチンインフルエンザウイルスはほとんど検出されず、チリでは新型コロナウイルスの増加とともにSARI(重症急性呼吸器感染症)患者が減少し続けている

次に南半球の主な国でのインフルエンザのピークとコロナ感染者数増大の関係を見てみる。なお、このシリーズの主役はインフルエンザ、コロナの図がたくさん出てくるが、視点は常にインフルエンザにあり、ポイントはインフルエンザのピークとコロナの流行との時差。

まずアルゼンチン。現在チリとともに累積コロナ感染者数においてベスト10入りしており、かつ感染爆発中。図中にインフルエンザのピークである第11-12週を赤の矢印で記した。日本の実績で見たように、インフルエンザのピークの時点ではコロナの感染者は兆候が表れた程度である。チリも程度の差はあれほぼ同じ(図は略)。

南アフリカは60万人を超える感染者が確認された現在第8位のコロナ汚染国であるが、やはり傾向は同様で、感染爆発の兆候の見える1か月前がインフルエンザの感染のピーク。

一方オーストラリアは傾向が異なり、インフルエンザのピークとコロナの第一波のピークが重なっている。

 
このようにCOVID-19の流行1-2か月前にインフルエンザ患者の発生のピークを迎え、以後インフルエンザはほぼ絶滅に至っている。オーストラリアも、1-2か月前ではなく0ヶ月前と考えれば、本質的に同じ観測結果である。

これは何を意味するのか?

 PAHO(Pan American Health Organization)が南北アメリカのインフルエンザの現況に関する秀逸なレポートをまとめている。ここにこの疑問に対する完ぺきな回答が示されていた。

詳細は不明なものの検査対象となった患者から得られた、3つのウイルスの感染率の一年間の推移である。3つのウイルスとは、インフルエンザウイルス(赤)、RSウイルス(青)、そして新型コロナウイルス(紫)。原図は6年間のデータであるが、説明のため2019年と2020年の現在までの推移を切り取って拡大したのでボケてしまった。


2019年(他の年も同様なので割愛)を見ると、年央、すなわち南半球の冬にインフルエンザウイルスとRSウイルスの検出率がピークを形成している。要するに毎年冬になると程度や時期に多少の差はあるがインフルエンザが流行しているということを、ウイルスの感染率で示している。

 2020年。南米でCOVID-19の感染が見え始めたのは3月半ば。第10週前後である。それに対応して紫色のコロナウイルスの検出率が急増する。急増時期も第10週ぐらいで臨床データと一致している。驚くべきことに、コロナウイルスの急増とともに例年急増するインフルエンザとRSウイルスが、コロナウイルスと刺し違えるように絶滅している。

 ウイルス干渉

これはウイルス干渉そのものである。ウィキペディアにはこうある;

ウイルス学における干渉とは1個の細胞に複数のウイルスが感染したときに一方あるいはその両方の増殖が抑制される現象。干渉の機構として、一方のウイルスが吸着に必要なレセプターを占領あるいは破壊してしまうために他方のウイルスが吸着することができなくなる、増殖に必要な成分が一方に利用され他方が利用できない、一方が他方の増殖を阻害する因子を放出するなどの異種ウイルス間の干渉現象のほか(以下略)。

データはコロナウイルスによって、インフルエンザウイルス(RSウイルスも)の増殖が完ぺきに阻害されていることを明白に示している。わかりやすく言えば、「コロナウイルスが優勢であればインフルエンザは発生しない。」

上図(チリ)の原図例としてアルゼンチンの過去5年間のウイルスの分布の推移を示す。アルゼンチンだけでなく、南米はもちろん北米の国々を含め、すべての国でコロナウイルスに干渉傾向を認めることができる。

 
日本の場合、コロナの感染が増加するよりもかなり前の年初にインフルエンザのピークを迎えた。年末年始を含め当時は多数の中国人が来日していた。新型コロナウイルスは昨年より持ち込まれていたのだが、1月2月の時点で十分な検査がされていなかっただけだろう。不顕性感染、もしくは軽症なので風邪とみなされていたと考えられば整合性は保たれる。

南半球でも同様に新型コロナウイルスが遅ればせながら持ち込まれていたので、インフルエンザウイルスが急減したのだろう。

だから日本だけでなく北半球の各国でツインデミックは起きないと考える方が妥当といえる。南半球は、インフルエンザの流行期とコロナの感染爆発期が重なったので、本来ツインデミックが最初に危惧されねばならないはずだ。が実態はここまで縷々記したとおりツインデミックどころかインフルエンザは絶滅に近い状態にある。北半球ではツインデミックどころか、インフルエンザの感染自体が異常に少なくなる可能性が大きい。

この事実はさらに、極めて有効なインフルエンザ流行阻止対策の可能性を示唆している。日本では季節性のインフルエンザが毎年感染爆発を起こしている。「有効な」インフルエンザワクチンが開発され、国を挙げてワクチン接種が奨励、実行されているにも係わらず、だ。PAHOのデータはコロナウイルスがワクチンとしてきわめて高い効果を持つことを実証している。

将来、コロナウイルスによるウイルス干渉のメカニズムが解明され、現在のワクチンとは別のメカニズムのコロナウイルス系のワクチンが開発されれば、インフルエンザの脅威から人類は解放され、年間数十万人の死者と数億人の患者、巨額の医療費や国庫負担、そして製薬会社の利益が蒸発することだろう。

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