年も押し詰まってきましたが、秋元司議員の収賄事件から、カジノ疑獄の追及はますます深まっているようです。
読売新聞でも12月26日にこのような社説が出されました。
同時に3日間にわたり、中国企業に留まらず、IR参入を目論む他国の例えば米国ラスベガスに拠点を置くオペレーターなども、このような事業者との癒着がないか?近すぎる業者との関係についても徹底追及すべき!と特集記事も組まれました。
はい、その通りです!どんどんやって欲しいです。
…と、そんなことを考えていたら、そこに次々と飛び込んできた話題の500ドットコムの仰天ニュース。
特捜部の秋元容疑者カジノ汚職捜査 大阪IR構想に飛び火か(日刊ゲンダイ)
さらには、昨日の毎日新聞朝刊で、
IR汚職 秋元議員、カジノの依存対策助言 中国企業、NPOに資金(毎日新聞)
という報道があり、なんと500ドットコムがギャンブル依存症対策を旗印に掲げIR参入を試みていたことが発覚したのです。道理で、最近何件か記者さんからへんてこりんな取材を申し込まれるなぁと思っていたんですよ。
それが「田中さん、依存症になりそうな人をあらかじめ検知できる仕組みなんて作れるものですか?」なんて質問だったので、あまりにばかばかしく「できるわけないです。」とお答えしていたのですが、あの謎の記者レクはこういうことだったのか!と、合点がいった次第です。
そこで過去記事を検索してみると、この500ドットコムからデータと研究資金の提供を受けていたNPOついて調べて見ると、
こんな記事を発見した次第です。
ビッグデータをギャンブル依存の予防薬に- 500ドットコム、CABSと共同研究(マイナビニュース)
おいおい…マジか…
私、この「NPO 依存学推進協議会」のことは、もちろん良く存じ上げております。依存学推進協議会とありますが、ここは依存症自体に興味があるというより、カジノを推進することを前提とした、依存学を発表してこられた団体です。
そして「依存学」とあるようにあくまでも学問として研究したいという研究者の先生方が集まられていて、我々のように直接、当事者・家族に関わって対策を推進しようという団体ではありません。
医療経済研究機構所長の西村周三先生が理事長を務めておられますが、事務局などを努めておられるのは副理事長を務められている谷岡一郎先生がいらっしゃる大阪商業大学ですね。
で、ですよ、日刊ゲンダイに書かれていたので、「NPO 依存学推進協議会」の理事って他はどなたでしたっけ?
と調べようと思ったら、なんとここのHPが見られなくなっていたんです!
えぇぇぇぇぇぇぇぇ!まさかの閉鎖!?
私もこのNPOが主催するシンポジウムに2回ほど呼ばれたことがありますし、当会が主催するシンポジウムに登壇して頂いたことも1度あります。また、全くの他団体が主催されたカジノの賛否を問うイベントでは、何度もこのNPOの先生方とシンポジウムでご一緒させて頂いたことがあります。
でも正直、あまり噛み合わない…んですよね。
そもそも現場をお持ちじゃないから、日本の依存症対策のあり方である「地域連携」に対する感覚がない。
そしてなによりも利益相反に対する意識がなく、研究費をギャンブル産業から直接貰ってしまうことに抵抗がない、
しかも「カジノありき」の理論が前提にあるので、公平性や透明性といったことを重要視していない、ということを感じていたんですよね。
カジノ議論まで誰も「ギャンブル依存症」になんか興味も持っていなかった訳ですから、興味を持ってくれてるだけマシだとは思いますが、現在日本のギャンブル依存症対策での大問題は、っこういったギャンブル産業側から直接支援を受けてしまう研究者がぞろぞろと出てきていることです。
そうするとその研究者はだんだん、ギャンブル産業に忖度した主張になるんですよ。残念ながら…「だって、人間だもの」と、急に相田みつお先生のように遠い目をしたくなるのですが、厚労省が推進し、私たち当事者・家族が望む依存症対策とはかけ離れていくんですよね。
そしてですね一番の問題は、そういった忖度研究者を国や行政が故意か?無知か?わかりませんが、関係者会議など、政策を決める情様な会議に平気で入れてしまうことなんですよ。特定の企業に利益が流れぬよう、公平性、透明性を担保するためには、そういった関係者を排除することが重要じゃないですか。
で、かねてから思っていたのですが、こういったことに実に無頓着で、一番危なっかしいのが何を隠そう大阪なんですよね。
この問題が起きてから松井知事、吉村市長さんなどは、維新は公平性・透明性を重視してきたと盛んにおっしゃっていますが、上記の記事にあるように実際はそうなっていません。
さらに私が大問題だと思うのは、大阪の令和元年度ギャンブル等依存症対策研究会委員です。
西村直之先生は、パチンコ産業と縁が深い先生だというのは良く知られており、そもそもリカバリーサポートネットワークはパチンコ産業が出資して作られた団体ですよね。その西村直之先生と、一緒に(一社)JSRGという団体をされているのが河本泰信先生。
さらに、村井俊哉先生は、話題のNPO 依存学推進協議会の理事であり、カジノ進出を目論むセガサミーと産学共同研究を発表されています。木戸盛年先生も、NPO 依存学推進協議会の副理事長であられる谷岡 一郎大阪商業大学学長の下におられる先生です。
私が知っている限りですよ、この名簿の研究委員3名のうち2名が、専門委員5名のうち2名、合計8人中4人が、どこかのギャンブル産業側から直接資金提供を受けて研究等を行っている団体に関係するメンバーな訳ですよ。メンバーのうちの実に半分ですよ!半分!これのどこが公平性、透明性を重視していると言えるでしょうか?
このことを知事と市長はご存知の上で発信されているのでしょうか?
もちろん産業側の直接支援によって進んだ対策もあるでしょう。
そして利益相反問題など気にならない人がいても、それは個人のモラルの問題なので止めることはできません。
しかし税金を突っ込み、推進する事業なんですから、そういったどこか特定の企業に深く関わっているメンバーを国や行政が選ぶべきではありません。特に大阪はカジノが本命視されているところですから、もう一度選定をやり直し、どこの色もついていないメンバーを選んで頂きたいです。松井知事、吉村市長、このルールの厳格化を次年度から是非ともお願いしますね。
また、国や行政はこういった利益相反問題を防ぐためにも、公平性・透明性を担保できる仕組みづくりに全力をあげて欲しいと思います。まずは、1月7日のカジノ管理委員会の開催を延期し、ギャンブル等依存症対策基本計画の関係者会議のやり直しを求めます。
汚職や利権にまみれたカジノなどいりません。
焦って作らなくてはならない施設でもありません。
このまま強行しなくてはならない理由は、誰かの利権以外には1ミリもないはずです。
少なくとも捜査の全容がわかるまで、この会議を進めて良い訳がありません。今度こそ、国にも行政にも政治家にも官僚にも、カジノ問題とギャンブル依存症対策に真摯に向きあって頂きたいと思います。
田中 紀子
公益社団法人「ギャンブル依存症問題を考える会」代表
国立精神・神経医療センター 薬物依存研究部 研究生
競艇・カジノにはまったギャンブル依存症当事者であり、祖父、父、夫がギャンブル依存症という三代目ギャン妻(ギャンブラーの妻)です。 著書:「三代目ギャン妻の物語」(高文研)「ギャンブル依存症」(角川新書)「ギャンブル依存症問題を考える会」公式サイト