利用率低い電子申請を構築した責任 - 原淳二郎(ジャーナリスト)

2009年11月10日 10:00

朝日新聞が政府の電子申請システムの利用率がきわめて低いことを8日付け朝刊トップで報じた。IT関係者ならみな知っている事実である。同新聞は電子申請システム64について利用状況と運営経費をすべて調べあげた。かねて政府内でも利用率の低迷が問題になっていた。私も1年前使えない電子申告という解説を書いた。
http://www.ntt.co.jp/365/book_data/book_vol21/05-it-view/index.html

 これをどう解決するのか。新政権の事業仕分けで整理すればすむ問題なのか。もう一度点検してみる必要がある。


電子申告の多くは法人が利用する許認可、登録、届出など各種申請システムである。一般市民が使う電子申告は税金関係と市町村の証明書類である。市民に馴染み深いのは確定申告のシステムe-taxである。私もスタート当初から利用している。毎年のように使いにくいと当局に苦情をいってきた。そのせいか毎年使い勝手は向上している。それでもまだ使いにくい。記事にはe-taxの利用度が高いのか低いのか触れられていないが、利用する側に立って設計されていないと感じる点は多々ある。

9日発表された行政刷新会議の事業仕分けの一覧に財務省の電子申請が含まれている。これがe-taxをさしているのかどうか、確認できていないが、事業仕分けで整理されたらどうなるのか。昔のように混雑した税務署に出向き、税務署員の嫌みを聞かされながら頭を下げて申告する、なんてことになったら、と想像するだけでぞっとする。

e-taxが良いといっているわけではない。改善は進んでいるのに、改善する速度が遅いのである。法人が利用する電子申告の実態は知らないが、改善が進まない背景に、お上に苦情をいいにくい事情、あるいは役人の顔色を見ながら申請するフェースツーフェースの関係を重視する慣行があるからではないか、と想像している。だとするとシステム以前の問題である。苦情をいってにらまれては損をする、と申告する側は考えているかもしれない。私だって目の前に税務署員がいたら、苦情をいうのを憚るかもしれない。

ITを利用した電子申請はじめ電子政府を推進するIT戦略本部ができて間もなく10年。巨額のIT投資を続けながら一向に利用しやすいシステムが構築されないことから、政府は霞ヶ関クラウドなるものを再構築しようとしている。クラウドならこれまでの10分の1以下の投資で各種システムが構築できるといわれる。そうなるとこれまでの投資はほぼ全部が無駄になる。ダム建設中止と同じで
ある。ITゼネコンという言葉があるくらいである。いったん大型案件を受注したら後年度にいくらでも利益が上げられるともいわれる。巨額の無駄がないとはいえない。IT関係者の中にはきちんと仕分けができるのかと不安視する声が多い。

これまでの投資をサンクコストとして見切るのもいいが、なぜこのようなバカなシステムを構築してきたのか、その責任と背景を見極めないとまた同じことが繰り返される。IT戦略本部発足後、各省庁には情報システムの最高執行責任者CIOが置かれていたはずだ。彼らはいったい何をしていたのか。難しい情報システムの仕分けも大変だが、CIOの責任も追及してもらいたい。

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