ホリエモンがヴィーガンたちに言いたかった本当のこと

黒坂 岳央

Wikipediaより(一部加工しています:編集部)

こんにちは!肥後庵の黒坂です。

4月3日、ホリエモンこと堀江貴文さんがヴィーガン(絶対菜食主義)を批判するコメントを出したことが、大きな話題を呼んでいます。ネット上では賛成派、反対派に分かれて攻防が繰り広げられています。

それぞれのコメントを呼んで私が思ったこと、それは「ヴィーガンへ本当に言いたかったことが正しく伝わらなかっただけで、ホリエモンはとても正しい事をいっているのでは?」ということです。

食のビジネスに携わる者として、今回思うところをお話したいと思います。

ヴィーガンとは何か?

この記事を読んでいる方の中には、ヴィーガンやベジタリアンの違いをご存じない人もおられると思います。株式会社ヴィーガニックジャパンの出している表が分かりやすいので下記の通りご紹介いたします。

さて、ヴィーガンは菜食主義者の中でももっとも厳格であり、その中でもEnvironmental veganismと言われる一派は、「畜産業が環境にダメージを与える」と革製品などの使用も控えるのです。

「野菜だけしか食べなくて健康に悪くないのか?」と思われた方もいるかも知れませんが、アメリカ栄養士協会は適切に管理されたヴィーガン食は「妊娠期や授乳期を含む、ライフサイクルの全ての段階において適切」とコメントをしています(適切に栄養管理することは、結構難しいのですが…)。

今回は堀江さんが


とコメントをしたことで、荒れに荒れているわけです。

食の好みを人に押し付けてはいけない

食は人によって好き嫌いがはっきりと分かれます。もちろんそれ自体は問題ないのですが、他人に押し付けるのは自分の信仰する宗教を押し付ける行為のように思えます。

先日、お会いした方は強烈な魚支持者で、牛・豚・鳥の肉は完全否定していました。陸の動物の肉は生育過程でいかに環境に悪影響があるのかを説き、社会は肉食の実現のために高いコストを払っていると言います。そして、「魚は常温でも油が固まらないので、サラサラで健康的な不飽和脂肪酸で素晴らしい。それに対し、牛や豚の油は飽和脂肪酸を多く含み、固まりやすく動脈硬化を引き起こすからダメだ」と批判をしていました。私はその時に、ステーキをオーダーして食べていたので、「牛を食べている今、それを言わなくてもいいのになあ」と内心少し嫌な気持ちになってしまいました。

私は魚も肉も両方良い部分があると思っていて、どちらかを完全否定できるものではないと思っています。その方は「肉食の油はダメだ」と言いますが、牛肉はタンパク質、脂質、ビタミンB2を多く含み、他の食材より多くのアミノ酸を含んでいるメリットがあります。

ヴィーガンに限らず、極端な食嗜好はある意味、自分が信仰する宗教みたいなものです。肉でも「魚派」「鳥派」「牛派」のように人によって宗派が分かれます。そして同じタンパク質をとるのでも、大豆、魚、牛、豚、鳥と様々な手段があり、それぞれ含まれる栄養素などが違うので、本来は優劣を付けることができないはずなのです。にも関わらず、「魚のタンパク質は良くて、牛・豚・鳥のタンパク質はダメ。」といったどちらかを極端に持ち上げて、一方を否定する姿勢は単眼思考であり、押し付けがましさを感じることがあります。それにもしかしたら現在自分が支持する食材も、これから医学や科学の進歩で健康に悪い研究結果が出てくる可能性だって十分にあります。食事や健康に熱心になることは悪いことだとは思いませんが、物事は多面的に見なければ、「健康を求めた結果、かえって不健康になった」という思わぬリスクがあると思うわけです。

食の健康法で見落としがちなもの

さて、ヴィーガンが良いか?悪いか?私が考えるその答えはとてもシンプルで簡単、「本人がヴィーガン食に満足し、心から楽しんでいるならOK」というものです。

なぜか?それは「食事というものは精神的な要素が極めて重要だから」と考えるからです。まずいものを我慢して食べるというのはストレスですし、実際ものすごく健康に悪いと思います。「何を言っているんだ?食事の健康とは食材に含まれる栄養が全てであり、精神的なものは関係ないのでは?」と思うでしょうか?しかし、精神は健康に極めて密接に関係していることを指摘する専門家もいます。

書籍「友だちの数で寿命はきまる 人との「つながり」が最高の健康法」の著者であり、予防医学研究者の石川善樹さんは、TEDxUTokyo2012でこのデータを示しました。

 

このデータは肥満やお酒、タバコ、運動不足以上に孤独が健康に悪い事を示しています。精神は健康に強い影響があると言うわけです。

話を食に戻しますが、食事も健康に良いと自分に言い聞かせて、「まずい…でも健康に良いから頑張って食べなきゃ…。」と、好きでないものを無理やり食べるのは、ものすごく健康に悪い行為だと私は思います。まずい食事をすることが健康にどのくらい悪影響があるのか?今回はそのデータを用意できていませんが、おそらく孤独が悪影響ということと同じく、かなりのものと想像できます。逆に言えば、多少健康に悪い食事でも精神的に満たされていれば思うほど悪影響がないかもしれないとすら、私は思います。

大富豪のウォーレン・バフェット氏は今年88歳になりますが、チェリーコークやジャンクフード、ピーナッツ・ブリトルを愛食し、コーラは一日5本飲むと言います。宮崎駿監督は25年間同じ食事で、ビル・ゲイツ氏はハンバーガーが大好きだと言います。各々、世間で言われている健康食とはずいぶん違いますが、みんなエネルギッシュに活動をしていて健康的です。自分が好きな食を楽しみ、満足しているからではないでしょうか?

ホリエモンがヴィーガンに本当に言いたかったこと、それは次のようなものではないでしょうか?

健康や環境保護のために、本当に食べたいものを我慢するなら、それはかえって健康に悪いのでは?好きなものを食べる食スタイルこそが健康に良いのに」と。

もしもそうだとすると、精神衛生的に考えるとその主張は正しいと感じるわけです。

人の体は食べるもので作られていますが、同時に精神からも作られていると言えます。健康を優先して、食べたくもない健康食に走るやり方は、心の充足感がありませんから、トータルで考えるとやっぱり健康に悪いのではないかと思ってしまうのです。結論的には一口にヴィーガンと言っても、純粋に食事を楽しんでいるならOK、いやいや我慢してやっているならNGということではないかと思いますね。

黒坂 岳央
フルーツギフトショップ「水菓子 肥後庵」 代表

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ビジネスジャーナリスト
シカゴの大学へ留学し会計学を学ぶ。大学卒業後、ブルームバーグLP、セブン&アイ、コカ・コーラボトラーズジャパン勤務を経て独立。フルーツギフトのビジネスに乗り出し、「高級フルーツギフト水菓子 肥後庵」を運営。経営者や医師などエグゼクティブの顧客にも利用されている。本業の傍ら、ビジネスジャーナリストとしても情報発信中。