アメリカのFRBが2会合連続となる利下げを行いました。利下げ幅は25bpでしたがそのステートメントには将来の方向性をどちらにでも取れるような内容が内包され、個人的にはかなり難しい判断であったと思います。ここをどう読むかを含め、金利と景気についてみてみたいと思います。
#FOMC Chair Powell answers a reporter’s question at the press conference: https://t.co/sh1FXgYlwr pic.twitter.com/A37FNYvEpx
— Federal Reserve (@federalreserve) 2019年9月18日
アメリカの景気は各種経済指標からすると住宅や自動車の一部で若干の陰りも見えますが、ある意味、よく持ちこたえているとも言えます。ただ、減税効果が既に剥げてきており、消費者には次のニンジンをぶら下げないとこのレベルを維持できるか判断が分かれるところです。
一方、景気の先行きに懸念が見られるのは企業の投資でこれは対中国の通商交渉が行き詰まりを見せる中、企業が長期的な投資計画に踏み込めない状態にあることは大きな要因だろうとみています。
トランプ大統領はアメリカの利益を第一義に考えているわけで貿易のインバランスの解消として貿易交渉で見直しを進めてきているもののドル高で輸出ドライブが効かないことにいらだちを示しています。今日もパウエル議長の声明発表に対して「ジェイ・パウエル氏と連邦準備制度はまたもや失敗」「根性も判断力もビジョンもない! ひどいコミュニケーターだ! 」(ブルームバーグ)とツイートしています。つまり、金融の総本山、FRBと政治の側であるトランプ氏ともともとの立ち位置の違いから完全にずれたやり取りが延々と続いているのであります。
ところでこの数日、FRBは他の問題を抱えていました。それは銀行間の資金のやり取りがひっ迫し、短期金利(翌日物システムレポと言われるもの)が一時10%にまで急上昇するなど明らかに変調をきたしたため、臨時の金融調整を行っていたのであります。
この現象が一時的なものなのか、構造的な問題になりつつあるのか、FRBも判断に至っているようには思えず、今日のステートメントに「FRBの資産について、『事前に考えていたよりも早く、再び拡大する可能性はありうる』」と述べています。これはQE(量的緩和)を意味するとみられますので異様に膨らんだマネーサプライと中央銀行による資産所有が市場に新たなる「関所」のようなものを作り出したように見えます。
今後についてですがFOMCで意見の一致が見られず2人が現状維持、1人が50bpの利下げを支持しました。方向感にばらつきがあるということはいかに世界経済の先行きが見えにくいか物語っているとも言えます。本日のステートメントからは経済の状況が今後も大して改善せず、外部要因(他国経済や経済に影響を与えるような問題)次第では12月にもう一度利下げする余地を持っているとみられます。
確実に言えることは2020年秋までは少なくとも利下げはあり得ても利上げはほぼないとみる点でしょうか?これは大統領選挙が2020年11月に控える中で景気を冷やせないため、スィートオファーが出やすい時期とされます。よってEU、日本を含め金利は更なる引き下げ、緩和モードに入る公算は大いにあり得、その結果としてアメリカも渋々お付き合いせざるを得なくなるのでは、というのが私の見解であります。
だからどう、と言われれば株と金は上がれども下がりにくく、また、ドル高防衛が今後もテーマになる可能性があるのではないでしょうか?
では今日はこのぐらいで。
編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2019年9月19日の記事より転載させていただきました。