医療、介護は成長産業たりえない 井上晃宏

2010年01月24日 10:17

 今後の成長産業というと、「環境、医療、福祉」だということが言われる。
 「成長産業」には二つの意味合いがある。国全体の経済規模(GDP)を拡大させるという意味と、個別産業としての規模が増加するという意味だ。
 「環境」が、前者の意味での成長産業ではありえないことは、野口悠紀雄氏が詳細に述べている。
 私は、「医療、介護」は、後者の意味での成長産業ですらないと思う。


 「医療、介護」の特殊な点は、費用の徴収と分配を政府が行っているところにある。私的医療、私的介護も禁止されてはいないが、病人や要介護者は、同時に経済的弱者でもあるので、費用を負担する資力はない。何らかの方法で、社会全体で費用負担をする必要がある。
 言い方を変えると、医療、介護とは、税(社会保険料を含む)でファイナンスされる産業である。成長させるには、他の政府支出を削減して医療、介護に回すか、あるいは増税を行う必要がある。
 他の財政支出を医療、介護に転用することは、事業仕分けの結果が示したように、困難である。増税に対する忌避感がこれほど強い政治状況では、財政規模の拡大も不可能だろう。つまり、「医療、介護」は、政治的理由で、成長することはない。
 「環境」が、まさに政治的理由で、補助金を投入され、無理やり成長させられているのとは対照的である。もっとも、その分だけ、他の産業は縮小しているのだが。
 私的医療保険や私的介護保険も一つの解決策ではあるが、先進国で成功している事例はない。なぜなら、所得が高く、健康な人々を、保険会社側が選別してしまうからだ。保険会社は、クリームスキミングするだけで、経済的、健康的弱者を相手にすることはない。それらは、結局、政府が面倒をみることになる。財源は、無論、税である。その大半は、相対的に豊かである私的保険の被保険者が払うことになる。公的医療、介護の財政支出は抑えられ、水準はひどく低下するだろう。これが米国の現状である。

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