学歴インフレへの処方箋 井上晃宏

2009年11月20日 21:54

「学歴社会 新しい文明病」(R.P.ドーア)

 いささか古い本だが、著者はまだ健在だ。
 ドーアは「学歴インフレ」という病が世界中で蔓延していると書く。
 最初は初等学校卒だけで十分に威信の高い職業に就けたのに、教育が整備されるにしたがって、初等学校卒だけでは差別化できなくなる。このため、社会上層部への移動を目指す人々は、中等学校に進学するようになる。同じことが、高等学校、大学でも繰り返される。
 学校定員を増やさないことは政治的に困難であるが、財政的な制約がある。また、野放図に高等教育を整備すれば、教育の効率低下を招く。農夫に細菌学はいらない。何らかの方法で、「高等教育が必要な人」を選抜しなくてはならない。
 学力試験、知能テスト、くじ引きなど、さまざまな方法を比較検討した上で、ドーアは、どれも一長一短があるという。
 ドーアの提案する選抜方法は、「職場における選抜」だ。義務教育終了時点で、全員をいったん就職させ、勤務成績の良好な者を、その仕事に直結する高等教育機関に送り込むべきだという。これなら、教育目的が明確になるし、卒業後の就職問題が発生しない。
 「職場における勤務成績」とは何を意味するのか、どうやって就職場所を割り振るのかという問題はあるが、Ph.Dが就職できなくて、教育費用が無駄になる、いわゆる「高学歴ワーキングプア」が発生している昨今では、検討する価値があると思う。

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