世界ICTカンファレンス2009 ―中川信博―

2009年09月01日 12:30

―世界ICTカンファレンス2009―

8月28日、第3回「世界ICTカンファレンス2009―生産性向上による経営力強化―」を聴講致しました。本会は日本経済新聞社が主催して、総務省が後援しているカンファレンスで、第1回「企業力を高める先端ICTの活用」、第2回「豊かさを支える社会インフラ」に続き、3回目のセッションでありました。私は第1回、第2回を都合で聴講できませんでしたが、3回目のセッションを聴講しまして、このままでは日本のICTビジネスは「ガラパゴス化」するという―している?―危機感を強く感じました。第1回、第2回は概要が公開されていますのでどうぞ目を通してください。


―ICTの活用―

政府は2005年位まで情報通信技術のことを「IT」と表記しておりました―以前確か時の総理大臣が国会の答弁でIT(アイ・ティー)のことを(イット)を発音していたは記憶に新しいですが―。欧米ではICT(Information and Communication Technology)とされていましたので、それ以降は国際標準化したということなのでしょうか。

さてこの3回のカンファレンスを通して議論されてきたことは企業のICT利用の戦略と、政府の支援ということなのでしょうがいかがでしょうか?

―経営者は意思決定に充分な情報が得られているのでしょうか?―

私が聴講しました第3回のセッションですが、最初に法政大学大学院政策創造研究科諏訪教授の「ICT時代の人材像 ~知識か技能か人柄か?~」と題された基調講演がありました。教授の講演の中に「米国の大学教育では何を教えているのか?」という報告があり、「それはCOLLGEというスペルであらわせられます」ということでありした。それはCommunication skills,Organizational skills,Leadership,Logic,Group skills,Enterpreneuship、それぞれコミュニケーション能力、組織能力、リーダーシップ、論理力、努力、集団作業能力、起業家精神ということを意味しております。

次にデル社、ユニアデックス社のソリューション報告のあと、早稲田大学大学院国際情報通信研究科 小尾教授の「生産性と競争力を高めるICTソリューション」と題したクロージング講演があり、その中で企業はCIOを設置して、そのCIOはITビジネス戦略をより広範囲に統括し、IT投資の最適化を実現させて、技術ソリューションを社会ソリューションへ進化させるにあたり、人財活用やITコンサルやアウトソーシングの活用が有効であると提言しておりました。ここでいう人財とは先出の能力―competence―を習得した人ということになると思います。

そして問いかけです、本当に今のままで、経営の意思決定にICTが活用できるのでしょうか?

―企業の情報システム部は「情報」を扱う部署なのでしょうか―

我国では通常コンピュータシステムを扱う部署を情報システム部と称する企業が多くあります。これはコンピュータシステムが企業の基幹システムとしておもに財務分析、経理処理、給与計算といった計算システム―まさしくコンピュータシステム―として導入され、その業務を人からシステムに分離移行した結果、機械システム化された部署を「コンピュータシステム部」と呼称したのですが、その後コンピュータ処理技術を情報処理技術と呼称するようになり、コンピュータシステム部は情報システム部と呼称されるに至ったと思われます。―確証ではありませんが、経験でそう考えられます―

―用法の混乱が戦略の混乱につながっていないでしょうか―

出席しました第3回ICTカンファレンスの4つのセッションのうち紹介しました2つ以外の、デル・コンピュータ社とユニアデックス社のプレゼンテーションは研究報告というよりは事例紹介によるソリューション提案に近かったのですが、いずれも「コスト削減」の視点からのものでした。私たちもビジネス提案で訴求することの多くは「コスト削減効果」です。コスト削減は経営者にとっては最重要課題なことは間違いないでしょうが、情報通信技術でコスト削減というと若干おかしな感じが致しませんでしょうか?

ようするに情報システムとコンピュータシステム―計算システム―を同義に扱っている以上、コンピュータシステムが行なっている、経理処理や給与計算といった業務は企業にとってコストセンターでしかなく、したがってそれを削減しなければならないという発想なってしまうは当然でしょう。そしてそのコンピュータシステムのコストを抑えるのもICT―人件費を抑えるという意味で―というような発想に陥っているのではないでしょうか。

―Informationからintelligenceへ―

以前のインテリジェンスの項で論じさせて頂いたように、インフォメーションは判断加工分析するために必要な素材でありますが、現在企業は―政府までも―コンピュータ(計算)=情報だと間違った概念で論じてはいないでしょうか。本来の意味でのICTはコスト削減するための道具ではないと思います。そして情報はインフォメーションのことではなくインテリジェンスをさすべきであり、情報システム部とはインテリジェンスを配布する情報サイドであるべきではないでしょうか。

それはICTを単なる情報の伝達技術程度で活用するのであれば、なにも巨額な予算をかけ、国家戦略として推進する必要はないとまったくないと思います―今、巨額な予算を使ってi-japan2015を推進しているようですが、その前提となる政策がないのでは単なる内需拡大のバラマキになってしまうのではないでしょうか―。つまり何かのコスト―ほとんどの場合人件費―を削る為に情報通信技術を推進する発想では、いつまでたっても企業競争―国家間競争も同様―に勝利することは難しいと思います。

まず企業―政府も―は「情報システム」を定義し直す必要があると思います。情報システム=計算システムではなく、情報システム=インテリジェンスシステムとして、その活用方法は企業戦略を企画立案するための技術としなければならないと思います。そうすれば「ICTでコスト削減」などという貧困な発想ではなく、自社への脅威の対策や新たなるビジネスの発見―イノベーションと―など、それこそ前向きな「成長戦略」としての活用が出来るのではないかと思います。

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