「韓国訪問」は法王の健康上リスクか --- 長谷川 良

アゴラ

ローマ法王フランシスコは6月27日、予定していたローマ市のガメリ病院創設50周年記念行事の参加を「体調不良」を理由に見合わせた。バチカン法王庁からの情報によると、予定された記念ミサはミラノのスコラ枢機卿が代行したという。フランシスコ法王の体調問題については、「法王が突然、体調の不良を訴えただけだ。法王の健康には問題がない(ロムバルディ報道官)というが、今年12月で78歳を迎える南米出身のフランシスコ法王はここにきて体調不良を訴える回数が増えている。


フランシスコ法王は5月24日から3日間、ヨルダンの首都アンマンを皮切りに、ベツレヘムとエルサレムの中東の3都市を訪問し、その直後(6月8日)、ユダヤ教代表のイスラエルのペレス大統領(当時)とイスラム教代表のパレスチナ自治政府アッバス議長をバチカンに招いて中東和平の祈祷会を開いたばかりだ。そして8月14日から18日、韓国を公式司牧し、大田や忠清南道一帯で開かれる「第6回アジア青年大会」に参加する。来年初めにスリランカとフィリピンの訪問が控えている。年内にアルバニア訪問の話も流れている、といった具合だ。

ローマ法王に就任した直後、「海外訪問を抑えたい。ローマ法王は本来、ローマ教区の司教の立場だ。ローマの信者たちとの接触を増やしていく」と述べていたが、気さくで陽気、貧者、病人に熱い思いを持つフランシスコ法王は教会内外で人気が高いこともあって、法王の訪問を要請する国が増えてきている。

バチカンは典型的な高齢社会だ。ローマ法王を筆頭に枢機卿は60代後半から70代が大多数を占める。次期法王を選出するコンクラーベ(法王選出会)に属する枢機卿の数が上下するのは高齢枢機卿の死去が多いからだ。フランシスコ法王も健康管理が大変だろう。

10月5日にはシノドス(世界代表司教会議)が開催される。そこで「福音宣教から見た家庭司牧の挑戦」(仮題)について協議される。フランシスコ法王は昨年4月、8人の枢機卿から構成された提言グループ(C8)を創設し、法王庁の改革<使徒憲章=Paster Bonusの改正>に取り組んできた。10月のシノドスは法王が進めるバチカン改革の最初の正念場だ。バチカン・ウオッチャーによると、教会の改革に反対する高位聖職者や関係者がフランシスコ法王の改革を挫折させるためさまざまな画策を行っているという。

オーストリアの著名な神学者、パウル・ツーレーナー(Paul Zulehner)教授が昨年、「カトリック教会内の根本主義者らによるフランシスコ法王の暗殺計画が囁かれている」と警告し、関係者を驚かせたが、著名な高位聖職者、ヨアヒム・アンゲラー元修道院長が今春に出した新著「ローマ法王フランシスコ、ローマ司教」の中でも「法王暗殺の危険性がある」と同じように警告を発するなど、法王暗殺の憶測情報が昨年末以来バチカン内部で流れている(「フランシスコ法王には『敵』が多い」2014年3月18日参考)。

高齢、海外訪問の増加、反改革派との熾烈な戦いなど、フランシスコ法王を取り巻く環境は一段と厳しくなってきている。ローマ法王が突然体調の不調を訴えたとしても決して不思議ではない。バチカン消息筋は「10月の司教会議が今年最大の行事だ。それを成功させるためには法王の健康管理が急務だ。アジアの蒸し暑い夏、15時間以上の飛行機に乗って韓国を訪問することは健康上、リスクが大きい」と指摘、8月の韓国訪問の日程に変更もあり得ると予想している。


編集部より:このブログは「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2014年6月29日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』をご覧ください。