iPadがやってきた - 池田信夫

池田 信夫

オフィスにiPad(アメリカ版)がやってきた。といっても私のものではなく、同僚がアメリカの友人に送ってもらったものだが、予想どおりiPhoneを4倍ぐらいにした感じで、ちょっと重い。しかし動画や雑誌など、iPhoneでは見にくかったものが快適に見えるようになり、タッチパネルでほとんど用が足りる。


文書作成などにはソフト・キーボードが必要だが、これもネットブックの小さなキーより打ちやすい。タッチタイピングに慣れている人は使いにくいかもしれないが、別売りの無線キーボードやスタンドも売られているので、デスクトップでも使える。Wi-Fiモデルなので、まだ使える場所が限定されるが、アゴラブックスのAJAXビューワーは快適に読める。

タブレットPCというのはコンピュータ業界の鬼門で、昔からアップルの「ニュートン」や、マイクロソフトのWindowsタブレットなど、いろいろなものが出て、全滅している。その原因は、キーボードの代わりにペン入力を使うことを売り物にしたためだ。結果的には、ペン入力は使い物にならず、PCとしての能力も足りず、通信機能もないため、役に立たなかった。

だからiPadの噂が最初に出たときも「またタブレットか」という反応が多かったが、実際のiPadは過去のタブレットとはまったく違う。むしろネットブックからキーボードを外した「ポータブル通信端末」という感じだ。今はペンで入力しなくてもタッチパネルで十分だし、メールやツイッターを読むのはワンタッチなので普通のPCより快適だ。

アマゾンのKindleとの競争も話題になっているが、両方みた感じでは、まったく似ていない。Kindleは読書に特化し、それ以外の機能はないが、iPadの主要な機能は読書ではなく、動画やゲームだろう。そういう端末としては大ヒット間違いない。逆に読書だけに限ると、バックライト液晶で数百ページの本を通読できるかどうかは疑問だ。読みやすさという点では、反射型のKindleがまさる。

ただiPadやWindowsベースのタブレットが、これから世界に何千万台と出回れば、これで本を読むのが当たり前になるだろう。日本でも、ケータイ小説はすでに年商500億円の市場になっており、子供が最初に読む本は液晶になるかもしれない。また素子の改良も進むだろうから、もっと目にやさしい画面になれば、少なくともペーパーバックが電子書籍に代替されるのは、そう遠いことではないような気がする。