「投票に行こう」という言葉が虚しい、無投票選挙地区

松本 孝行

選挙が起こるたびに「投票に行こう」ということがTwitterやFacebookで言われます。国政選挙の時もそうですし、今回も統一地方選挙ということで、結構多くの人が選挙に関して話題にしていました。そして投票に行った人たちが投票済証を写真にとってアップしたりしています。

ネット上ではかなり意識の高い人も多いので、こういった選挙に行く人・行くように促す人もいるようですが、今回の統一地方選挙では無投票当選というのが非常に多いのが現実です。つまり「投票に行こう」と言われても投票の権利を行使できない人たちがたくさんいるのです


私の故郷である兵庫県も今回兵庫県議会議員選挙が行われたのですが、なんと17選挙区18人もの人が無投票当選を果たしているのです。兵庫県では比較的大きな市町村であり芦屋市や洲本市、豊岡市と言った選挙区も、無投票選挙だったのです。見方を変えれば、芦屋市民や洲本市民、豊岡市民は投票の権利を行使できなかったということです。

無投票当選についてはポリタスで吉田徹さんがまた違った視点で記事を書かれています(もし「2019年統一地方『無投票』選挙」にあなたが立候補するとしたら?)。ここで今回の統一地方選挙では22%が無投票選挙と確定しているようです。今回の選挙で投票権を行使できない人が、5人に1人いるということです。これはあまりにも多いと思わないでしょうか。

実際、無投票当選をするというのはルールの問題です。仮に兵庫県内一つの選挙区として、獲得投票数の上位から議席数を決めていくようにしていけば、無投票当選ということは起こりません。この場合昔ながらの選挙カーや駅前での演説といった旧スタイルの選挙運動は難しくなるでしょう。兵庫県は非常に広く、選挙カーで選挙期間中に全地域を回ることはまずできないでしょう。

ですので選挙運動の形はガラッと変わるでしょう。ネット選挙も非常に影響は強くなるでしょうし、海外のように戸別訪問や電話なども認めて行く必要があるかもしれません。しかし無投票当選が兵庫県でも17地区も生まれている現状を考えれば、今の選挙の形がいいとは決して言えないでしょう。大選挙区制も少数政党が当選しづらくなるデメリットもありますし、ベストとはいえないでしょう。

それでも現在の無投票当選が22%も起こっているような状況は改革すべきです。ネット上では「選挙に行こう」「投票しない奴は文句を言うな」というような呼びかけはありますが、あまり地方選挙や地方政治に関しての議論はありません。投票しようというのはいいことかもしれませんが、それで止まっていては日本の選挙も政治も変わらないのではないでしょうか。

国政選挙や知事選などでは、まず無投票当選というのはないかと思います。しかし、統一地方選挙では投票権を行使できない人たちが5人に1人もいるのが現状です。ネット上で「投票に行こう」と投げかけるのもいいでしょうが、投票に行ける権利を行使できる人とできない人がいるということを認識すべきでしょう。そしてネット上ではもう一段レベルを上げ「地方選挙の改革」を呼びかけ、議論する必要があるかもしれません。