民主党の「動物農場」 - 池田信夫

2010年02月12日 14:56


ジョージ・オーウェルの『動物農場』は、著者がスペイン内戦に義勇軍として参加した経験をもとに書かれた小説です。残忍で無能な農場主に虐げられてきた動物たちが、2匹の有能な豚をリーダーとして革命を起こし、「すべての動物は平等である」という理想を掲げて人間を追放する。ところがみずから農場を経営するようになると、革命を指導した豚は2本足で立って歩き出し、人間よりも過酷な労働を動物たちに強いるようになる・・・というのが落ちですが、最近の民主党政権を見ていると、この寓話を思い出します。


自民党が国会で問題にした「個所づけ」の問題は、一般にはわかりにくいでしょうが重要です。公共事業をどの地域に配分するかについては地方から多くの陳情があり、「中央とのパイプ」が首長の政治力の尺度です。それを利用して自治体を支配下に収め、集票基盤にするのが、自民党の伝統的な手法でした。ところが、そういう「バラマキ公共事業」を批判してきた民主党が、今度は予算が成立する前に個所づけ情報を地方に提示しました。

個所づけは民主党に陳情してきた(党を支援する)自治体に片寄っていると報じられています。自民党のお家芸だった税金で票を買う利益誘導の手法を、民主党もまねているわけです。この背景に陳情の窓口を一本化した小沢幹事長の意向があり、個所づけ情報を与えることで参院選を有利にするねらいがあったことは十分考えられます。

私は政治とカネの問題が、最大の政治的争点だとは思わない。政治資金が政策にバイアスをもたらさなければ、多少は手を汚しても大胆なリーダーシップを発揮できる小沢氏のような政治家は必要だと思います。しかし今回の事件についての彼の二転三転した説明には、誰も納得しないでしょう。政策を利権化して選挙に利用する小沢的な政治手法が民主党を浸食し、子ども手当などのバラマキ福祉を生み出してきました。もともと系統的な政策もなく集票基盤の弱い民主党が、自民党と同じ利権集団に転落する誘惑は強い。

まぁ政治なんて、そんなものでしょう。私はもともと民主党には大して期待していなかったので驚かないが、このような醜態が有権者を絶望させ、政治的無関心が広がると、日本はますます立ち直れなくなるでしょう。野党時代に金権政治を攻撃した民主党が「政治家の出処進退は自分で決めること」を繰り返しているのは、豚が2本足で歩き始めたように見えます。

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池田 信夫
アゴラ研究所所長 SBI大学院大学客員教授 学術博士(慶應義塾大学)

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