続「キリスト教文明は行き詰まっている」発言を考える ー中川信博ー

2009年11月28日 08:30

民主党の小沢幹事長のキリスト教を「排他的」と発言した件で日本キリスト連合会(カトリック中央協議会、日本聖公会、プロテスタント諸教団(教会)など約60の団体が加盟している団体)が抗議をしています。また日本同盟基督教団「教会と国家」委員会はその後、さらにキリスト新聞に抗議文を掲載しています。小沢幹事長の軽率な発言は如何なものかと思いますが、現在の日本のキリスト教諸団体は若干行き過ぎてはいないだろうかと考えるのが本稿です。


-キリスト教史の暗部-
異端審問のよる虐殺や魔女狩り、十字軍による異教徒虐殺と略奪、また南米での文明破壊などはキリスト教、特にカトリックにとってはふれたくない歴史でしょう。日本には1549年にフランシスコ・ザビエルによって伝来しますが、秀吉のバテレン追放令-戦国大名はイエスズ会と火薬一樽を50人の女性と交換して、最盛期にはアジアに50万人の奴隷が溢れかえったとされています-、をさかいに徳川時代を通じて禁教となり迫害の対象となります。

バテレンによる神社仏閣の焼き討ちや仏教徒や神道徒虐殺、その後のキリスト教徒迫害の歴史は関わった先祖を持つ日本人にとってはふれたくない歴史でしょう。明治開国とともに再びカトリック、プロテスタント、正教がそれぞれ来日、その後の日本の国際化に大きく貢献します。しかし先の大戦では再び苦難の道をたどることになります。

-昨今政治問題に関与を強める日本のキリスト教諸団体-
日本キリスト連合会は日本におけるキリスト教の諸団体を網羅していますが、そのなかでもカトリック系のカトリック中央協議会やプロテスタント系の日本キリスト教協議会日本同盟基督教団など教区や教会を束ねる組織が数多くあります。

あまり知られていませんが、これらの協会が政治的メッセージをかなり発表していることです。一部を紹介しますと、カトリック中央協議会では麻生太郎首相の伊勢神宮参拝に抗議しますわたしたちは基本的人権である信教の自由を保障する、政教分離の原則を堅持していくことを強く訴えます首相の靖国神社参拝に抗議する声明などで、日本キリスト教協議会では『天皇在位20年記念式典挙行』の中止、並びに『天皇陛下御在位20年を記念する日を休日とする法律』案の廃案を求める陳情書『外国人住民基本法』制定運動を継続する決議首相の靖国神社・伊勢神宮参拝抗議声明などです。

また外キ協(外登法問題と取り組む全国キリスト教連絡協議会)という団体がありますが、入管法の改定案に反対するキリスト教会共同声明には上記カトリック中央協議会議長、日本キリスト教協議会議長が名前を連ね入管法の改正に抗議し、外国人住民基本法の制定を訴えています。共通することは伊勢神宮や靖国神社への参拝を政教分離から抗議していることと、外国人住民基本法制定をもとめていることでしょう。

-ローマ法王のミサ-
大梵鐘(国指定重要美術品)で有名な青物横丁駅近くにある品川寺(ほんせんじ)に先の大戦で戦犯(昭和殉難者)となった英霊1,068柱が安置されていることはあまり知られていませんが、その品川寺の仲田順和法主が昭和55年に当時のヨハネ・パウロ二世から親書を賜り、五重塔をつくり魂を安置して持参し法王にバチカンで謁見しました。そして法王がその殉難者のためにミサをしたことはなおさら知られていないでしょう。

イタリアの新聞に掲載された記事の日本語訳を一部引用します、

東京品川寺座主である仲田順和師に案内され、日本から訪れた真言宗の仏教徒たちが昨日の一般拝謁に参加していた。先の大戦で亡くなられた戦歿者のための、唱導師として日本でも有名な仲田師は「聖年」の間にパウロ六世に謁見している。世界的な戦いを通じて戦死した日本の13万人の学生たちの霊のために、特別の恵みを依頼し、また法皇に「まことの鐘」を差し出していた。今年、終戦35周年に際し、パウロ六世の継承者であるヨハネ・パウロ二世に会うため再びローマにやってくることを欲したのである。そして戦いの責任者として宣告された1,068名の霊の冥福ために、特別の「瞬間」を法皇にお願いした。以下略

プロテスタント系の日本キリスト教協議会はともかくとして、バチカンの隷下である、カトリック中央協議会は殉難者に対しミサを行い「特別な瞬間」をもうけた、ヨハネ・パウロ二世の行為をどう考えているのでしょうか。-純粋に信仰している信徒の方の名誉のため申しますが当時、一般の信徒からは司教や協議会の小泉総理への抗議文に多くの疑問の声があがったことを記しておきます-

小沢幹事長がリップサービスで「キリスト教は排他的」と述べたことをいちいち抗議するよりも、ヨハネ・パウロ二世のような寛容な精神をもって世界平和を祈念、行動することが大切ではないでしょうか。『天皇在位20年記念式典挙行』の中止、並びに『天皇陛下御在位20年を記念する日を休日とする法律』案の廃案を求める陳情書のように、細かい政策に抗議することより、未曾有の不況下で苦しむ人々に希望を与えることが本来のミッションではないでしょうか。

日本国内で見るかぎり、キリスト教教団の一部の方々が教理教義を哲学化、イデオロギー化して、神道と政教分離の憲法問題や外国人住民基本法などの人権問題などの政治問題に過剰関与していることが、一般国民やキリスト教信徒からも「排他的」と写っていることは否定できないのではないでしょうか。

追記
誤解のないように下記に小泉総理の靖国神社参拝に抗議した仏教宗派とその抗議文も示します。

参考資料
昭和の戦争記念館第三巻
侵略の世界史
抗議文
カトリック中央協議会
麻生太郎首相の伊勢神宮参拝に抗議します
わたしたちは基本的人権である信教の自由を保障する
政教分離の原則を堅持していくことを強く訴えます
首相の靖国神社参拝に抗議する声明
日本キリスト教協議会
「天皇在位20年記念式典挙行」の中止、並びに「天皇陛下御在位20年を記念する日を休日とする法律」案の廃案を求める陳情書
「外国人住民基本法」制定運動を継続する決議
首相の靖国神社・伊勢神宮参拝抗議声明
小泉首相の靖国神社公式参拝に抗議した宗教関連団体
浄土真宗本願寺派
真宗教団連合
立正佼成会
日本カトリック正義と平和協議会
日本同盟基督教団
日本キリスト改革派教会

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