人文・社会科学研究に政府が介入する!という東京新聞はもはや報道機関ではない

2020年11月11日 06:01

アゴラには東京新聞を批判する記事が繰り返し掲載されている。新田哲史編集長は、「ヤクザ記者退場:自壊し始めた東京新聞の“望月流”ガバナンス」、岡本裕明さんは「報道のクオリティ:東京新聞記者の「3無し」」と書いた。

東京新聞が厚労省に謝罪 記者が取材で暴力的行為(東京新聞 TOKYO Webより:編集部)

これらの記事には同感するところが多い。今さら東京新聞を批判しても意味がないと思っていたが、知人に「「人文・社会科学」研究にも政府が介入? 科学技術振興の改正法、来年4月に施行」という記事があるぞと教えられ、内容のひどさに呆れかえった。

記事の骨子は、科学技術基本法などの改正法が来年4月に施行され、法の適用対象が哲学や法学など「人文・社会科学」にまで広がる。法の運用によっては政府が研究面でも介入を強めるのではないかと、学者側は懸念を深めているというものだ。

東京・六本木の日本学術会議(編集部撮影)

しかし、人文・社会科学の追加は日本学術会議が求めてきたものだ。同会議が昨年10月31日に出した提言「第6期科学技術基本計画に向けての提言」を読めばすぐわかる。

日本学術会議は、繰り返し、科学技術基本法第1条の「人文科学のみに係るものを除く。」という規定を削除して、人文・社会科学を同法に基づく施策の対象とし、もって人文・社会科学を含む科学・技術の全体について長期的かつ総合的な政策を展開することの必要性を指摘してきた。

日本学術会議が日本の科学技術政策に「総合的な視点」を繰り返し求め、それを受けて改正されたわけだ。だから、国会審議も短く終わり、反対したのは日本共産党だけだった。当時、赤旗は記事中で次のように指摘した

改定案が、これまで振興対象から除いていた人文・社会科学を対象とすることにも懸念があります。人文・社会科学が「イノベーションの創出」の手段とされるなら、現在の人間と社会のあり方を相対化し、批判的に省察するという本来の役割が失われかねません。

人文・社会科学を対象とすることについて、日本科学者会議事務局長が「日本の科学や技術、学術を政府の思惑通りに動かそうという枠組みで、学術会議の問題と根は同じだ」と話したと東京新聞記事にある。日本科学者会議は学術会議の応援団だったはずなのだが。

日本科学者会議が1966年に創刊した雑誌『日本の科学者』は、創刊号に「科学技術基本法案と権力による学問統制の危険」と題する家永三郎氏の見解を掲載している。同じく創刊号に「各地ですすむ「北京科学シンポジウム」」という記事が出ている。どんな思想の科学者が集まって会議を組織したか、その様子がうかがえる。

東京新聞の記者は、日本科学者会議に吹き込まれてこの記事を書いたのかもしれない。そのうえ、デスクも記事内容を精査していない。

しかし、そんな記事に刺激されて「人文・社会科学研究に政府が介入する」という間違った情報がネットに流れるのは、困ったことだ。

東京新聞は、新田編集長や岡本さんも言う通り、もはや報道機関ではないのだ。

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山田 肇
ICPF理事長、東洋大学名誉教授

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