総選挙に関する雑感 - 矢澤豊

2009年09月01日 22:56

ちょうど選挙戦プロパーの折り返し地点であった投票日の1週間前の週末に、友人の結婚式に出席するため一時帰国していました。そこで久しぶりに総選挙期間中の日本を体験したのですが、あまりの静けさにビックリしてしまったというのが正直な感想です。

私が「静か」だと感じたのは、やはり日本の選挙における不可解なインターネット規制が大きな要因でしょう。


多分インターネット選挙元年となった昨年のアメリカ大統領選挙では、1年間超にわたって選挙権のない私までYouTube、Facebook、Twitter、そしてメディア各社それぞれのサイトといったところから吹き出すオバマ旋風にさらされていました。

それに比べますと、今回の私の日本滞在中は、街角の選挙ポスター掲示板がなければ選挙があることさえ忘れてしまうほどでした。実家の両親はテレビを見ませんし、たまにテレビをつけて党首討論に耳を傾けてみても、一向に政策の争点に焦点がしぼられず、とりとめがなく全然しまらない。私にはどうも「選挙直前」という緊張感がさほど感じられませんでした。テレビに出演されている党首のみなさんは「晴れ舞台」と思われていたのかもしれませんが、政治家の仕事は政策を討論する事ですから、別に特別なことをしているわけではありません。日本の政治家は選挙が無い間は対立政党のセンセー同士で政権政党たることを目指したガチンコ政策討論することを避けて通ることになれてしまっているので、感覚がズレているのでしょう。

もっとも討論というのは、反対意見を際立たせる事が前提ですが、自民党、民主党、その他全ての政党が、大なり小なり小泉・竹中批判で一致していたのはどうしてなのでしょうか。異口同音に「行き過ぎた規制改革を巻き戻す」と叫ぶ様は、「なんかヘン」というのを通り越していささか不気味でした。海外に住み、海外メディアの論調を吸収し、日本国内メディアから遠ざかりながらも池田さんのブログだけはしっかり読んでいた私には、現在の日本経済の低迷は行き過ぎた小泉改革の結果ではなく、小泉政権で端緒がつけられた改革路線を、続く安倍/福田/麻生がしっかり継承しなかったからというのが世論の主流だと当然のように思っていたもので。いったいどこでどのように、日本国内における言論統制(?)がこの政界あげての小泉/竹中批判翼賛状態を生み出したのか、皆目見当がつきませんでした。どなたか事情に詳しい方、ここらへんのからくりの種明かしをご教示いただけませんでしょうか。

惨敗した自民党も当面はこの「反小泉/竹中」路線でいくのでしょうが、貧すれば鈍するとはまさにこのことでしょう。「反小泉/竹中」の踏み絵を強要した支持基盤を民主党から奪回するべく、政権運営にあたって中道路線に修正せざるを得ない民主党のはるか左の位置を目指しても、そこに活路はありません。日本の将来を質に入れたバラマキ競争で勝負を挑んでも、バラマキの恩恵にあずかる既得権益勢力にしてみれば、「バラマキしてくれる政権与党」と「バラマキを約束してくれるだけの野党」の間では相撲になりません。次の総裁が誰であろうとも、この「結党以来の危機」をチャンスと捉え、従来の支持基盤と決別し、保守本流の思想に則った「小さな政府」と「堅実な財政(Fiscal Conservatism)」、そして明確な「成長戦略」を掲げた政党として再生を目指すのが正解だと思います。この路線で行けば「自民党=若者の政党」という従来では考えられない構図も浮かんできますが、現実的にはあともう一回選挙(参院選?)で負けて「このままじゃダメなんだ」と学習するまでは、組織としての考えと実行が及ばないでしょう。

なにはともあれ今回の選挙に関連して一番暗澹とした気持ちにされたのは一連の「鳩山ニューヨークタイムズ寄稿事件」です。そのお粗末な内容もさることながら、批判を受けたとたんに「ゆがめられた」などと言い訳するあたり、自らの信念を言葉にするという政治家としてのプロ意識に著しく欠如しているといわざるを得ません。いままでの永田町記者団とのいいかげんなズブズブ関係と同様の対応の仕方では、首相として国際メディアと対峙できないということをすみやかに学習してください。

鳩山さんの「いいかげん」と、以下に転載しましたアメリカでOutstanding Interviewとしてエミー賞候補となったお隣の国の総理のインタビュー(2008年9月)を比べた時、私は一日本人として一掬の涙を禁じ得ません。(いささか時代がかった表現ですが、その通りなのでご容赦願います。)

こんな英語のインタビュー、「関係ねぇ!」と思っておられる方には、バーナード・ショーの以下の言葉をどうぞ。

Democracy is a device that ensures we shall be governed no better than we deserve.

中国は民主主義国家じゃなくて良かったね、というのが今回の皮肉なオチのようです。

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