先端技術への出資や投資は慎重に!

かつて、DNA検査の寵児と賞賛され、大金を集めたエリザベス・ホームズの凋落劇が話題をさらった。

周到なまでのPRとジョブズのような黒のタートルネック姿に多くの人々が大金を投じたが、結局、彼女の成功を裏付ける科学的根拠はなかった。

俗っぽい言い方をすれば、周到な詐欺とも言える。

昨今、技術進歩のスピードが凄まじく、AIやらブロックチェーン、自動運転技術、その他生命工学的な新技術などが新聞やニュースで盛んに報じられている。

このような環境は、詐欺師にとって絶好の稼ぎ場だ。

先端技術を開発、販売すると言って出資を募ることができるからだ。

既に開発されて実用化されている技術であっても、予備知識がない人が見れば異次元の先端技術のように感じるので、コロリと騙されてしまう。

私たちも、日々の新しい技術のデモンストレーションにド肝を抜かれているのだから、情報リテラシーのない人たちの驚きは計り知れないものだろう。

出資を集めて、集めたお金をこっそり引き出して隠し、最後は「一歩及ばず他社に特許を取られてしまった」「他国の開発が予想以上に進んでしまった」というもっともらしい言い訳をしてしまえば、素人の出資者たちは渋々納得するしかない。

納得できない出資者が民事裁判や刑事告訴で責任追及をしようとし、その道の専門家に意見を求めても、出資を募った段階で出資者に「騙す意思」があったと断定するのは困難だ。

「革新的技術で大ブレイクできると信じていた」と”知識不足”を言い訳にされれば終わりだし、ただでさえベンチャーやスタートアップが成功する確率は数パーセントに過ぎないのだから。

現状では、自分でしっかり理解できないものには出資も投資もすべきではない。

日進月歩のレッドオーシャンの中では、事業者が寸暇を惜しんで真面目に取り組んだとしても成功する確率はそれほど高くはない。以前書いたように、少額で分散投資できる環境が整うまでは、まとまった資金を投じるのは危険この上ないということを肝に銘じておこう。

中学受験BIBLE 新版
荘司 雅彦
講談社
2006-08-08

編集部より:このブログは弁護士、荘司雅彦氏のブログ「荘司雅彦の最終弁論」2018年3月20日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は荘司氏のブログをご覧ください。