リーガル・リスクに高をくくってきた貸金業界--池尾和人

2009年04月11日 19:21

まあ、世の中には商魂たくましい人達がいるものです。ライオンのような捕食者(Predator)から上前をはねようというのだから、ハイエナのような存在だということになります。電車の車内やインターネットに広告を出して多重債務問題の解決をするといっている弁護士や司法書士は、多重債務者の支援など本気では考えておらず、商売にしようと思っているだけです。


そうした輩がけしからんというのには同感ですが、だから過払い金請求権を認めるのが「徳政令」だというのは論理的に飛躍があります。過払い金請求権は、不当利得の返還請求権です。「徳政令」は、正当な債権・債務関係を消滅させるというものですから、意味が違います。財産権の保護は、市場経済のための最も大切な基本ルールですが、不当に得た利得であっても返還しなくてよいという方が、よほど財産権の保護を否定することにつながります。

「日本のサラ金規制は、きわめてアドホックで不透明なかたちで行なわれてき」たのは事実で、それは、この業界の政治的影響力が強く、貸金業規制法は議員立法のかたちで改正されてきたためというところが大きいと考えられます。その結果、貸金業界は、実はきわめて大きなリーガル・リスクにさらされていたわけです(グレーゾーンで商売していることがリスクでないとシティは考えていたのでしょうか)。

にもかかわず、この業界はこのリーガル・リスクに対して高をくくってきたわけです。自らの政治力に過信があったのかもしれません。しかし、あまりにいろいろとやりすぎた結果、2006年のはじめにそのリーガル・リスクが、貸金業界の側からみるとネガティブなかたちで決着することになります。

こうした経緯を受けて貸金業制度の見直しが進められ、今回は政府提出の法律として貸金業法が成立したわけです(保険業法などと同格の業法になった)。これによって、(略奪的貸付はやりにくくなったかもしれないが)格段に貸金業界を取り巻くリーガル・リスクは小さくなりました。この意味で、市場機構が適正に機能する方向に制度改正が進められてきていると判断しています。

なお、過払い金請求は、基本的に過去(サンク・コスト)の領域に関わることですから、新古典派的にいうと新規事業の意思決定には無関係なはずです(正確には、破綻に伴う倒産コストが存在するから、資源配分に多少は影響する)。少なくとも、池田さんの「今回の貸金業法改正によって、こうした『錬金術』に群がる弁護士はますます増えるでしょう。」という記述が妥当するとは考えられません。これからは、過払いなどという現象は制度的にあり得ないのですから。

[付記]最後の部分を後から加筆しました。

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