南西航空の再生 ― 樋口耕太郎

2010年04月23日 17:12

JAL再生プロジェクトにおいて最も重要な課題は何よりもグループ再生であることは無論のことですが、JAL再生の全体計画からは一見瑣末にも見える、南西航空(現JTA:日本トランスオーシャン航空)の行く末が、(i)沖縄と日本の国政、(ii)日本の航空産業全体の行く末、に重大な影響を及ぼす可能性があり、その論点を以下にまとめました。当社および関係各位に関して私は全くの部外者にあたり、いわば人様の会社について外部情報のみをもとに勝手な意見を述べる点、大変僭越であることは明らかで、その点始めにお断り申し上げなければなりません。


第一に、沖縄と日本の国政への重大な影響について: 日本の主要な地方自治体の中でも、沖縄県ほど中央政府への依存度が大きいところは存在しません。昨年度沖縄県行政改革懇話会の専門委員として、沖縄の県政・財政の全般を詳細に検討させて頂く機会がありましたが、現状を理解するにつれ、この重大性を強調せざるを得ません。沖縄は本土復帰以来38年間、本土から8兆円を超える財政補助をはじめ有形無形の援助を受け続け、その財務的な依存状態はもちろん、自立する勇気と心が折れてしまったかのようです。県の歳出6,000億円のうち、県税で賄われているのは僅か 1,000億円。沖縄振興特別措置法によって、道路工事や公 共工事の90%(±)は国からの補助で賄われるために、島はコンクリートの塊と化して、観光資源そのものを破壊し続けています。更に、今後年間数百億円の規模で財源不足に陥ることがほぼ確実です。これはひいては日本にとっての重大な問題でもあり、日本の財政の現状を考えると、この状態は持続不可能である中、今の沖縄の財政状態と現状意識のまま、本土からの補助が削減される事態になれば、大きな問題に発展しかねません。

これを避けるためには、極めてまっとうに、沖縄が財政的に自立する、そのために始めの一歩を踏み出す、以外の方法はありません。そして、観光を中心とした沖縄の産業構造を前提とするとき、沖縄産業の「ボトルネック」である、日本トランスオーシャン航空と、那覇空港ビルディングが沖縄自身によって自立再生することなくして、その実現イメージを描くことは困難です。特に、県内人財の集合体という観点から考えても、日本トランスオーシャン航空は、沖縄県内において最も質の高い人財を擁する企業の代表格であり、自立の第一歩を進める主体として、恐らくこれ以上適当な存在はありません。

第二に、日本の航空産業全体に対する重大な影響について: 国内市場の縮小と利益率の低下、海外の国際ハブ空港およびそれを拠点とするメガキャリアと直接競合する世界的なオープンスカイ市場環境を前提とすると、日本の航空産業全体の盛衰は、国内における国際ハブ空港機能の拡充度合いによって大きく影響を受けると思われます。日本の潜在的な国際ハブ機能を活かすことはJAL再生と同等か、場合によってはそれ以上の重要度を持つ可能性がありますが、世界経済の中心が東アジアに大きくシフトするに従って、那覇空港の潜在性が極めて高いことに着目できます。日本国内にソウル仁川空港、上海浦東空港に単独で対抗できる空港は現実的に存在しないため、日本にとっては恐らく国際ハブ空港機能を複数の空港で分担しながら強化する戦略が有効で、そのためには、那覇空港が最も重要な鍵の一つを握ることになると思います。そして、那覇空港を国際ハブとして活かすためには、成田・羽田中心の価値観から目線を切り替え、那覇と東アジア中心に日本と世界を捉える航空会社(トランスオーシャン航空を、新・南西航空として再生)、空港ビルなどの事業主体が必要です。

第三に、日本の観光政策への寄与について: 政府方針の通り、2020年までにインバウンドの観光客を現在の 800万人から2,000万人まで増加させるためには、現在海外観光客の58%が訪れている東京以外の地方都市への来訪者を増やす必要があります。このためには特に東アジアから日本の地方都市へのアクセスを大幅に改善しなければいけませんが、その具体的な方策として、那覇空港をハブとして、新・南西航空による「内際戦略」(後述)を展開し、これほど作ってしまった地方空港を逆に利用する形で、東アジアとネットワークすることは非常に大きな利点があります。

・・・アインシュタインはかつて、「問題は、その問題を生み出した考え方と同じ考え方をしているうちは解けない」と語りましたが、我々が向き合うべき次世代社会の本質は、これまでの価値観と異なる視点・時空感覚で捉えなければ、切り拓きにくい性質のものではないでしょうか。私の勝手な思い込みといえばそれまでですが、南西航空の再生が沖縄の自立と、ひいては日本の将来を決定する要素であろうことをおよそ5年前に確信して以来、日本の端沖縄から、従来の社会構造 とは異なる視点で日本の将来を考え続け、以下の構想に至っています。

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南西航空再生事業計画

ご提案
・ 株式会社日本航空グループの事業再生において、株式会社日本航空インターナショナル(「JAL」)が70.1%保有する日本トランスオーシャン航空株式会社(「JTA」。旧社名は南西航空株式会社。詳細は*(1)参照。)株式の全部または大半部分について、可能であれば、関係者の十分な理解と強力を得ながら、那覇空港ビルディング株式会社(「NABCO」。詳細は*(2)参照。)へ売却を検討するべきだと考える。

・ 当該株式譲渡に関するファイナンスは、JTA債務の引継ぎを前提として、(i)可能であれば、沖縄振興開発金融公庫、沖縄銀行、琉球銀行、海邦銀行などの金融機関、(ii)NABCOの内部留保資金および株式の売却(第三者割当増資)、(iii)オフバランスを前提としたJALによる(劣後)セラーファイナンス、およびこれらの組合せが考えられる。

JAL再生の観点
・ JALにとって、JTAは以下の理由から、財務的に非効率な事業部門と言える。

(i) 2009年3月期決算において、経常損失3.7億円の赤字に転落し、JALの連結決算を圧迫している。この赤字決算が一時的な問題ではないと考える場合、 JTAが独自の事業課題を解決する姿勢が、結果としてJALへの大きな支援となる。

(ii) JTAが保有する全15機(800億円相当額)の平均残存耐用年数は今年度時点で僅か5年である。短期的にも、JTAが保有する15機(いずれも Boeing 737-400)のうち、2010年にBoeing737-800への置き換えが2機予定されているほか、2010年に3機、2011年に1機が順次機齢 20年を超えるため、今後僅か2・3年の短期間で、1機あたり約50億円として合計約300億円の機体置き換えファイナンスが必要となる。

(iii) 激化する東アジア地域のオープンスカイ環境など、戦略的事業課題が山積している。

(iv) JALのJTA株式保有比率は70.1%でありながら、JALはJTAのファイナンスの実質的に100%を負担している。

・ JALにとっては、JTA株式をNABCOに譲渡することで、JTAが抱える将来の大きな財務リスクをオフバランスする効果がある。

・ JALがJTA株式を売却した後も、両社は事業提携などの形で現在の協力関係を維持でき、またそうすべきである。JAL自身、譲渡先であるNABCOの主要株主であり、JALにとってもJTAへの資本関係が(間接的にではあるが)完全に消滅することにはならない。JTAはJALと競合するのではなく、 JALを補完し、支えあう関係で事業を発展させるべきである。

・ 株式譲渡価格に関して、JTAの赤字決算直後であるなど、JALにとってそれ程高い売却価格を実現できるタイミングではないかも知れないが、近い将来の財務負担を軽減する効果が大きいためそれに勝るメリットが存在する可能性がある。

NABCOの観点
・ NABCOは、約96億円の安定した売上、13億円の経常利益(2009年3月期)を誇り、強固な財務基盤を有する沖縄県最大の不動産賃貸事業会社である。空港施設という特殊事情を勘案しても、不動産賃貸業としては著しく高い運営費用を計上するなど、潜在的に多大な経営余剰と収益改善余地が存在する。

・ NABCOによるJTA株式の引き受けは、JALのJTAに関する財務負担の大半をNABCOが引き受けることであり、NABCOと沖縄県が、長年沖縄に多大な貢献をしてきたJAL再生の一助となる意味合いがある。

・ JALの事業再生に伴い万一JTAの事業規模や路線が縮小される可能性を勘案すれば、NABCOおよび沖縄県民にとっても、JTAの事業を引き継ぎ、積極的にJAL再生の支援を行うことには大きな利点がある。現在JTAの、那覇-神戸、石垣-神戸、那覇-北九州便の廃止が検討されている。

・ NABCOがJTAの親会社になることで、日本で始めて空港ビルと航空会社の一体経営が実現する。オープンスカイを迎えて益々競争が激しくなる東アジア各国ハブ空港との差別化戦略として活用できる。

・ 株式譲渡価格に関して、JTAの赤字決算直後であるなど、比較的低価での取得が可能である。

JTAの観点
・ JTAの経営を東京中心の価値観から離し、沖縄を拠点とし、日本と東アジアをつなぐ新・南西航空として事業展開を進めるべきである。

・ 航空事業は、人の力が大きく事業結果に反映する労働集約サービス業の最右翼である。従業員と顧客の人間関係を重要視し、沖縄の航空会社としての個性を発揮し、運営の質を高め、価格を可能な限り維持する戦略を採用するべきである。質の高い個性を追求するために、JALグループの傘から一歩踏み出し、JTAが持つ南西航空のDNAを見つめなおす作業は戦略上プラスになる可能性が高い。航空業界における「愛の経営」の元祖、サウスウェスト航空のハイクオリティ版というイメージに近くなるのではないか。

・ 売上高利益率の低い航空会社のような業態では、単価を下げずに、リピーターを例えば5%追加的に得ることで、利益が25%~125%上昇するというイメージが成り立つと仮定すると、「今後の3~5年間で、今よりも10%多いお客様にリピートしてもらう」ことが、JTAが自立的に事業を継続するためのターゲットのイメージと言える。個性豊かで長い歴史と多くの顧客を持ち、事業のベースが強固なJTAにとっては、顧客との人間関係の接点を改善することで、意外に容易に達成できる水準と考えられる。

・ 赤字路線に関しては、より大きな観点から経営「合理性」の議論を追及するべきである。航空会社の路線(特に離島便)は、鉄道路線と同様、その存在によって多くの人々が生活を変え、仕事を得、住宅を購入するなど、多大な「簿外資産」によって支えられている。路線の廃止は膨大な「簿外資産」を毀損することになるが、それは航空会社の財務に現れないというだけで、長期的には顧客資産の毀損を通じて思わぬ企業価値の毀損につながる可能性がある。・・・路線を廃止するということの意味と「合理性」を、より大きな視点で検討するべきだということである。

・ 沖縄の地域性、アジアゲートウェイ構想、今後のオープンスカイの潮流を考えると、JTAの個性を発揮するひとつの可能性として、例えば、国際線と国内空港への同時展開(「内際展開」)が有効である。日本国民にとって海外旅行は著しく手間がかかる。例えば、仙台在住の家族が香港旅行を計画したとして、仙台空港-羽田-(リムジンバス)-成田-香港、と大仕事になる。これに対して、JTAによる仙台-《ハブ空港:那覇》-香港の乗り継ぎが可能であれば、大幅に負担が軽減されて需要が喚起される。実際、このような需要は増える一方だが、韓国仁川空港や上海浦東空港などが、このような日本の地方ニーズをどんどん取り込んでいるという現状がある。同様に、成長著しい東アジアの感情需要を取り込むために、東アジアと日本の地方都市を結ぶ機能を果たすことで、収益的にももちろん、日本全体の国策に大きく寄与することができる。

・ 「内際展開」のポイントは:

(i) 沖縄の産業構造は夏のリゾート需要に偏重しているため、需要の季節平準化がそのまま利益に直結するという大原則があり、日本の各都市の海外需要(ビジネスおよび観光)を取り込むことは、それだけで大きな経済効果がある。反面、沖縄発・沖縄単独でビジネス、海外旅行などの需要を十分に生み出すことは現実的ではない。

(ii) 経済の成熟、少子高齢化、新幹線の延伸と高速化、規制緩和と新規参入など、今後規模と利益率の縮小が想定される国内市場だけでは、JTAの成長戦略を描きにくい。反面、海外からの需要を沖縄に呼び寄せるという発想だけで、那覇から国際線を飛ばしても、不慣れな土地で、メガキャリアやLCC(ローコストキャリア)と正面から対抗せざるを得ず、収益に見合う事業にはならない。

(iii) 地方空港が開設ラッシュの中、利用者が不足している理由のひとつは、国内線だけでは十分な需要が生まれないためであり、地方空港が那覇を経由してアジア・オセアニアと繋がるのであれば、空港事業の採算に苦しんでいる地方都市からも歓迎される。

(iv) 東アジアから日本へのインバウンド観光需要を日本の地方都市に取り込む機能を果たすなど、内際展開は、東京・羽田中心の価値観から目を離し、沖縄が個性を発揮しながら、いかにして日本全体の役に立つことができるか、という発想から生まれる戦略であり、沖縄県、NABCO、JTAが日本全国の利用者から感謝されることになる。

(v) 現在JTAが保有している航空機の規模(いずれも150人乗りのBoeing737)は、東アジアと国内地方都市を繋げる内際展開に最適である。ナローボディとは言え航続距離は5,000km~6,000km、将来的に検討可能な最新鋭ER型では10,000kmを超え、ムンバイへの直通運行も可能である。

(vi) 内際展開戦略によって東アジアへのゲートウェイとして機能する空港の要素は、

  1. 日本国内の多くの都市へ就航していること *(3)
  2. 国内線と国際線の接続が容易であること *(4)
  3. 日本国内に存在する国際空港であること *(5)
  4. 空港と航空会社が戦略を一にして経営されること *(6)

が不可欠である。この条件をどこよりも満たす那覇空港と、その那覇空港を拠点とするJTAの強みを活かし、JTAとNABCOが一体経営され、国内便をスムーズに国際線に接続することで、国内の他の空港や韓国仁川空港、上海浦東空港や東アジアのキャリアに対して強みを発揮することができる。

沖縄の観点
・ 本土復帰以来38年が経過してもなお、沖縄の自立は進むどころか依存度を増すばかりであり、政府による沖縄への多大な財政補助が減じる兆しは事実上過去に存在しなかった。この状態に持続性はないため、このまま本土への依存度が拡大し続ければ、どこかの時点で大きな問題を生じる可能性が高い。

・ 沖縄振興特別措置法に象徴される、補助金によって立つ沖縄経済のあり方は早晩限界を迎えることが明らかで、財政的、産業的、そしてなによりも意識的に自立するためには、自立した事業を実現することが何よりも効果的である。JTA、NABCOほど県民に対して「自立」を発信する、メッセージ性の高い事業は存在しない。可能であれば南西航空の社名を復活し、沖縄の翼として再出発する事業計画は、沖縄における強い意識転換を促し、復帰以来の重大テーマである沖縄県の自立への実質的な第一歩を踏み出す基点となる。ひいては、本土から長年に亘って提供され続けている有形無形の多大な補助を大きく減じる重大なステップとなる。

・ 沖縄が将来財政的に自立することを真剣に望むのであれば、(i)東アジア経済圏においての役割、そして、(ii)日本経済圏とのリエゾンとしての役割、の双方を自ら獲得する以外にない。JTAおよびNABCOはこの観点において最も重要な役割を担う可能性を秘めている。観光を主力とする沖縄の産業構造から考えて、南西航空および那覇空港ビルディングの再出発なくして、沖縄自立のシナリオを描くことは事実上不可能であり、したがって、本件は沖縄が自立する最大の機会である。

・ JTA、NABCO、(および質の高いリゾート事業の実現)は、ここから50年間の沖縄の将来を決定付ける極めて重要な鍵を握っている3大事業であるが、本件はそのうちの2事業を同時に実現するという重大な意義がある。この3事業の在り方と地域と産業の将来を、深く、具体的かつ現実的に考えること、そしてそのアイディアを、意識の高い次世代のリーダーと実現することが、沖縄、東アジアのみならず、ひいては日本の航空行政・観光産業全体のあり方についての有効な青写真を提供することになる。

・ 100億円弱を売り上げるNABCOは単なる事業会社に留まらず、沖縄全体の産業を大きく変える潜在力を有している。例えば、地域農業生産物、加工物、県産品などの有効な「出口」として機能することで、質の高い地域産業を振興する重要な機能を果たすことができる。更には、東アジア地域の高品質商品を集積することで、東アジア各国との繋がりを深め、海外からの前向きな意識が沖縄、そして背後の日本に向けられることになる。

以上。

*     *     *     *     *

*(1) 日本トランスオーシャン航空株式会社は、株式会社日本航空インターナショナルが発行済み株式の 70.1%を保有する沖縄県那覇市の航空会社である。1967年に南西航空株式会社として創業。1993年から現社名。資本金45億円、従業員数825名(JALグループの沖縄地区担当社員数は2,200名)。主要な子会社に74.5%株式を保有する琉球エアーコミューター株式会社、100%子会社の JTA商事株式会社がある。本土への就航路線は、仙台、福島、東京、小松、名古屋、関西、伊丹、神戸、岡山、松山、高知、北九州、福岡。2009年3月期の売上は470億円、総資産300億円、自己資本比率39%。2006年のデータでは、本土-沖縄路線(1,161万人)におけるJTAのシェアは 9.1%、国内線全体(9,624万人)では3%、沖縄県内路線(254万人)では65%。旅客総数271万人のうち、本土便が37.3%、その他が県内便で、那覇-石垣、那覇-宮古の2路線で全旅客数の約半数49.7%を占める。

*(2) 那覇空港ビルディング株式会社は、1992年に設立された那覇空港ビルディング(国内線および国際線ターミナルビルディングおよび駐車場)を管理する沖縄県那覇市の不動産賃貸事業会社。1999年5月に供用開始した国内線空港ビルディングは、建設費300億円、延べ床面積約 80,000?。同じく、1986年7月に供用開始した国際線空港ビルディングは、建設費14.7億円、延べ床面積6,450?。NABCOが保有する重要な資産は建物、建物付属設備および機械などで、土地は国から借上げており、土地は保有していない。土地に関しては、国有財産法第18条および第19条に基づく使用許可によって土地使用が許され、毎年更新されている(同決算書の一般管理費明細によると、国有財産使用料は6.7億円)。

NABCOの2006年3月31日期決算書によると、総資産300億円(うち現預金44億円)、簿価純資産30億円、総売上90億円、償却前金利前営業利益(EBITDA)27.4億円、減価償却12.9億円、経常利益9.5億円、当期純利益5.6億円(2009年3月期の決算は、売上約96億円、経常利益13億円と報道されている)、従業員190人(パート含む)、取締役17名、株主数13名。那覇空港ターミナル株式会社が保有する41% (14,350株)の筆頭株式は、当社清算のためNABCO(36%・12,576株)と沖縄県(5%・1,774株)による買取りプロセスが進行中。売買価格は20億552万円(額面の2.8倍)。NABCOが一旦買取り自社保有する36%の当該株式については、買受先を選定する方針と報道されている。

*(3) 那覇空港から日本国内の各都市へ29路線(ただし9路線は離島便)が就航している。那覇空港の国内ネットワークは、羽田48 路線、伊丹32路線に次ぐ第三位であり、以下、ソウル仁川25路線、新千歳25路線、中部22路線、福岡21路線、関空20路線、上海浦東17路線(参考:成田は8路線)を上回っている(東洋経済2008年7月26日号「エアポート・エアライン特集」による)。

更に、近年日本の地方都市のハブとして機能し始めているソウル仁川空港、上海浦東空港などと比べて那覇空港が優位な点がある。それは、羽田を代表とする主要空港との強い接続である。那覇からは、羽田27便、福岡16便、関空8便(伊丹2便)、名古屋7便、神戸6便が毎日就航しているが、仁川から羽田への接続は毎日8便、上海浦東に至っては羽田便は存在せず、中国国内線専用の上海虹橋から4便があるのみ、香港も2便である。

*(4)
日本の航空行政においては、関東地区の羽田と成田、関西地区の伊丹と関空のように、国内線と国際線の住み分けが基本とされてきたため、国内都市と国際線の接続は著しく不便なままである。国内都市と国際線ハブが物理的に接続可能な空港は、成田、羽田、新千歳、関空、中部、福岡、仁川、浦東、那覇しか存在しないが、成田は国内線を拡張する余裕は存在せず、羽田は成田との線引きによって国際線の就航は長らくタブーであり、2010年のD滑走路供用開始においても、国際線への増枠は年間6万回の発着に限られている、新千歳は経済成長著しいアジアへのハブとして地理的に不適切、関空は国内線の利便性が悪く、最近伊丹の国内便の多くを移管したものの、その地理的不人気によって逆に国内線利用客が大幅に減少している、中部は空港施設としては適当だが、日本の中心にあることが災いして、アジア・オセアニアへのハブとしては国内各都市から地理的に近すぎる、福岡は良い候補だが既に利用状態が限界に近く、市街地への近さが逆に災いして拡張も不可能、皮肉なことに仁川・浦東が将来的に最も有望だが、現在は羽田への接続が弱い、などの問題が存在する。

すなわち、那覇空港が潜在的に大きな比較優位を持つことがわかる。将来的にも第二滑走路の建設、国際線ターミナルの開発など、非常に大きな拡張余地があり、いずれも具体的に計画が進んでいる。

*(5) 日本の航空業界の発展を考えるとき、国際ハブ空港が日本国内に存在することが重要である。オープンスカイの世界的な潮流においても、以遠権を認めているケースはそれ程一般的ではないため、日本のキャリアが例えば仁川をハブに利用することができない(コードシェア運行などによって緩和する動きも高まっているが、根源的な問題は依然として残っている)。以遠権とは、自国から相手国を経由して、更に相手国の先にある国への区間においても営業を行う権利であるが、例えばJALが新潟-仁川路線を開通したとしても、韓国より先への以遠権を持たないために、仁川から先の国へ就航することができず、新潟の顧客が仁川を経由して世界に繋がるニーズに応えることができない。反面、大韓航空の新潟-仁川路線では、新潟の顧客が仁川を経由して、大韓航空が接続している世界中の都市にアクセスすることができる(因みに、新潟空港は、日本において国際旅客の割合がもっとも大きい(18%)地方空港である)。

すなわち、世界基準としての以遠権の禁止が解かれない限り、日本国内に存在する空港を国際線のハブとして育てなければ、日本の国際航空事業そのものが衰退する可能性が高く、那覇に限らず、本来であれば成田、羽田、新千歳、関空、中部、福岡が総力を上げて国際ハブ機能を分担する必要がある。その中でも那覇空港は最も重要な空港の一つと言える。

*(6) 国際ハブ空港の成否が日本の国際航空事業の成否を決する大きな要因である中、国際ハブ空港はその空港を拠点とする航空会社が成長して初めて実現する。仁川の大韓航空、香港のキャセイ・パシフィック航空、チャンギのシンガポール航空など、空港と航空会社がお互いの事業戦略を理解し、協力し合いながら密接な経営を行うことで、世界的な競争力が生まれるケースが増えている。

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