こんにちは、都議会議員の鈴木邦和です。27日、地方議会の在り方を大きく変えうる新制度について、政府が検討を始めるとの報道がありました。
・住民から議会参画員選任=議員成り手不足に2案提示-総務省研究会:時事ドットコム
いま、地方議会は深刻な成り手不足の問題を抱えています。実は、日本の市区町村議会の選挙は、平均すると6人が立候補して5人が当選する倍率です。都市部の選挙の倍率は比較的厳しいですが、過疎地では立候補者数が定数を超えず、選挙なしで全員当選というケースもあります。
こうした現状に対して、総務省の研究会は、小規模市町村の議会を対象に今回2つの新制度を提案しました。ひとつは、住民から任意に選ぶ議会参画員と、より強い権限を持つ議員で構成する「集中専門型議会」です。議員の定数を減らした上で、住民参加の機会を増やす、従来の議会改革の方向性をより強化したコンセプトです。
もう一つの新制度は、兼業の議員が中心の「多数参画型議会」です。議員は非常勤となり、報酬を減らす代わりに定数を増やします。こちらは海外の地方議会の事例に近く、議員が自身の関心の高い政策テーマに特化して取組み、比較的短い期数で辞めるのが特徴です。議会の流動性が高いコンセプトです。
この2つの新制度を、各自治体が選択できるようにするのが研究会の提案でした。政府は対象となる自治体の規模を詰めた上で、来年の通常国会にも地方自治法改正案を提出したい考えとのことです。
日本の地方議会は、議員の政策力が構造的に弱いと私は考えています。例えば、都政においては、1万8千人の都庁の職員に対して、都議は127人しかおらず、秘書も各自平均1人という状況です。二元代表制と云われる割には、明らかに議員側の政策能力が不足しており、年間14兆円の予算を議会が全て詳細に調査するのは困難を極めます。
一方で、アメリカ合衆国などでは、一人の議員に政策スタッフが30名付いているケースもあります。さらには、議員や政党を支えるシンクタンクも強固であり、必然的に政策力も高まります。こうした海外の事例も踏まえて「いかに政策力を高めていくか」という視点から、日本の地方議会の在り方を再考していくのが良いのではないでしょうか。
最近の国会では、議員の成り手不足を理由に、議員年金の復活に向けた動きが加速しています。しかし、議員年金の復活は問題解決になりません。それよりも今回の新制度を真剣に検討すべきです。
・自民 竹下氏、廃止した議員年金の再考促す:日本経済新聞
・自公、地方議員年金法案提出へ 廃止制度を復活、世論反発招く:共同通信
地方自治体の政策は住民に身近なものが多く、地方議会の機能向上には意義があります。私も当事者の一人として、地方議会の在るべき姿を日々模索しながら、仕事を続けていきます。
編集部より:この記事は東京都議会議員、鈴木邦和氏(武蔵野市選出、都民ファーストの会)のブログ2018年3月27日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は鈴木氏のブログをご覧ください。