老後のお一人様生活は本当に可能?

日本人の夫婦生活は内情、破綻しているのではないか、という前提で書かれた本が「居場所のない男、時間がない女」(水無田気流著)です。「生涯を共にしているけれど生活を共にしていない」とあります。この一言でうなずいているのは多分女性陣ではないかと勝手に憶測しています。

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男を生理学的にみて不完全という前提までさかのぼって考えてみると実に面白い話であります。そもそも男児の死亡率が高い、幼児の時、女児の方が先に成長したり物分かりが早いなど基本的に女性の方が子供の時から有利であります。小学生ぐらいになるとお母さんの手伝いを積極的にするのも女子、一定年齢になっても母親と一緒に買い物するのも女子。大人になって母親の面倒見るのも女子が多いでしょうか?

では男は、と言えば基本的にやんちゃで「やらかしてしまう」子は多いもの。それら数々の間違い遍歴を重ねながら大人になれば「おやじ、俺、東京で一人暮らしするから」と出ていき、その後も実家のことなどお構いなし。ところが忘れたころに電話が掛かってきたと思ったら金を無心にし、「あんた、オレオレ詐欺じゃないだろうね?」と本当の息子かどうかわからなくなる親もいるかもしれません。

男は基本的に勝手であり、本来持つ「狩猟的本能」からか家にじっとしていることはできません。結婚しても家に帰ってこないのは「男は外でいろいろあるんだ」というわけのわからない理由をつけているのがおち。それに慣れた奥さんは言い古された「亭主留守で元気がいい」が今でも本質的には気持ちの中にあるのでしょう。

アメリカ人の旦那はすぐに帰ってくるのに、という反論があるとすればアメリカ人男性の働き方は凝縮型で夕方5時までに狩猟を終えているのだけど、日本人男子は成果が上がっていないのでネオン街に夜釣りに出かけたとしたらどうでしょうか?

上記の書籍にある「生涯を共にするが生活は別」というのは言い当てて妙であります。数年前に竹中直人が主演する「野武士のグルメ」という番組がありました。60歳で定年になった竹中が家にいられず昼食でうまいものを食い歩くという番組でした。男にとって昼は外、家とは寝るところなのですが、コロナ禍の今は自分の城に閉じこもり一人時間を楽しむということでしょうか?

一方、女性には時間がないというのもこれまたその通りで子供の弁当から朝食の準備、洗濯やら家事やらをやってパートタイムのバイトもある、夕方には食事の準備もして子供の宿題を手伝うこともあるとなれば一体いつ自分の時間があるのか、ともいわれます。女性は慢性睡眠不足であり、かつての三食昼寝付きというのは時代にマッチしない古い話となり、今の奥様方はかなりアクティブ。もちろん、経済的理由からデパート上層階のレストランに毎度毎度とはいかないまでも井戸端会議やお茶を通して情報収集を兼ねたストレス発散をするのであります。

一般的には男性の方が先に亡くなるケースが多いのですが、そのあと、女性は息を吹き返したように急に元気になる方もずいぶん多いものです。「男やもめにウジがわき、女やもめに花が咲く」ということわざがあるのですが(誰ですか、爆笑しているのは!)これが全てを物語っていると思います。

女性にとって結婚とは何だったのか、それまでの数十年間の結婚生活を通じて亭主に求めたものは何だったのでしょうか?お金といざという時の営繕係兼警備員ですかね?

一方、奥様が先に亡くなることも当然あるわけですが、その場合の残された男性は悲惨になることもあります。特に夫婦仲がよかった場合、男性がメンタルにも生活全般にも自立していなかった公算が高く、ガタガタになって急に後を追うように亡くなる方もいらっしゃいます。「女は男の胃袋をつかめ」といいますが、つかまれた手を離されたときのことも考えてあげましょう。

老後のおひとり様生活、女性はできます。男性は不健康になりがちで歳を取れば頑固で言うことを聞かず、幼稚化するのもこれまた男子の常。コンビニ弁当がライフラインとなる老後はどうなのでしょうか?日経には「脱『おひとり様』動く50代 婚活や同性の同居人探し コロナ禍で募る老後不安」という記事があります。婚活、合コン、シェアハウス…らしいのですが、私は多分、合コンぐらいまでじゃないかという気がいたしますが。さてさて。

では今日はこのぐらいで。


編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2021年1月17日の記事より転載させていただきました。