業界べったりの通信・放送行政 - 池田信夫

2009年09月20日 01:22

通信行政については松本さんから強烈な指摘があったので、私は放送行政についてコメントしておきます。原口総務相の会見をもっとも詳細に報じている日経ITproの記事を読んでも、意味不明な部分が多い。もちろん抄録なので、もとの発言は理路整然としていたということもありえますが、彼の電波利用料をめぐる発言などからみても、それは考えにくい。率直にいって、原口氏の姿勢は放送業界べったりといわざるをえません。


たとえば原口氏は、情報通信法についてこう答えています。

通信で大事なのは秘密性,放送で重要なのは公正性と,それぞれベクトルが異なる。この二つを融合したときにどのような権利がさらに強く保障されなければならないかについての議論は必ずしも十分ではないと思っている。大事な権利はないがしろにしないようにしたい。

これは民放連が情報通信法に反対するときのロジックと同じです。放送は「文化」であり、通信のような金もうけとは違うのだから特別扱いするのは当たり前だ、という特権意識丸出しで、「表現の自由」や「公共性」を振り回して規制改革を妨害するのが、これまでの彼らの常套手段です。

情報通信法をめぐるこれまでの議論でも明らかなように、表現の自由がどうとかいうのはコンテンツ層の一部の問題にすぎず、通信・放送業界全体をレイヤー別に規制しようという情報通信法の根幹とは無関係です。ところは放送業界は表現の自由を強調して「放送は通信と違うからレイヤー分離はいやだ」と言い張る。原口氏は、明らかにこの土俵の上で放送を特別扱いする姿勢を見せています。

原口氏は民主党の「論客」として知られ、テレビ番組にもよく出演する人気者です。それだけに、テレビを敵に回せないのは無理もない。おかしいのは、こういうテレビ業界に「借り」のある人物を総務相に任命した鳩山首相です。総務副大臣になった内藤正光氏に至っては、NTT労組出身です。自民党でも政調会の各部会は業界べったりでしたが、閣僚には利害関係者を任命しないという節度がありました。ところが今度の総務省の大臣・副大臣はそれぞれ民放とNTTの利益代表で、異常な人事といわざるをえない。

原口氏が周波数オークションに反対する理由も、「地上デジタル放送の完全デジタル化を前にした現在の放送事業者の体力を見ると,オークションを前のめりでやる環境にあるのかなという思いがある」という意味不明のものです。今後オークションの対象になりそうなのは、700MHz帯、1.7GHz帯、2.0GHz帯、2.5GHz帯ですが、いずれも通信用の帯域で、放送とも地デジとも無関係です。というより、IP時代には通信とか放送とかいう区別に意味がないのです。

放送行政は田中角栄以来、自民党の食い物にされて政・官・民のズブズブの関係が続き、きわめて非効率で不公正な電波の割り当てが続けられています。これを是正するのが周波数オークションで、民主党も政策に掲げています。にもかかわらず、原口氏も内藤氏もオークションには消極的で、その代わり日本版FCCなどという組織いじりだけは妙に熱心です。

世界から大きく立ち後れた日本の通信放送産業が立ち直るためには、自民党時代のような官民癒着を排して競争を導入することが不可欠ですが、今度の総務省の正副大臣は、自民党以上の業界べったりコンビという印象が強い。これが偏見だとすれば、彼らが今後、政策を通じてそういう偏見を払拭してほしいものです。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 青山学院大学非常勤講師 学術博士(慶應義塾大学)

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