内閣改造の目玉は谷垣元自民党総裁の幹事長就任、あるいは石破氏の地方創生大臣就任でしょうか? それとも女性大臣の躍進でしょうか?
詳細は既報の通りですので省きますが、安倍政権のプランをもう一度考えてみたいと思います。
まず、3本の成長の矢ですが、巷では1本しか当たらなかったとされています。元エコノミスト編集長のビル・エモット氏の論調が一番ストレートで面白いのですが、その1本も果たして日本の経済全体にプラスなのかどうかといえばこれまた議論百出なのだろうと思います。
ただ、私は判断はもう少し待つべきかと思います。
20年も凍り付いたような経済の中でもがき苦しんだ日本が安倍政権になった途端に突然日本全体が元気になったとしたら今までが何だったのか、ということになります。多くの自民党出身の総理、あるいは国民が選んだ民主党政権でもちっとも埒があかなかったことを考えれば安倍首相のチャレンジの成果もそうたやすく出てくるとは思えません。
20年以上の間、遺産の清算で時間を食いました。法人も個人も不動産を中心としたバブル崩壊の負の清算はそうたやすくありませんでした。その中、時間をかけて様々な構造的要因を改革していったこともあります。政権と国民の期待のギャップ、あるいは政界と財界の意見の違い、更にコンピューターやネット社会、グローバリゼーションとの綱引きもあります。対外的には中国が世界第二の経済大国にのし上がったということもあり、日本が置かれているポジションは大きく変化しました。その中で日本が復活するためのあらゆる種を撒いていると考えればその芽はそう簡単には出てこないでしょう。
「三本の矢」はそれぞれ効果が出るタイミングが相違しています。金融政策はその中でも最も効果が出やすい即効性があります。それこそ発表したその日から変化がみられます。財政政策は打ち出すことよりも実際にそのお金出動され、実体経済に反映された時点で効果が出ます。その点からすれば中期的な景気の下支えということになります。そして三本目の地方や女性の社会進出のサポートなどは構造的変化の追及ですからそれこそ10年というスパンで見なくてはいけません。
三本の矢の効力の時間差について説いたものは少ないと思いますが、このポイントは押さえておくべきかと思います。つまり、安倍政権が本当に立派なのかを判断するには多分10年後にならないと評価できないのであります。
その中で私が評価しているのは首相の動きがサクサクと軽い点だと思います。勿論あまりにもいろいろなことをやり過ぎて委員会だらけで何が何だか分からないという声もあるようですが、これだけのことを一度にこなす首相がかつてほとんどいなかったことも事実です。それはネット社会、情報化社会になり政権に対する負担も大きくなった分だけ安倍首相は取り巻きにうまく仕事をばら撒いているということではないでしょうか?
つまり、今回の内閣改造でも足元をがっちり固め、安定して国政の運営に望めるならばそれが最終的には日本の利益になると考えています。仮にまだうんと先の自民党総裁選のことが気になり、小手先の政策になればそれこそアベノミクスは失敗だったと言われかねません。
また、仮に総理が別の人になった場合、必ずと言ってよいほど起きるのが前任者の否定であります。これはどの世界でも同じなのですが、新任が前任を否定し、自分の株を上げるのは常套手段であります。よって、仮に自民党内での派閥抗争の結果、違う総理が出たとしても一定の軌道修正は当然行われるでしょう。
今、効果が出る前に軌道修正をするのが正しいかといえば、私は国民や企業の安定感を削ぐだけではないかと思っています。つまり、好き嫌いにかかわらず、ここは安倍丸に乗ってしまっていますからかなり長い航海にはお付き合いするべきなのではないでしょうか?
アメリカや韓国は大統領制。それこそ日本のように簡単に辞めることはありません。しかし、その間に政権の責任と効果の確認をすることは可能であります。
こう考えれば巷で言う安倍政権の足場固めともされる内閣改造の是非の議論はあまり重要ではなく、今後も様子を見てみたいと思います。もちろん、消費税再引き上げを含め、案件は内外で山積しておりますが、政権は国民以上に懸念しているはずで、それなりの対策を打ち出さないはずはないというのが私の読みと期待であります。
今日はこのぐらいにしておきましょう。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2014年9月3日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。