日本企業という「相撲部屋」 - 池田信夫

2010年02月03日 00:09

貴乃花親方が相撲協会の理事に選ばれたというニュースは、スポーツ団体の人事にしては異例に大きく報じられました。私もふだんはスポーツには興味がないのですが、このニュースには興味をもちました。というのは、相撲協会は日本社会の「相撲部屋」体質の象徴だからです。


私がかつて取材した対象のうち、自分たちの身内の隠語を説明抜きで使う団体が二つありました。宮内庁と相撲協会です。彼らは外の世界を知らず、それでいいと思っている。しかも身内の結束はきわめて固く、些細な裏切りも許さない。特に外に対して身内の悪口をいうものは「村八分」にされる――こう書くと、日本の会社とよく似ていることに気づくでしょう。今回のニュースがサラリーマン記者の共感を呼んだのも、組織内で組織に逆らうということが、いかに大変かを彼らが知っているからだと思います。

しかも日本でもっとも古い封建的な組織と思われていた相撲協会で、こういう「反乱」が成功したのは驚きです。相撲協会の理事は、建前上は親方の互選ということになっていますが、選挙では投票箱の前に「監視」がつき、誰が誰に投票したかわかるようになっていたそうです。今回も貴乃花親方が立候補したとき、「絶対に当選させない」という親方がいて、文部科学省の指導で秘密投票になりました。その結果、ほかの「一門」から貴乃花親方に票が流れて、まさかの当選になったようです。

建前は自由投票だが、実際には一門のボスに投票するよう圧力をかけ、それに背いた者は業界から追放する。徒弟修業で長い期間をかけて出世するため厳格な年功序列があり、いかに実力があっても若い親方は理事になれない。その結果、不祥事が起こっても誰も責任を追及されず、組織内の平和は保たれるが、組織の社会的信用は失墜する――こういう特徴は長期的関係によって維持される組織に多かれ少なかれあるものですが、相撲部屋にはそういう「日本的組織」の最古の類型が今日まで残っています。

その秩序が壊れたのは、不祥事が相次いで相撲の人気が落ち、力士を志望する若者も激減して、このままでは自分たちの生活基盤が危うくなると一部の親方が考え始めたからでしょう。貴乃花親方が具体的にどういう改革をめざしているのか、いま一つよくわかりませんが、相撲部屋体質を打破しただけでも彼の出馬の意味はあったと思います。日本の企業も貴乃花親方に学んで、年功序列の人事体系をやめて役員を実力主義で選んではどうでしょうか。日本経済の立て直しは、そこから始まるような気がします。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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