いよいよ、IRカジノ法案も大詰めとなってきましたが、あんな杜撰な対策をこのまま通したのでは、絶対に誰のためにもならないです。
そもそも実施法でありながら、まるで推進法の様に大ざっぱな枠組みしか決めておらず、それであとはお任せでお願いしま~す!なんてことで採決してしまうって余りに乱暴じゃないでしょうか。
特にカジノ依存症対策は「しっかりやる!」しか書かれていないんですから。
今日は、もう内閣委員会開催も残り少なくなり、
本当に最後の最後ですけど、IRカジノ依存症対策ここを改善して!
と、あきらめずに書きたいと思います。
どうか政治家の先生に届くように、シェア拡散お願い致します。
1)特定金融業務について
これは何度も書いていますが、デポジットを支払える富裕層に対し、2か月間無利子で貸し付けを行い、2か月以内に返済ができなかった場合には、14.6%の遅延損害金をつけて請求できるというものなのです。
これってシンガポールで取り入れられている、「ジャンケット」の様なサービスなんですが、「ジャンケット」がカジノ事業者ではない、外部事業者が行っているのに対して、これはなんと「胴元が直でお金貸す」という仕組みなんです。いや、どう考えてもその方がマズイじゃないですか。
で、昨日、首相官邸のHPを見ていたら、驚くものを発見したんですよ。
IR推進会議の「いわゆるジャンケットについて」という資料なんですが、これをご覧いただけますか。
ここに書いてあるコンプっていうのは、宿泊料など何でもタダにするから、カジノでガンガン金使って遊んでね!っていう仕組みなんですね。私も、以前シンガポールのカジノでこのレベルで遊んでいたという、依存症の方に関わったことがあるので、その方にお話しを聞き、「なるほど~、そうやってハメていくのか…」と感心したことがあります。
で、この資料では、
【1.いわゆる「ジャンケット」の実態及び諸外国の規制の例】
○ 諸外国においては、誘客だけでなく主に次のような行為を業として行う業者を「ジャンケット」と呼んでいる。その実態は必ずしも明らかではないが、様々な問題を惹起していると言われている。① 特に富裕層を対象に誘客などのマーケティングを行う。場合によっては、カジノ事業者に代わって「コンプ」を提供する。
② カジノ事業者との契約により、カジノ事業者からカジノフロア等を借り、顧客相手にカジノ行為を行う。
③ カジノ事業者から借入を行う等により、カジノ施設内で顧客に貸付けを行い、かつ、回収を行う。
ね!もうお分かり頂けたと思いますが、私や宇佐美典也さんが必死に、「特定金融業務はマズイです。リスクが高すぎます!」って訴えていることを、内閣官房で行われている推進会議でも話し合われているんですよ。
ところが、その結末が、驚くことには
「ジャンケットは、これらのことで様々な問題を引き起こしているから、こういうことはやめよう!」
ではなくて、
「ジャンケットは、これらのことで様々な問題を引き起こしているから、胴元に直接やらせよう!」
となってしまっているのです。
「内閣官房、正気ですか?」としか言いようがないです。
だったらカジノのハイローラーの部屋だけATMを使えるようにした方がまだマシです。
もしくはハイローラーだけ、クレジットカードを使えるようにするとか。
無利子で貸してしまうのではなく、なんらかの歯止めが効くものにして欲しいです。
しかも金融業の許可も何も取っていない、博打の胴元が金貸しできる特例なんて最悪じゃないですか。
「カジノやってるんだから、公営でも。パチンコでも」ってなったらどうするんですか?
十年後にはそんな話しが出てきたっておかしくない、そういう経済界優遇の政治ですよ日本は。
2)納付金のうちギャンブル依存症対策費の割合を明記すべき
これも何度もしつこく言っていますが、日本の政治家がいかに官僚に牛耳られているかの証拠です。
官僚は、カジノ事業者から吸い上げる利益の30%の納付金もしくは入場料のうち、どれだけの予算をギャンブル依存症対策費に充てるのか?ハッキリ明記して欲しいと思います。
この納付金を「広く公益に用いる」なんて言葉に、もう我々は二度と騙されないです。
同じ文言は、公営ギャンブルでも使われてきました。
けれども公営ギャンブルはこれまでギャンブル依存症対策費はゼロです。
パチンコに至っては、納付金すらありません。
そして我々は、身銭を切ってギャンブル産業による、依存症問題のしりぬぐいに走り回っています。
カジノの納付金も、さすがに最初くらいは依存症対策に多少まわすでしょうが、その後、社会負担費の増大という錦の御旗で、依存症対策費など、あっという間に削減削減となっていくことは目に見えています。
「今までちゃんとやらなかったけど、今度こそ絶対にきっちりやるから!今度だけは信じて!」
依存症者の言い訳と同じやり口を、国が使ってどうするんですか。
口約束ではなく、きちんと法案で示して下さい。
3)カジノ管理委員会
どう考えても、絶大な権力を持ちますよね。
週刊文春に「カジノ推進派の議員が軒並みパーティ券を買って貰っていた」なんて今更出ていましたが、そりゃそうですよね。分かり切っていたことじゃないですか。
でも、それは国民感情がいかに粟立ったとしても、違法でもなんでもありません。
抜け穴はいくらでもあるんです。
だからこそカジノ管理委員会のメンバーはハッキリして欲しいですね。
IR推進会議では、びっくりするほど長年関わってきた推進派しか入っていません。
けれどもカジノ管理委員会のメンバーはそれでは困ります。
全方向方に目が行き届く、そして依存症の有識者で、ギャンブル業者からお金貰ってない人を必ず入れて欲しいと思います。
4)マイナンバーで入場チェック
カジノだけやっても依存症対策推進になんかなりません。
1割にも満たない普及率のマイナンバーでの入場チェックなどやめて、もっと汎用性の高い免許証か保険証もしくはタスポのようなカードを作って、全ギャンブル場で年齢確認や自己排除・家族排除ができるシステムを作るべきです。
5)入場料・入場回数制限
エビデンスが全くありません。
官僚及び依存症の素人委員が、直感で「大体こんな感じ」と適当に決めている経緯が、推進会議の資料などを読んでいると良く分かります。
どうしても入場料・入場回数を制限することで、依存症を抑止していこう!と言うのであれば、まず大規模調査などを行い、エビデンスをとってみてはいかがですか?この国には基礎研究が全くないのですから、それからでも遅くはないです。
いよいよ今週IR実施法が採決となるのか?
与野党ともに、こんな杜撰なままのIR法案を通過させてしまわないよう、せめてカジノで依存症問題が増大することのないよう、効果的な法案となるように、改善して頂きたいと思います。
どうかマスコミの皆様方含め世論も盛り上げて下さい。
宜しくお願い致します。
編集部より:この記事は、公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表、田中紀子氏のブログ「in a family way」の2018年7月16日の記事を転載しました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は「in a family way」をご覧ください。