陸幕、装備庁に装甲車輌開発を指導する能力なし

現行の96式装輪装甲車(陸自第6師団サイトより:編集部)

陸自の新型装甲車が白紙に(ロイター)

自衛隊の離島防衛や海外派遣で活用することを目的として、陸上自衛隊への導入を目指していた新型の装輪装甲車の開発計画が、白紙になったことが2日、複数の防衛省関係者への取材で分かった。建設機械大手コマツが開発を担当したが、防弾板の性能が要求水準に達しないのが理由。鈴木良之防衛装備庁長官が既に小野寺五典防衛相に報告し、了承された。

今年、この新型装甲車開発に関して装備庁に取材してきたわけですが、かなり不自然は話が目立ちました。
問題は装甲板の不均一だけです、外国のメーカーや商社に情報提供を求めたのは、コマツが不具合を直す間の3年間やることがなくて暇だからです、てな、話です。

さて鉄鋼技術が高いと評判の我が国で、防弾性能不均一である装甲板がでてくるものでしょうか。そうであれば10式戦車の装甲板だって怪しいものではないでしょうか?コマツに装甲板の調達能力がなければ三菱重工から入手して官給することだってできたでしょう。

そもそもコマツの工場には装備庁の人間が常駐していたはずですが、居眠りしていたんですか?

そもそも原形となってNBC偵察車の装甲は、機密のためであり、また最前線にでるわけでもなく防弾は期待されていなかったし、基本路上での運用前提で不整地の運用を期待されておりませんでした。これを原形にするとはいえ、18億で、開発と試作車輌5輌つくれというのですから世の中舐めているでしょう。

代替手段との比較検討状況

諸外国においては、既に実用化された装輪装甲車として、米国のストライカー等があるが、各種脅威からの防護力等の要求性能、コストに関して総合的な観点から比較検討した結果、本事業の優位性が認められた。

良くもこんなインチキを書けるものです。実際に実物を見聞もせず、マニア向けの国内雑誌すらロクに呼んでいない連中が、外国製は高くて性能が劣ります、だって。

世界にはNATOレベル4の生存製の装甲車がゴロゴロして、さらにAPSやら、消火装置、情報把握装置なども進んでいる装甲車がごまんとあります。そして陸自の装甲車のお値段は競合他社の3~4倍程度です。

素人の上に嘘つき、ということです。記者クラブメディアがキチンと監視しないから、こういう当局の嘘がつき放題となって、習い癖となっています。よくも税金でサラリーもらって、こんなインチキが書けるものです。職業倫理というものがないんでしょうね。

無知で嘘つきばかりの陸幕装備部と批判されても仕方ないでしょう。
装備庁も同罪です。

本来開発の前には相応の情報収集が必要ですが、それが全くされていない。
しかもウィキペディアあたりを参照して内部文書をこしらえる。

これでまともな装備を作れるわけが無いでしょう。

お前ら、ボーッと生きてんじゃねーよ!

と、チコちゃんに叱られますよ。

率直に申し上げて、南アやこの20年ほどで技術を上げてきたシンガポール、トルコ、UAEなどの方が遙かにまともな装甲車輌を開発しています。これらの国はなまじ自前主義でやらないので、エンジンやトランスミッション、駆動系などは一流の外国製を採用しています。そうでないと国際市場で勝てません。
開発機会も予算も少ない国内メーカーがもはや太刀打ちできません。

せめてぼくが主張してきたように、10年ぐらい前ぐらいまでにコマツと三菱重工の事業統合などを行うべきでした。

官も民も問題先送りで、後は野となれ山となれです。結果がこれです。
今回の件で唯一評価できることはクズのような装甲車を採用し、量産しなかったことです。

代用車種の決定では、三菱重工の案採用ありきではなく、広く世界から公募すべきです。そのまえに、ファミリー化や運用を練り直すべきです。

どうせ国内で大規模な国内戦闘はあり得ない、せいぜいゲリコマであれば中古をリファブリッシュして買うのもありです。例えば南アのラーテルを近代化したものは、調達単価3千万円程度です。しかもラント安ですからもっと安いかも知れません。浮いたカネでUAVやら偵察用ヘリ、ネットワーク化やらに投資するという考え方もあるでしょう。

メンツなんぞ犬に喰わせてしまった方が宜しいです。

陸幕や装備庁に当事者能力がなさそうなので、外国のコンサルにドクトリンから、選定、調達まで丸投げしたた方が宜しいじゃないでしょうか。無能に仕事をさせると余計に損害が広がります。

陸自新型8輪装甲車開発の迷走の原因は装備庁と、陸幕。

■本日の市ヶ谷の噂■
陸自アパッチの事故で陸幕が調査問い合わせをしているのはスバルだけ。米帝様に忖度して、メーカーであるボーイングには怖くて質問もできないとの噂。


編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2018年6月3日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。