不毛な政局論議ではなく、変革を促す報道を

大西 宏

NNNの調査では、菅内閣支持率が22.1%に落ち、非支持率も先月比で9.6ポイント高い63.1%になったと報道されています。
菅内閣支持率22.1%、発足以来最低に | 日テレNEWS24 :
おそらく、マスコミは「倒閣」にむかう報道キャンペーンを展開してくると思いますが、もうそろそろ、政局に焦点をあてた報道からは卒業してはどうかと思います。


なぜなら、多数の国民が求めているのは、権力闘争のゲームではなく、この日本の閉塞状態をどのように打開する知恵や力、将来にむけてどのように日本を変えることができるかという変革力だからです。そのことは、小泉内閣の支持が高かったこと、民主党への政権交代、また名古屋のトリプル選挙の結果という一連の流れでも読み取ることができます。

いまやいずれの政党も、支持率よりは非支持率のほうが高く、しかも支持政党が特にない無党派層が6割にも達している状態です。
しかも、どの年齢層でも、支持率が非支持率を上回っている政党がないのです。
政党支持率【政治オぴみオン】 :

つまり、いずれの政党も、支持基盤が極めて脆弱であり、たとえ敵失で票を取ったとしても、このままではどの党が政権を握ろうが不安定なものになります。だから内閣の短命化が著しいものとなってきました。
ちなみにマーケティングでいえば、市場のリーダーとなるブランドがなく、価格競争の起こりやすいきわめて不安定な状態にあるということです。政治にとっての価格競争は、バラマキかもしれません。国民にバラマクのか、官僚や特定の組織にバラマクのかの違いはあるでしょうが。

つまり、今、マスコミに必要なのは、政局を増幅することではなく、それぞれの政党に、変革のビジョンや政策で竸うことを求めることであって、「倒閣運動」はマスコミが主導するのではなく、政治に任せるべきなのです。もし、野党がそれを示せなければ、長期に国民の支持を獲得することはできず、政権を取ったとしても、再び短命で終わることになります。

さて、いまの政党がそのままで、変革力があるのでしょうか。ちょっと疑問です。なぜなら戦略性を感じないからです。
戦略は引き算です。なにかを捨て、なにかに集中することです。しかし、捨てるということはリスクを伴い、勇気が必要です。

結論ははっきりしています。まずは、各政党が票田と考えている組織票を捨てることができるかどうかでしょう。日本は、組織されていない国民のほうが圧倒的に多いのですから、組織票を捨てることは理にかなっているのですが、確実な票田を捨てるには勇気が必要です。

組織票はなんらかの既得権益をもっているから組織票になるのですが、それがかならずしも国民の利益とは一致しません、大胆な政策実行のを行う足枷にすらなってきているように感じます。たとえば規制緩和を行おうとすると、かならず、現在の規制の恩恵をうけている人たちがいるので、それに対する反対が起こってきます。

組織票でない新しいターゲティングができれば、政策を貫くコンセプトは自ずと決まってくるはずです。定めたターゲットの利益を最大化することに徹する政党がそろそろでてきてもいいのじゃないでしょうか。
国民は、それを冷静に判断する目を持ち始めてきていることは間違いありません。消費市場もそうですが、情報化が進み、国民が判断する政治の質のハードルが高くなっていることだけは忘れてほしくありません。