迷う日経電子新聞の購読 - 原淳二郎(ジャーナリスト)

アゴラ編集部

 日経新聞が3月23日から発行する電子新聞を購読するかどうか迷っている。発表された購読料は、紙の日経新聞を購読している人は月額1000円。非購読者は4000円である。電子新聞は紙の新聞より月額400円弱しか安くならない。既存読者が電子新聞に乗り換えられたら困るという価格設定といえる。収入が伸び悩む昨今、紙の新聞も電子版もというわけにはいかない。電子版に切り替えたいところだが、決めかねている。


まず、PCや携帯端末で読みやすいかどうか。老眼だから、ただでさえPCやケータイの画面で文字を読むのが辛い。文字を大きくして読めばいいのだが、スクロールするのが面倒だ。そもそもディスプレーで文字を読むのは疲れる。若い人にはわからないだろうが、老眼とは厄介である。

電子版には魅力もある。まず古新聞がなくなり、家の中がすっきりする。古紙回収に出す手間が省ける。1か月分の古新聞は結構重いし、縄でまとめるのもしんどい。それに毎月月末に来る集金人に会わなくてよい。共働きの家人が新聞を持って出勤すると読めないという事態が避けられる。しかし、宅配がなくなると折込チラシもなくなる。スーパーの特売などをこのチラシに頼っている主婦などは電子版になると困るだろう。

切り抜きに当たる電子的コピーができないとジャーナリストとしての仕事に差し障りがある。また同時に複数の家人が異なる端末で読めるのかどうか。日経新聞にもホームページにも説明がないので問い合わせてみた。以下は日経新聞からの回答。

「原則としておひとりでの利用をお願いしておりますが、同居されているご家族の方がお使いになることに関しては問題ございません。記事はコピーペーストが可能ですが、切り抜き等、画像として取り込むことはできません」

 心配には及ばないようだが、まだ決心がつかない。電子版は紙もインクもいらないし、何より配達コストがかからない。それでも紙の新聞より1割引にもならない。もっと安くなっていいはずだと思うからだ。一部記事の検索機能など付加価値はついているが、どこまで利用できるのかまだよく分からない。
 
よけいな心配だが、電子版が売れたら販売店の経営はどうなるのだろうか。月末に集金に来るぶっきらぼうなお兄さんの顔を見なくて済むのはいいのだが、彼らの生活はどうなるのだろう。この不況下で失業したら大変だ。

 電子版単独購読にするか紙の新聞と併読にするか、あれこれ考えたが、とりあえず併読で申し込んだ。4月末までは無料サービスになっているので、その間にどちらがわが家のライフスタイルに合っているか決めればいい。

コメント

  1. ikuside5 より:

    私もネット購読を検討したものですが、やはり価格がネックです。この4000円という価格というのはつまり販売店への配慮以外のなにものでもないのはご指摘のとおりかと思います。しかしそもそも日経新聞は経済誌ということもあり、私の現在住んでいる地域などでは、配達等を他の一般紙メインの販売店に丸投げしているようです。たぶん全国津々浦々でそのような方式であると思いますので、日経に関しては、販売網をリストラするにあたって組織的なしがらみはあまりなさそうです。一方で他の一般紙に関しては販売面はもちろん(本社から課されるノルマすらあるそうです)、資本面ですらそのような各地の土着的な販売組織との間に複雑な繋がりがあり(特に読売グループ)、それらの問題を整理するのは容易ではないと思います。
    とにかくしがらみのない日経には、価格面ですくなくともこのような暴利になるような水準ではなく、穏当な水準への「値下げ」を希望したいところです。

  2. ikuside5 より:

    連投になりすみません。東京都内の販売事情に詳しくなかったもので、日経も都内ではどうやら専売所があるようですね。失礼しました。

  3. 松本徹三 より:

    日経さんには申し訳ないのですが、この値段では絶対に普及しないでしょう。むしろ本気で普及させる積りは元々ないのだろうと解釈しています。

    原さんの心配される「老眼対策」はむしろ電子メディアの利点です。最初に一回だけ文字の大きさを選んでおくと、いつもその大きさに対応したディスプレイが選択されるようにしておけばよいのです。ソフトで簡単に対応できます。

    コピペは通常のインターネット検索では当然出来ることなのですから、今後の電子新聞、電子書籍では勿論可能になるでしょう。今回の日経さんの試みは、自ら「勝ち組」であることを意識しておられる
    既存の紙メディアを守ることに主眼が置かれているように思われるので、止むを得なかったのでしょうが。

    販売店のお兄さんは、他の仕事を探すしかありません。明治になって鉄道が導入されると、駕篭かきは失職しましたが、別の色々な仕事でその労働力は救済されました。