佐川氏はなぜ文書改竄に手を染めたのか?

衆議院インターネット中継より:編集部

「森友文書書き換え問題」については、誰が文書の改竄を指示したかは、それほど時間がかからずに判明するだろうから、いま無理に推理する意味もあまりないと思うが、多くの人が気にしているから官僚OBとして私のとりあえずの感想を記しておく。

まず、森友・加計問題について私は、「森友はプチスキャンダルで、加計は問題なし」「プチスキャンダルを謝らずにすまそうとしたので、国民に不信感を持たれて、何の問題もなく、むしろ文科省の岩盤規制に対する正義の戦いである加計問題も怪しいと間違った印象を持たれた」というのが昨年から一貫した立場である。

したがって、著しく予想外の展開でもないし、過去に書いたことを大きく修正することはなにもない。ただ、森友と加計を同列において論じて政権を擁護してきた人は少し困っておられるようだが、私はそういう立場ではない。

森友問題の本質は、文書改竄ではない。籠池さんという厄介な人にいろんな人が振り回されて、苦し紛れに、少し安すぎるかもしれない価格で国有財産を売り渡したというだけのことである。

関西には東京の常識では分かりにくい、いろんなタイプと背景の厄介な人がいる。そういう人たちへの対応は関西人にさせないとうまくいかないので、各省庁の出先でも現地採用の中堅幹部があたって、東京から来るキャリアには扱わさせないことも多い。

普通はそれは済んでいるのだが、籠池さんは常識外れのハードネゴシエーターで予定調和ですまなかった。結果、役所側にも落ち度もあったので、少し安すぎるかとは思ったが、損害賠償とかいわれて厄介払いしたくて売り渡したというのが、事件の大筋でないかと思う。政治家の名前をたくさん出したというのも、こういう人にはありがちで、それで同行したというのは普通には考えにくい。

しかし、そんな経緯をいいたくないので、文書を廃棄したとかいって言い逃れようとしたが、上手の手から水がこぼれて蟻地獄に陥ったらしい。

文書改竄の経緯については、国会答弁のあと起案文書の存在に気付いたのだというのが真実だという前提にしておく。ここが違うという可能性もないわけではないが、そこまで論じると可能性が広がりすぎる。

書かれている内容はたいした話しでない。昭恵夫人から「いい土地ですから、前に進めてください」とのお言葉をいただいたと森友側が発言していたという記載もあった。2014年4月に昭恵夫人が森友学園を視察し講演したとの記述もなくなった。しかし、これでは昭恵夫人が関与したことにはならないし、森友側の一方的な発言であり総理がやめろとかいう理由にはまったくならない。

ほかの政治家についても、視察にいったとかいうような話しばかりで、別に重大な話は何もない。
しかし、なにはとまれ、佐川局長の国会答弁とはずれてしまって、佐川氏の次の人事でで予想されていた国税庁長官への昇格を危うくするものではあった。

佐川氏が自分で改竄を指示したのか、追認したのかは分からない。もし、大阪で改竄の主導権をとったとすれば佐川氏は追認をしただけの可能性が高いと思ったが、本省が主導というのだと、佐川氏が積極的に指示した可能性も高い。

自分の昇進が危ないと焦って、「書類をなんとかならないか」といったのだろうが。

あるいは、「書き換えましょう」と提案されて承諾したのか?普通にはそんなもの好きな部下はいないが、その部下が、最初の段階での佐川局長の間違い答弁に重大な責任があるとすれば、佐川局長から厳しく叱責されて苦し紛れに改竄に手を染めてそれを佐川氏が追認した可能性はある。

なにしろ、佐川氏は部下の失敗を許さない怖い上司として評判だったという財務省職員が多いと霞ヶ関では言われているからあり得ない話しでもない。福島県いわき市出身で、こどものときに父親を亡くし、兄たちの踏ん張りで大学を出た、たいへんな苦労人らしいが、それがよい方向に作用しなかったキャラクターだ。

昔のように霞ヶ関幹部の地位が高かった時代なら分からなくもないが、いまさら、国税庁長官になるとかいうことが、そんな大事なことかということが理解できないが、佐川氏がそういう希な人だったということはあるかもしれない。

この改竄について大臣の責任は、一般的な監督責任だけだが、麻生氏も「これまでの識見、経験を見ても極めて有能」(麻生太郎財務相)とかばい続け、逃げ回るのを容認していたのは、まったく馬鹿げたことだった。せめて、不明を恥じるくらいは言って欲しかった。

そのあたりについても、麻生氏がかなり思い切って正直に説明してそれで国民が納得しないと厳しい。国際情勢が動く中で、いま、麻生氏に辞めて欲しくはないが、大丈夫ともいいにくいところだ。