経済は複雑系(補足)--池尾和人

2009年05月29日 18:11

先の記事への安冨渉さんのコメントにコメント欄で返答しようと思ったのだけれども、字数制限とかあってうまくいかなかったので、補足の記事にします。

「経済は複雑系」だとすると、「応用ミクロ」というような手法は成立しないはずだというロジックが、分かるようで全く分かりません。そもそも、この「成立」するとかしないとかというのが、どういう意味かよく分かりません。


そういう手法で論文を書いている人が山ほどいるのだから、事実の問題として成立していないわけがない。論理的に内的矛盾を来しているとか(来すはずだ)とかいうことかもしれません。しかし、もしそういう思弁的なことなら、私は無関心ですから、別世界に住んでいると思って下さい。

それで、複雑系をあまねく説明するような「壮大な理論(いわゆる Grand Theory )」があり得ないというのは確かだけれども、部分的理解としての「小さな説明」を着実に積み重ねていくという piecemeal engineering 的な手法は「成立」するでしょう。応用ミクロ経済学というのは、「小さな説明」の積み重ねで、Grand Theory 的な傾向のある一般均衡論とは趣がずいぶん違います。

もちろん、そうした piecemeal engineering を繰り返していって「真理」に漸進的に近づけるというような保証はありません。これは、自生的秩序の結果として社会主義が生まれたというような話がありえる以上、しょうがない。人間とか社会を理解しきれるとか元から思っていない(理解するのに限界があって当たり前と考えている)から、いまの経済学で私は実はかなり満足しています。

なお、別コメントの「銀行は5年後、10年後にどうなる」ということには、正直に言って本質的に関心がなくなりました。個別の経営次第ですとしかいいようがない。普通の企業ならそうで、業態で運命が決まるわけではない。いい経営者に恵まれれば幸せだし、そうでなければ不幸だというだけですね。

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