米大統領選:共和党の牙城 テキサスに異変が --- 鎌田 慈央

2020年11月01日 06:00

justraveling.com/Flickr:編集部

テキサスが接戦州に?

共和党の牙城であるテキサス州の選挙情勢が、再選を目指すトランプ氏にとって雲行きの怪しいものとなっている。

テキサス州はかつては長らく民主党の牙城であったが、1980年にレーガン大統領が保守旋風を巻き起こし、共和党が奪取して以降、大統領選において共和党はテキサス州で一度も負けたことが無い。

しかし、米NBCニュースが発表した選挙情勢の評価によると、テキサス州は今回の大統領選ではどちらの大統領候補に転ぶか分からない(toss up)と認定された。

トランプ大統領としては2016年の大統領選での勝利に直結した中西部のミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンでの戦況が悪化したのを受け、選挙戦略を変えざるを得なくなっている。そんな中、本来は心配のいらないテキサスさえも落とす可能性が出てきたことは、いかに彼にとって今回の選挙が厳しいものとなっているかを物語っている。

どのような要素がテキサス州における共和党の優位性を損ねているのだろうか?

1.大卒者の共和党離れ

一つめの要素は、大卒者の共和党離れである。

2016年の大統領選でトランプ氏と共和党の大統領候補の座を争ったテッド・クルーズ上院議員は、自身の再選を掛けた2018年3月のテキサス州での上院選において辛勝したものの、対抗馬である民主党のベトー・オルーク氏との差はたった3%だった。

クルーズ氏が大苦戦した理由は、大卒者の大部分が他候補に流れたからであるとされている。

また、今年6月に発表された統計によると、バイデン氏は4年前の同時期のヒラリー・クリントン氏の大卒者からの支持率を、約10%上回っている。

このことから、大卒者が共和党を見放し、総じて民主党寄りとなっていることがテキサス州における共和党の苦戦を説明するひとつの理由だと言える。

2.トランプが率いる共和党に嫌悪感を抱く共和党員の離反

二つ目の理由は、穏健な共和党支持者がトランプ大統領に対して嫌悪感を抱いているからである。

2016年にトランプ氏はテキサス州で勝利を収めたものの、その時のパフォーマンスは共和党の大統領候補としてはあまり良くないものであった。共和党は1990年代以降は大統領選において常に二桁以上の差を民主党につけて勝っていた。そして、2012年の共和党の候補であったロムニー氏はオバマ氏を約20%差で突き放し, 少なくとも2012年までは誰も共和党がテキサス州を落とす可能性があるとは思いもしなかったであろう。

だが、2016年の選挙ではクリントン氏はトランプ氏を9ポイント差まで追い込んだ。二桁の壁を打ち破ったのである。

そして、この現象は共和党内部で起こっている分裂を露呈させる形になった。2012年の候補であったロムニー氏とトランプ氏は同じ共和党に属しながらかなり異なった考えを持っている。

ロムニー氏の場合は、アメリカが世界でリーダーシップを発揮することを求め、自由貿易の推進を積極的に肯定している。また、彼には保守的な信条がバックボーンとしてあり、そのせいで民主党員の掲げる価値観とは相容れない場合もあるが、それを理由に攻撃して、人格否定をするまではいかない。まとめると、ロムニー氏はアメリカがこれまで行ってきた政策の現状維持を好み、党派間の対立をさけたい穏健的な人物である。

しかし、トランプ氏の場合は前者が持つ考えと逆行している。アメリカが世界の警察としての役割を担うことに批判的で、若い時から自由貿易のせいでアメリカが不利益を被っていると一貫して主張してきた。それに加え、民主党を激しく敵対視しており、ロシア、ウクライナ疑惑で彼を追求する民主党に罵詈雑言を浴びせてきた。

以上の対比から分かるようにロムニー氏とトランプ氏は真逆の思想、人柄を持っているのである。それゆえ、2012年と2016年のテキサス州のパフォーマンスが全く違ったものになった。

このことから、テキサス州における共和党の後退は、ロムニー氏に投票したような穏健的な思想をもつ共和党支持者が物議を醸す人柄を持つトランプ氏から離反したことが理由だと言えるのかもしれない。

テキサス州の変化は何を意味するのか?

テキサス州で起こっている共和党の後退はアメリカ政治の分断を悪化させる危険性を秘めていると考える。そして、上記で述べた二つの要素が分断を深刻化させる根源であると考察する。

アメリカは現在、保守とリベラルの政治的分断が進行しており、共和党穏健派によるトランプからの離反はその分断の深刻さを物語っている。

また、テキサス在住の大卒者が民主党に傾倒しているという事実は、アメリカ国内において政治的な分断のみならず、階級的な分断も顕在化しつつあることを示している。民主党はニューディール政策を主導したルーズベルト政権以降、労働者の味方だという評判を勝ち取ってきた。

しかし、時が経つにつれて、労働者を代表するはずの民主党は、クリントンやオバマを代表する高学歴エリートが顔である党に変わりつつある。

それに対して、民主党から見放されたと感じた労働者層はトランプが率いる新たな共和党に活路を見出し、共和党は労働者を代表する党に変貌しつつある。共和党と民主党の間の対立は、思想間の対立だけではなく、階級間の対立でもあるのである。

テキサス州の選挙情勢はアメリカが政治的、階級的な分断という、二つの分断に直面していることを露わにした。そして、その情勢は2020年度の大統領選以降のアメリカ社会に新たな波乱が訪れつつあることを予告しているのかもしれない。

鎌田 慈央(かまた じお)国際教養大学 3年
徳島県出身。秋田県にある公立大学で、日米関係、安全保障を専門に学ぶ大学生。2020年5月までアメリカ、ヴァージニア州の大学に交換留学していたが、新型コロナウィルスの感染拡大により帰国。

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