今月防衛省の令和2年度の予算案が発表され。合わせて令和元年度補正予算案(防衛省所管)の概要も公表されました。
第二次安倍政権下においては、補正予算が完全に第2防衛予算となっております。これによって防衛費を過小に見せています。ある意味の世論操作でありますが、ほとんどの記者クラブメディアはこれを解説しておりません。
この件は東洋経済オンラインにも寄稿しております。
日本人は防衛予算の正しい見方をわかってない 2020年度は「5.3兆円超」でなく6兆円前後に?
財政法第29条では以下の場合に補正予算を編成できると規定しています。
1. 法律上又は契約上国の義務に属する経費の不足を補うほか、予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出(当該年度において国庫内の移換えにとどまるものを含む。)又は債務の負担を行うため必要な予算の追加を行う場合
2. 予算作成後に生じた事由に基づいて、予算に追加以外の変更を加える場合
次年度の予算を小さく見せるために補正予算で買い物をしていいとは書いておりません。
さて本年度の補正予算ですが、以下の通りとなっています。
令和元年度補正予算案(防衛省所管)の概要
防衛省計上額 …4,287億円
その内訳は
1 国土強靭化のための措置 344億円
台風等の被害を受けた自衛隊施設や災害派遣活動で損耗した装備品等の復旧・整備及び災害対処能力の向上に必要な装備品等を整備するための経費。
○ 自衛隊施設(横須賀地区等)の復旧(崩落した護岸等の整備)41億円
○ 装輪車両・施設器材の損耗更新等 40億円
○ 固定式自家発電機の整備 13億円
○ 航空輸送能力の向上(輸送機の整備の促進) 234億円
○ 災害対処能力向上のための資機材(簡易ベッド等) 8億円 等
2 自衛隊の安定的な運用態勢の確保 2,327億円
我が国を取り巻く安全保障環境や頻発する自然災害に対応するため、装備品等の着実な整備等を行い、自衛隊の安定的な運用態勢を確保するための経費。
○ 航空機・艦艇等の維持整備 81億円
○ 航空機等の整備の促進 2,191億円
○ 隊員の生活・勤務環境の改善 17億円
○ 小型無人機対処器材の整備 22億円 等
3 総合ミサイル防空能力の強化 1,456億円
弾道ミサイルなどの多様な空からの脅威に対する対処能力の強化に必要な装備品等の整備のための経費。
4 その他の追加財政需要 160億円
○ 原油価格の上昇に伴う油購入費・営舎用燃料費の増額 133億円 等
これらの項目で本来の補正予算の趣旨に合致するのは、
1の、 自衛隊施設(横須賀地区等)の復旧(崩落した護岸等の整備)41億円
4 その他の追加財政需要 160億円
○ 原油価格の上昇に伴う油購入費・営舎用燃料費の増額 133億円 等
だけでしょう。
つまり補正予算の4287億円の内、4168億円は「お買い物予算」第二の防衛費というわけです。
防衛費は人件糧食費などの義務的な固定費用が多いので、実際の装備調達などに使える予算は約1兆円程度しかありません。補正予算の「お買い物予算」はその4割強に当たる予算を手当しています。
これでは国会がきちんと防衛費を精査することはできないでしょう。
政治による文民統制の基幹は人事と予算の掌握です。それが我が国にはないがしろのされています。これで文民統制問題なしというのは、文民統制のなんたるかを理解していないということです。
総統官邸、じゃねえや、首相官邸が自衛隊に不要で高価な米国製兵器を押し付けて、それで予算が浪費され、あまつさえ補正予算までお買い物予算にしても、自衛隊の弱体化が回避できないわけです。
総統、じゃねえ、首相の現実無視の思いついきを自衛隊に押し付けることが文民統制ではありません。
■本日の市ヶ谷の噂■
19式自走りゅう弾砲がキャブを5人乗りにも、装甲化もしなく、NBCシステムも搭載されておらず、機銃すら装備されず、搭載弾薬が少ないのは調達単価低減と、たった22機しか調達されないC-2輸送機で空輸という机上の空論のため重量低減のためとの噂。
編集部より:この記事は、軍事ジャーナリスト、清谷信一氏のブログ 2019年12月30日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿をお読みになりたい方は、清谷信一公式ブログ「清谷防衛経済研究所」をご覧ください。