アゴラ記事がきっかけ!やっと「事業者型ゴミ屋敷」に改善命令発出

芦田 祐介

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昨年11月、京都府久御山町に存在する「事業者型ゴミ屋敷」として広村商店(2019年6月頃に事実上廃業)による産業廃棄物放置問題を記事にした。(参考:行政が対応に苦慮する「事業者型ごみ屋敷」にご用心

その「事業者型ゴミ屋敷」に対して京都府は昨年12月24日付けで廃棄物撤去の改善命令を発出した。

実は改善命令発出を後押しした出来事があった。昨年12月4日に私のもとに「アゴラの記事を見た」とテレビ朝日『羽鳥慎一 モーニングショー』のスタッフから取材の申し込みがあり、12月15日に放送された。

「事業者型ゴミ屋敷」というのは私の造語であるが、その造語がそのまま使用された。同日、関西ローカルのMBS毎日放送からも『モーニングショー』を見たと電話取材を受けた(2021年1月11日『Newsミント』の憤懣本舗というコーナーで放送された)。

そして上述したとおり12月24日に京都府は広村商店に対して改善命令を発出した。廃棄物の保管基準に違反しているとして2021年2月4日までに堆積された産廃を撤去するように命じたのである。命令違反には「3年以下の懲役もしくは300万円以下の罰金」という罰則がある。

これまで京都府は反復継続して行政指導をおこなってきたが、これには強制力がなかった。一方で、この改善命令には違反すると罰則が用意されているため間接的な強制力を有することになる。

私は以前に京都府に改善命令が発出できないのかと尋ねたことがあるが「代表者は(産廃)撤去の意思を示しており、現時点で直ちに行政処分をおこなう状況ではないと考えている」(2020年6月16日のメール)と回答していた。

久御山町議会の9月定例会でも私の質問に「京都府から全量撤去の改善命令を出すことは難しいと認識をしている」(環境保全課長答弁)とし、久御山町は京都府と連携して粘り強く改善の指導をおこなうの一点張りであった。

それが、アゴラの記事をきっかけに、ニュース番組でも取り上げられたことで、あわてて改善命令が発出された。メディアの影響力には驚く限りであるが、事実上の廃業から1年半が経過してからの改善命令である。遅きに失した感は否めない。

MBS毎日放送の報道では、業者は「1月中に撤去したい」と答えていた。業者が言うように撤去する意思があったとしても、事実上廃業してことから、撤去する能力があるのかもわからない。

命令違反に対しては罰則があるとはいえ、実際に罰則を適用するには

1.  京都府が廃掃法違反で警察に告発

2. 捜査

3. 逮捕または書類送検

4. 起訴

5. 有罪判決

という流れになる。仮に業者が一審で有罪判決を受けたとしても当然、上訴する権利があるため法律審となる最高裁まで争うことも可能である。罰則適用までには相当な時間が必要となる。

業者に有罪判決が下り、刑が確定したとしても事業地に放置された産廃が無くなるわけではない。そうなると行政代執行についても検討しなければならなくなる。京都府は現時点において「『今すぐ撤去しないと危険』とまで言えず、行政代執行は税金を投入する必要があるため非常に難しい」(2020年12月15日放送『モーニングショー』)としている。

久御山町議会の一般質問でも同様に「久御山町が行政代執行等の手続を行うことはできない」(町長答弁)、「京都府が行政代執行を前提として動いているという事実はない」(環境保全課長答弁)とのことだった。業者が事実上廃業していることから回収可能性が低く、税金を投入するのに住民理解を得るのは難しいということであろう。

私は改善命令が発出されてから産廃が放置されている広村商店事業地の監視を強化している。何か動きがあれば京都府に情報提供しようと考えているが、1月13日現在、未だに何の動きもない。1日もはやく産廃が撤去されるように引き続き、この問題に取り組んでいく。