米社会を分断している「リベラル」「保守」ってどんな人?

2020年11月15日 06:01

敗北宣言こそ出していないものの、さすがのトランプ大統領も白旗を揚げつつある大統領選挙。すでに勝利宣言したバイデン氏は演説で「分断ではなく団結させる大統領になると誓う」と宣誓した。米国社会を分断しているとされている「赤い」保守派と、「青い」リベラル派。実際の彼らはどんな人たちなのだろうか?

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過激な言動を繰り返してきたトランプ大統領のせいで、共和党や保守派に対して、排他的で攻撃的な過激な人々というイメージを抱く人が多いかもしれない。青い州のカリフォルニアで留学生活を送り、つい半年前まで赤い州のテキサスに住んでいた筆者の印象は、実は正反対である。

確かに、トランプの支持層には、人種差別主義者や銃の所持を重んじる過激派などがいる。しかし、これらは「極右」と呼ばれる一部の極端な人々である。今回の大統領選でも、共和党支持者や保守派として、こうした人々の主張や映像を流すメディアもあったが、彼らは保守層の代表では決してない。

本来、アメリカの保守派というのは、穏やかで寛容的な人々なのだ。彼らの思想の根底には、キリスト教の教えがある。テキサスといっても、筆者が住んでいたのは大都市ダラス近郊の進歩的なエリアであったが、多くの人は毎週日曜日に欠かさず教会に通い、平日も聖書の勉強会などに勤しんでいた。困っている人、弱き人には救いの手を差し伸べるということが自然にできて、寄付やボランティア活動に熱心な人々である。

テキサス滞在の4年間はちょうどトランプ政権と重なっていたが、特にテキサスは景気が非常に良かったこともあってか、彼らからトランプ政権への批判やアメリカという国への不満はほとんど聞いたことはなかった。同様に、オバマ前大統領をはじめとする民主党政治家やその支持者に対する侮蔑的な言葉や批判も聞いたことがない。多くの保守層は、自分と支持政党や価値観が異なるというだけで、相手を拒絶したり口汚く罵ったりするような人々ではないのである。

対して、留学生活を送ったカリフォルニアで出会ったリベラルの方が、よっぽど過激だった。特に筆者の留学先は、全米で最もリベラルな都市と言われるバークレー市であり、大学院で2年間、共にジャーナリズムを学んだアメリカ人同級生たちは筋金入りのリベラルの集合体だった。ほぼ全員が、地元の名門カリフォルニア大か東部アイビーリーグの出身で、全米トップクラスの知的エリート達である。

その彼らの、当時のブッシュ大統領とその地元テキサスへの憎悪は凄まじく、「ブッシュ死ね」「テキサスはアメリカから独立してくれ」などという言葉が飛び交っていた。そして、自分の意に沿わないことや、気に食わない人物をすぐに「republican(共和党的)」と揶揄したり、攻撃したりするのだ。

彼らにとって、伝統的なもの、権威のあるものも、否定すべき悪しきrepublicanの象徴であるようだ。卒業時にも、ひと悶着あった。卒業式の定番の、あの黒いガウンとキャップをみんなでボイコットしようというのだ。「俺たちみたいなクールなリベラルが、あんな権威主義的な格好をするのはrepublicanでダサいからやめようぜ」というメールが回ってきて驚いた。

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結局、「最もdemocrat(民主党的)なやり方で決めよう」ということで投票した結果、僅差でガウンを着る派が上回り、卒業式の格好は自由意志になったが、リベラルは、なんというか、不寛容で押し付けがましいというのが筆者の印象である。

卒業後、彼らの多くは、カリフォルニアやニューヨーク、ワシントンDCを拠点に、リベラル系ジャーナリストとしてキャリアを築いている。濃密な時間を共に過ごした大切な仲間であるが、メディアで目にする彼らの署名記事やSNS上での発言には、今回の大統領選でも苦笑させられた。

「分断進むアメリカ社会」と紙面で嘆く一方、「6歳の子どもにトランプがいかに極悪非道かということと、この4年間の悪行のすべてを教えているうちに2人で泣いた」などとフェイスブックに投稿しているのである。分断を煽っているのはどちらなのかという素朴な疑問が湧いてくる。彼らには、古き良き、穏健な保守の姿は見えていないのか。

筆者がテキサスに引っ越すというと、「テキサスみたいな保守的で白人至上主義で共和党的な場所に、日本人のあなたが住むのは絶対に無理」と本気で心配された。引っ越してからは、「ヒューストンの暮らしはどう?」(筆者がいたのはダラス)、「アトランタはどんな感じ?」(もはやテキサスでもない)といった連絡が相次いだ。ハーバードやプリンストンという超名門大の学部を出ている彼らであるが、赤い州である中西部や南部は、行ったこともない恐ろしく共和党的な世界であり、どこも同じに思えるのだろう。

こんなふうに書いていると、反リベラルのように思われるかもしれないが、筆者は別にどちらでもない。ただ、2つの州に住んでみて、米国社会には深い溝があるのは間違いないと感じた。党派だけでなく、中絶やLGBT、環境問題への意見にも大きな違いが見られる。異なる思想や価値観を認めて受け入れる寛容性と他者への想像力を、リベラル、保守双方が持つようにならなければ、バイデン新大統領が誕生しても、その溝は決して埋まることはないだろう。

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恩田 和
ライター、元全国紙記者

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