銀行員は、なぜ仕事にSNSを使うのか?(更新)

内藤 忍

ビジネスで、大手上場企業や金融機関の方とやり取りをする機会があります。皆様、優秀で真面目ですが、なぜか仕事の連絡は会社のメールではなく、LINEやフェイスブックのメッセンジャーのようなSNSで送ってくることが多いのです。

こちらとしても、メールよりもSNSの方が便利なので、気軽に連絡に使ったりしています。

メールは開くのが面倒ですが、それだけが不便な理由ではありません。金融機関の場合は、メールの受信は受け付けるけれども、発信はできない仕組みになっているところもあります。メールを送ると、なぜかしばらくしてから電話がかかってきたりするのです。

上場しているような大手の堅い会社で仕事をしているビジネスパーソンがメールよりSNSを使うのには別の理由もあると思います。それは、コンプライアンスです。

顧客情報の厳格な管理は、大手企業のコンプライアンスで最も重要なことの1つです。情報漏洩などの不祥事が起こって信用が低下するのは絶対に避けなければいけません。顧客の情報がネット上に流出してしまうと、ニュースで大々的に取り上げられ、大きな問題になってしまいます。

防止するために有効なのは、社内のメールから情報をできるだけ外に出さないこと。自由に送信できないように、様々な制約をかけて情報漏洩事故のリスクを回避しようとするのです。メールアドレスを限定したり、送信ができない受信専用アドレスにしているのは、このような背景があると推察します。

また、最近は時間短縮勤務が徹底されるようになり、平日の夜遅くや休日に仕事をすると、出世につながるアピールにならなくなりました。むしろ、週末や夜遅くに休日出勤や残業をしていると、時短に逆行する動きとして人事評価にマイナスが付きかねないのです。

そこで、時間外はプライベートなSNSを使って、顧客のニーズに密かに対応しているという訳です。

もちろん、やり取りの中には取引内容や個人情報は含まれていません。アポイントの確認などの事務連絡に使っているだけなので、SNSを使っても情報漏洩のリスクはありません。

会社のメールをいくら厳格に管理しても、個人が担当者レベルでプライベートな連絡方法を使っているようでは、あまり意味はありません。しかし現実には、似たようなことをしている大手企業が多いのです。

日本の会社には不思議なことがたくさんあります。

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※内藤忍、及び株式会社資産デザイン研究所をはじめとする関連会社は、国内外の不動産、実物資産のご紹介、資産配分などの投資アドバイスは行いますが、金融商品の個別銘柄の勧誘・推奨などの投資助言行為は一切行っておりません。また投資の最終判断はご自身の責任でお願いいたします。


編集部より:このブログは「内藤忍の公式ブログ」2017年8月31日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は内藤忍の公式ブログをご覧ください。

※(1日15:00)筆者の意向により、記事内容の一部と画像をさしかえました。

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資産デザイン研究所社長
1964年生まれ。東京大学経済学部卒業後、住友信託銀行に入社。1999年に株式会社マネックス(現マネックス証券株式会社)の創業に参加。同社は、東証一部上場企業となる。その後、マネックス・オルタナティブ・インベストメンツ株式会社代表取締役社長、株式会社マネックス・ユニバーシティ代表取締役社長を経て、2011年クレディ・スイス証券プライベート・バンキング本部ディレクターに就任。2013年、株式会社資産デザイン研究所設立。代表取締役社長に就任。一般社団法人海外資産運用教育協会設立。代表理事に就任。