定額給付金とNPO - 松本徹三

2009年04月30日 23:03

国民の多数が反対だった定額給付金でしたが、とにかく国会で可決されてその実施が始まっています。誰でも思わぬ現金が手に入るとなれば嬉しいですから、それなりに色々盛り上がることはあるでしょう。現実に、地方公務員の夫の薄給を嘆きながら、二歳と五歳の子供達を育てている専業主婦の私の娘などにとっては、この給付金はまさに干天の慈雨のようなもので、かなり興奮しています。


「現実に給付金を手にすれば誰でも嬉しい筈。間違いなく選挙の追い風になる」と率直に嘯いている自民党の大幹部を私はTVで視ましたが、このことは、このプロ ジェクトのもともとの狙いをいみじくも浮き彫りにした観があります。しかし、それでは、あの時の「困っていない人にも渡すのか?」「いや、自分は辞退す る」といった議論は、一体どこへいってしまったのでしょうか? 

そもそも、定額給付金に反対した人達の論拠は、「こんなやり方では、消費の拡大効果は如何なる場合でも給付金の総額以上にはなりえない。同じ金を使うのな ら、経済効果が拠出金額の数倍にも及んでいくような方策を考えるべきだ」ということだったと思いますが、一方では、「今回のあまりに急激な経済の縮小のた めに途方に暮れている人達を、『災害にあった人達』と同じように考えて、少しでも救済の手を差し伸べるべきだ。従って、給付金の供与も、本当に困っている 人達に対象を絞るべきだ」というような意見も、一部にはあったように思います。

さて、ここで、一つの提案があります。「経済的に比較的恵まれている自分は、そんなものを貰うわけにはいかない」と思った人、或いは、「経済復興策はさて おき、当面窮地に陥っている人達を救うための『緊急措置』を政府は直ちに取るべきだ」と思った人は、「今からでも遅くないので、手を上げてみてください」 と、私は先ず問いたいのです。

もし「そんな奴がいる訳はない」と思う人が多かったら、この話はおしまいです。つまり、「そういうのは綺麗事の話で、現実論ではなかった」と結論付ければ よいだけのことです。しかし、「いや、そういう人も結構いるはずだ」と思う人が多かったら、どこかのNPO団体で手を上げて、「定額給付金を辞退したい人 から、その分をそっくり寄付で受け取り、これを『真の弱者救済』の観点から、多くの国民が納得できる形で再配分する」というプロジェクトを立ち上げてみた ら如何でしょうか?

誤解がないように申し上げておくと、私は、このようなことを、はじめから「非現実的」と決め付けて馬鹿にし、「やれるならやってみたら?」と冷ややかな挑 発をしているのでは決してありません。国民の意識を測る一種のリトマス試験紙として、こういう試みにはとても興味があるのです。自分で率先して何かをやる ほどのエネルギーはとても持ち合わせていないのですが、もし誰かが本当にこのようなプロジェクトを立ち上げてくれるのなら、私だって清き一票を投ずること に吝かではありません。

「そんなことをしなくても、単純に書類を提出しなければ『辞退した』と見做されるのだから、それで『定額給付金に反対した人間』としての筋を通し、『国の 財政にも貢献した』という自己満足に浸ればいいじゃあないか」と言う人がいるかもしれませんが、どうも人間というものは、そういう気にはなかなかなれない もののようです。これは、「自分が決心したことに対しては、思いきった金額を寄付するつもりはあるが、日頃はせっせと節税に励んでいる」多くの事業家にも 共通した心情でしょう。

残念ながら、日本の税制は米国などと異なり、このような事業家の「心意気」に対応するようには出来ていないのですが、「税金を払うことが、すなわち国への 貢献」と素直に割り切れている人は少ないのも事実でしょう。「定額給付金の辞退」はそのままでは寄付にはならず、従って税金の控除も受けられませんが、給 付金はそのまま有難く頂き、別途これと同額の金額を何らかの形で寄付すれば、節税になるわけです。NPO団体などが何かよいプランを考えつけば、「定額給 付金に反対した人」の精神衛生にも、少しは貢献出来るのではないかと考えている次第です。

松本徹三

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