勝負あった、アメリカ大統領選

岡本 裕明

アメリカ大統領選挙、昨日の副大統領候補の討論会を拝見していました。論戦そのものに決め手はなかったと思いますが、その後のメディア発表の評価ではハリス候補がペンス候補を引き離していると報じられています。但し、私の見ている限り、中国との貿易戦争に関してハリス候補は中国への姿勢を明白にせず、むしろアメリカが被った影響が大きいとトランプ政権に非があるという論じ方だった点において私は不満が残ります。

(バイデン氏Facebook、ホワイトハウスHPから:編集部)

(バイデン氏Facebook、ホワイトハウスHPから:編集部)

一方でトランプ大統領のコロナからの退院後の言動も乱れ気味です。議会で激しい議論が続く追加経済支援策について大統領選が終わるまでやらないと述べてみたり、第2回目の大統領候補同士の討論会がバーチャルなら時間の無駄だと主張したりする点は稚拙さを打ち出し、アメリカ全体の風向きを変えたように見えます。

アメリカメディアの論調もすでにバイデン氏と民主党の圧勝とみる予想が増えてきています。株価の上昇も続きますが、これはかなり、ひねくれた論法ですが、トランプ大統領の政策である副作用を伴う強硬策ではなく、より常識的範囲に沿ったばらまきを含む国家再建の方に経済回復の糸口があると解釈し始めています。

確かにバイデン氏の政策の一つに法人税の引き上げがあるため、一般的にはネガティブなのですが、それよりコロナ禍のアメリカ経済をいかに早く回復させるかという論理的で広く大衆受けし説得力ある手法を取るであろう民主党に理があると読み込んでいるようです。

ではGAFAの解体論ですが、これについても直接的解体がすぐに進むわけではなく、長い議論を経て仮に事業分割が起きてもGAFAの影響力は何らかの形で維持されるとみる向きが多く、アメリカ特有のポジティブシンキングによる前向きな検討に変わってきています。

世論調査では10月7日現在でバイデン氏が10ポイントほどリード、賭けサイトで30ポイントの差がついています。一般的には賭けサイトは選挙プロセスのあらゆるファクターを考慮したもので選挙結果の実態により近いものとされています。よってこの1週間ほどで差が大きく開いてしまったことで私は勝負あったとみています。ここからトランプ氏が挽回するのはほぼ不可能かと思います。

先進国の都市部ではリベラルが強いとされます。理由は労働者が多く、資本側の搾取に立ち向かうための労働者の味方という位置づけでした。過去形にしたのはそのようなイメージからより広範な声を反映して誰にでも住みやすい国家や街を提供するという視点に変わってきている点は無視できないでしょう。

多分、日本の一定年齢以上の方からは「お前何言っているか?」とお叱りを受けると思います。ただ、私がリベラル派になったわけではなく、それが世界の趨勢になりつつある点は好む好まざるにかかわらす受け止めておく必要がある点を申し上げたいと思います。その点、日本は特殊だと思っています。世界で最も進化した社会主義的国家と言われる基準を作った歴史の後ろでは自民党がほとんど政権を握っていたわけですから世界から見ればある意味、摩訶不思議と言ってもおかしくないのでしょう。

ここBC州も解散選挙となっており、10月24日に投開票が行われます。中道左派で現与党が圧倒的有利とされます。保守系は必死の巻き返しを図りますが、州税の一時廃止とか交通渋滞のネックになっている橋の建築といった提言がコロナ禍でほとんど市民に響いていないのは人々の関心がそこにないからなのでしょう。今日のケーキより1年間の飴玉を選ぶ感じでしょうか?私は選挙権はありませんが、寄付などを通じてそれなりにつながっています。先日もある議員の応援メッセージのビデオ撮りに参加しました。

多分ですが、右派、左派、リベラル、コンサバティブ、革新、保守といった枠組みの中身が社会の変貌とともに大きく変わってきているのだろうと思います。よって言葉尻にとらわれてお前は右、左という判断をしていると大局を見誤ることもあるかもしれません。

日本政府は今頃、アメリカ民主党政権とのつながりを必死に探していることでしょう。前回、トランプ政権になった際、誰も近寄らないトランプタワーに乗り込んだ安倍元首相のような立ち回りは今回は難しそうです。どのような外交政策をとるのか、日本政府も必死の工作に入っているのではないかと察します。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2020年10月9日の記事より転載させていただきました。